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「ラップ」・「クドキ」・「スピーチ」から考える日本語HIPHOPの解釈
はじめに「そもそもラップって何だっけ?」
前回に続き、HIPHOPにまつわるテーマです。
前回の記事では、英語圏での「韻」と生活の近さや「俳諧連歌」「浄瑠璃」から日本語HIPHOPを考察してみました。
今回はそもそも「ラップ」という言葉から見つめ直して、新しい考え方ができないかと思い、「ラップ」という言葉の意味やその歴史を調べてみることにしました。
この記事を読むまでは、HIPHOPの盛り上がりとともに、「ラップ」が広まったと思っていたのですが、HIPHOP以前から「ラップ」という考えはあったようです。
上記の記事から今回は「ラップ」の2つの点に注目してみることにします。
①南アフリカのグリオ(口頭伝承)にルーツがあること。
②歴史的指導者のスピーチにも影響が見られること。
この①と②に注目しながら、前回と同様に「日本語HIPHOPの解釈」に繋げていければと思っています。
①については、日本の口頭伝承の芸能の歴史から、②についてはネット上で見られるスピーチのアドバイスから考えていきます。
「口頭伝承の芸能について」
日本における口頭伝承の芸能として「民謡」「歌舞伎」「浄瑠璃」「能」「狂言」などが挙げられます。
これらの口頭伝承の芸能に共通する言葉に「クドキ(口説き)」というものがあることがわかりました。
「クドキ」は「繰り返し説く」という動詞が名詞化したもの。
「浄瑠璃」や「歌舞伎」のクライマックスで演じる個所のことを指し、もともとは「能」や「語りもの」で登場人物の悲しみを歌う演出のものでしたが、近世(安土桃山・江戸時代)以降は様々な要素が加わり多様化しました。
特に「歌舞伎」や「浄瑠璃」、「長唄」の中では悲しみだけでなく、恨みや詠嘆的な心情表現の際に用いられており、作品における感情表現の盛り上がりの部分を担う演出だと考えられます。
日本の伝統芸能において「クドキ」という言葉が多く用いられており、そのどれもが感情表現の演出に関わっていることがわかりましたが、細かい解釈が各ジャンルによって異なっていたため、いくつかに分けて考えてみることにします。
①同じメロディの繰り返しにのせて歌われるもの(民謡)
②シンプルなメロディを持つ節回し(語りもの)
③感情的な歌詞とメロディの組み合わせで生まれるもの(歌舞伎・浄瑠璃)
この①~③の解釈は分かれてはいるものの、現在の音楽に当てはめてみると、「サビ」や「フック」と呼ばれる部分に相当する考え方だったのではないかと考えられますね。
このことから考えると、King Gnuが米津玄師に「サビを入れないと売れない」と言われ、「サビ」を入れるようにして売れるようになったと答えていたインタビューも納得がいきます。
POPミュージックがやってくる何年も前に日本人は「サビ」を楽しんでいたことは、今回調べてみて学んだ大きな点ですね。
JPOP的に歌い上げるサビではないにせよ、繰り返しの部分は海外のHIPHOPでも「フック」という言葉があるように、同じ歌詞の繰り返し(リフレイン)による感情表現を強調する手法は、国内外問わず効果的な手法だと言えます。
「スピーチのアドバイスから考える日本語HIPHOP」
次はネット上のスピーチやプレゼンのアドバイスによく見られる、とある言葉から考えを広げてみます。
その言葉とは「1分間に300字程度の文字数で話せばよい」というアドバイスです。
多くのサイトで用いられているアドバイスで、特定の書籍のソースも書いていないので、都市伝説的に広まったものかもしれませんが、参考にしてみたいと思います。
音楽の用語で曲の速さを示す、BPM(Beats Per Minuteの略)という言葉があり、1分間の拍数を示す用語で、例えば、BPM=60であれば、1分間にメトロノームが60回鳴る速さとなります。
上記のスピーチに関するアドバイスと楽曲のBPMとを合わせて考えてみると、楽曲のテンポの基準を考えられるのではと思い、大きく3つの案を考えてみました。
①BPM75=16分音符で詰め込むことで、1分間に300字の言葉が入ります。
②BPM150=8分音符を基準に言葉をはめていけば、
1分間に300字の言葉が入ります。
③BPM100=4分音符を3連8分音符と考えれば、
1分間に300字の言葉が入ります。
このテンポでないといけないというわけではなくスピーチやプレゼンなど、
人前で「話す」際の基準とされている「1分間に300字」というものを、ラップに落とし込んでみたときの一つの基準として活用していただければと思います。
日本語HIPHOPにおける「語り」の可能性については、冒頭にある前回の記事を見ていただければと思いますが、少しまくしたてるように演出をしたければ、上記のテンポより少し早くしたり、ゆっくり丁寧に語りたければ、少しテンポを遅くしてみる。
試しに実践してみましたが、上記のテンポは演説やラジオのニュースと同程度の速度なので、日常会話の速度からすると少しゆったりとしたテンポに感じられると思います。
日本語での「語り」に適したテンポで楽曲を作ることで、聞き心地がいい楽曲が作れるのではないか。
スピーチの観点から日本語HIPOPを考えた結果、上記のような結論に到達しました。
最後に「具体的な楽曲の紹介」
今回と前回で考察した点を整理してみます。
音階や拍子など音楽的なことを意識しすぎず、
語りに近い状態でラップをする。
楽曲はワンループでもよいが、
複雑なリズムの中で行う。
旋律やリズムの反復を少なくするため、
ビートアプローチを幅広くする。
または特定のリズムキープを放棄する。
同じ歌詞の繰り返し(リフレイン)による感情表現を強調する手法は、
国内外問わず効果的な手法。
日本語での「語り」に適したテンポで楽曲を作ることで、
聞き心地がいい楽曲が作れる
以上の点が、日本の歴史的芸能から考えるHIPHOPの解釈だとした場合、今現在リリースされている楽曲で上記のようなアプローチをしているのではないかと思われる楽曲をいくつか紹介してみようと思います。
多くの解釈でこれからもHIPHOPを楽しめればと思います。
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