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リリーフ井 (Relief Well: リリーフ・ウェル)

リリーフと言えば、野球の救援投手を思い浮かべる方も多いかと思います。

ウィキペディアでも日本語で「リリーフ」と検索すると、野球のリリーフ、救援投手が真っ先に出てきます。

石油井掘削時でもリリーフ井 (Relief Well) の出番を検討する場面があります。そしてリリーフ井が必要となる場面は、相当深刻な事態が起こっている時です。

なぜならそれは、掘削中に何らかの理由で地層流体が坑内に浸入 (キック) したときに、BOP (Blowout Preventer: 防噴装置) で坑井を密封して地層流体の浸入を抑圧することに失敗して、その井戸の坑口から抑圧することができない場合に必要とされるからです。つまり暴噴が起こった時です。

野球でリリーフは、勝っている場面で出てくれば「抑え」、先発と抑えの間を担当する場合「中継ぎ」、相手に大量リードを許した時に登板すれば「敗戦処理」などと呼ばれますが、石油井掘削で登場する場合は、まさに「火消し」ということになります。

リリーフ井は、通常、暴噴井の近隣から掘削し、地下で暴噴井に接触するように掘り、泥水などで抑圧もしくはリリーフ井を通して圧力を抜き、セメントなどで閉鎖する作業を行います。

リリーフ井を正確に掘って暴噴井と接触させるには、井戸を正確にコントロールしながら掘る技術や、暴噴井の鉄管の磁極を三軸磁場センサーで計測して解析することによって位置を特定するレンジング (Ranging) 技術など、高い技術が必要とされます。

地下の状態がよくわかっている生産・開発中の油田では、掘削中の井戸一本一本について、リリーフ井プランを詳細に検討することは通常しませんが、新しい地域での初めての掘削や、地下の様子があまりよくわかっていない地域での掘削には、リリーフ井を掘るためのリグの設置場所などをあらかじめ検討しておきます。また、いざという時のために、リグを手当てできるように、近隣で掘削している掘削会社や、国の機関と、交渉を行う場合もあります。

なにごとも起こらないことが一番ですが、最悪の事態も想定しておくことが大切です。

ここ南国ではありませんが、私が以前働いていた現場の近くで、掘削中の井戸から直接ではなく、おそらく、井戸近傍を通る断層を通じて、ガスが海底から噴出する事故があったと聞いたことがあります。

噴き出したガスの巨大な泡が、海面を持ち上げて小山のようになったという話を聞きました。幸い噴出はすぐに止まったのか、かん口令が敷かれたのか、大事故になったという話は聞いていませんが、地下からガスの噴出が続くようであれば、リリーフ井の掘削も行われていたかもしれません。

ガスが海底から海中に噴出すると、火災や爆発の危険だけではなく、海水の比重が下がることにより、浮遊式のリグや船舶は沈没する危険もあるということです。

そのような事故を思う時、掘削中の掘削屋さんが非常にナーバスになるのもわかる気がします。まずは安全第一ですね。

[掘削現場の事故の恐ろしさを描く映画「バーニング・オーシャン」について]

[掘削現場に行くためのサバイバルトレーニングについて]

[洋上掘削現場の様子]


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