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テレビ番組制作会社に期待すること

南国でも今ではいろいろな方法でインターネットを介して日本のテレビ番組を楽しむことができます。

日本にいて、残業して通勤時間に2時間以上かかっていた時に比べて、南国では時間に余裕があるせいか、日本にいたときよりも日本のテレビ番組を見る時間が長くなった気がします。

それにしても私が子供の頃と比べて、地上波テレビは深夜遅くまで放送をしていますし、BS やCS など無数のチャンネルができて、テレビ局やテレビ番組制作会社もたくさんの番組を短時間で作成する必要が出て来たのではないかと思います。

そして、なかにはおそらく時間やコストの関係で、取材も検証も考察も不十分だと感じるコンテンツも見うけられます。

気になるならそんな番組は見なければ良いとも言えますが、だれかがそんな番組を見て影響を受けているのかと思うと気がかりです。

ネットは比較的自由な空間ですから、情報にも玉石混淆との認識が定着しつつあるかもしれませんが、BPO (放送倫理・番組向上機構)が組織され、そこが対象としている放送内容に関しては、本当に製作者の人権や労働環境を守り、自由で質の高い番組をじっくりと作成できるような環境づくりに取り組んでほしいと思います。

最近、「テレビ番組制作会社のリアリティ:つくり手たちの声と放送の現在」(大月書店) という本を読みました。

テレビ番組は放送局が作っていると思っていましたが、実際には最近の多くの番組はテレビ番組制作会社によって、あるいはそれらの会社から集められた番組制作会社の社員や番組制作会社の契約社員などによって制作されている実態を知りました。

この本では過酷な番組制作現場の実態を、番組制作会社の幹部や社員、フリーの制作者へのインタビューなどで明らかにしています。また、「つくり手」の番組制作に対する夢や希望や誇りを阻害するような、低賃金、補助的労働の増大、序列関係、長時間労働が起こる構造的な問題を「ポリティカル・エコノミー」の観点で読み解いています。

最近はインターネットでも、個人や素人が簡単にネットでコンテンツを配信できる時代です。それはそれで、各人の興味や考えや世相、流行などをいち早くとらえて、さまざまな視点で配信できるメリットもあります。中にはとても質の高いコンテンツもありますが、フェイクニュース的なものも混在していることでしょう。

私がテレビ番組制作会社やプロフェッショナルとしての「つくり手」に期待したいのは、情報の早さや表面的な面白さだけを狙ったものではなく、番組制作会社のプロが、じっくり時間と技術をかけて、取材し、検証し、吟味し、考察し、「つくり手」の本当に伝えたいことを盛り込んだ映像コンテンツを作っていただくことです。何度も見返す価値のあるような映像コンテンツを作成していただくことです。

劣悪な条件で番組を作らなければならない環境があるのだとしたら、その状況を改善できないままコンテンツを世に出し続けているテレビ局にも責任を問いたいし、その番組のスポンサーもそれを放置していてよいのかと問いたいです。

番組制作会社が質の高いコンテンツを時間をかけて製作できるようになるためには、そのようなコンテンツを望む視聴者が、テレビ局やスポンサーを動かしていくしかないと思います。

プロ集団が時間とコストをかけて、人権や民主主義に配慮した質の高いコンテンツを作成して、ネットに流れる無数のコンテンツと差別化していかなければ、テレビの存在価値はどんどん薄れていくことでしょう。そしてその、質の高いコンテンツはネットの中でもいずれ注目され、生き残っていくのではないでしょうか。

テレビ番組に関わるすべての方々にぜひ考えてほしいと思います。まじめで真剣な番組制作者を心から応援したいです。

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