2022年下半期に読んで印象深かった小説をご紹介
2022年下半期は30冊読みました、その中から特に印象深かった8冊をご紹介させていただきます。月1冊以上は印象深い小説に出会えているので今年は良い年だったなぁと思います。
こうやって印象深かった本をまとめてみると、自分の趣味が変わっていることに気付きます。昔はひたすら楽しい、のど越しの良い小説が好きだったのですが、近年は何かしら心にひっかかって色々と考えたくなるような、咀嚼嚥下に時間がかかる小説が好きになってきた気がします。
ただ、作品のひっかかりに気付くかというのは私次第なので、ここに選出しなかった作品も質が悪いとか心動かされないとかそういったわけではないですけどね。
西 加奈子著『夜が明ける』
以下にまとめてみました。ただ楽しい、日常を忘れられる物語というのも好きなのですが、こういった読了後には世界を見る目が変わるような小説こそ読むべきだと思ったりしました。
浅倉 秋成著『六人の嘘つきな大学生』
珍しく夜更かしして一気に読んでしまいました。今年読んだり、見たりしたエンタテイメント作品の中で最高に面白かったです。さらに、思うところも色々とあったので以下に感想をまとめてみました。
浅井 リョウ著『正欲』
久々に小説読んで「やられたぁ!!!」と思いました。去年読んだ『スター』もかなり良かったのですが、これはそれ以上に色々考えたくなった良い小説でした。読んで考えてみたことを以下にまとめました。
宇佐見 りん著『推し、燃ゆ』
言語化を放棄すると「いいぞ、『推し、燃ゆ』」となる。「推し」っていう言葉は耳にする機会があるし、なんとなく意味は分かるものの、理解できていなかったので読んでみた小説。
「推しは私の背骨だ。」という文章にすべてが詰まっています。主人公にとって「押し」は生きる糧であり、辛い日常生活の救済であり、自己表現の手段であり、ネット上のコミュニケーションの中心で、自身と不可分の存在です。
主人公は生き辛いとされる特性を持っているので、「推し活」をしている人の中でもマジョリティーとは言えないと思いますが、「推し」という言葉の意味の一端に触れられた気はします。
もうでてから2年経っちゃってますけど、今の内にこそ読むべき、時代を切り取った傑作なのではないでしょうか。コンサート会場のトイレのシーンとかの圧迫感と絶望感がすごかったので、小説に心動かされたい方にもおすすめです。
浅倉 秋成著『教室が、ひとりになるまで』
自分がされたらどう思うかを考えて行動しようってのは、他者に対する知識の少ない子供だけの話のはずなのに、それをいつまでも金科玉条のように考えている人ってのは結構いるんじゃないかと思ったり。多様性の時代にはその考え方は合わないなと思ったり。私にとっては学生時代に思いを馳せたり、現代社会で起こっていることに思いを馳せたりと、思考の触媒のように働いた作品
そこで考えたことを以下にまとめてみました
今村 翔吾著『塞王の楯』
兎に角、ストーリーのパワーがすごい。
他のストーリーだったら、ちょっとベタやなぁとひいてしまう展開も感涙に咽ばせることが出来るぐらいはパワーがある。実際2回は泣いちゃいました。
しかもめっちゃ爽快。自分が好きに想像できる小説だからこそなのかもしれないけど、相当ド派手なシーンが満載でした。
逢坂 冬馬著『同志少女よ、敵を撃て』
主人公はソビエト赤軍に所属する女性狙撃手で、戦場のシスターフッド作品としても文句なしに面白いです、ただ、主人公の目を通して見る戦争に人生を翻弄された女性達が、この作品をただのシスターフッド作品ではなく傑作たらしめているのではないでしょうか。
作中でウクライナとロシアの関係が描かれているのも、見どころだと思いますし、現実の出来事によって注目を浴びた作品でもあると思うのですが、その現実の出来事が作品の邪魔をしている感じも大いにあります。
ロシアが「ナチス」という言葉を現代でも度々使っているのは、この作品の舞台となっている独ソ戦の時には、ロシアの元で旧ソ連各国が一つにまとまっていたとロシアが考えているからだと一般的には言われていますが、まぁ、そんなシンプルな話じゃなかったんだろうなとこの作品を読むと思わされます。
作中に登場するリュドミラ・パヴリチェンコはキーウ近郊の出身で、レーニン勲章を授与されているそうなのですが、優秀な狙撃手だったのはそうなんでしょうけど、政治的な臭いも強く感じてしまいますね。
野島 一人著『デス・ストランディング』
PS4とPCでプレイしたので懐かしい世界に浸りつつ読んでいますが、この小説だけでも楽しめるものなのか?はちょっとわからないです。ゲームをプレイした方はムービーでは読み取りきれなかったサムの感情が直接的に表現されているので楽しめると思います。
私はちょっと世間とずれたところがあるので、絆と聞くと何となくネガティブな印象を受けるのですがその理由は、どこまで行っても人は理解しあうことが出来ず、絆は一方通行に結ぶことしか出来ないからなのではないかと思ったりしました。
2022年上半期に読んで印象深かった小説をご紹介
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