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短歌#9

散歩中 まさかの道中 逢引きちゅう あってよかった そこに枝道

運動不足の解消に少しでも動こう、と試み散歩に出かけた。ぼーっとしながら歩いていると、見慣れぬ光景が目に飛び込んできた。学生服を着た男女がきつく抱擁していた。

彼らは私が進みたい方向にいる。自転車ならば一瞬で通り過ぎるが、徒歩だとだんだん足音が近づいていくので、気配は消せない。ぬきあしさしあし、みたいなことしても、通りすがりに目が合ってしまうかもしれない。むしろ近所の人の目が気になる。「失敬、ちょっと通りますよっ」というのも違う。

どうしようかと迷いながらも、徐々に距離は縮まる。引き返そうかと周りをキョロキョロしていると、迂回できそうな脇道をみつけた。ほっとした。不自然に角を曲がったところで、彼らのことを考えた。確かに人影は少ない路地だが、人目がないわけではない。精一杯の人目を忍んだ、或いは親御さんや同級生に見つからない場所が、そこだったのかもしれない。もう少しだけ日没が、彼らの見方をしてくれればよかった。

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