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古流向を知る手がかり。夏休みの研究

堆積物が一定方向の水流によって運ばれたり堆積したりする場合、その水流の向き (古流向) を知る手がかりが地層に残されていることがあります。

例えば地層にみられる堆積構造 (堆積物が堆積するときや堆積した直後に様々な作用を受けて形成された構造や模様のこと) の中に水流や斜面の方向を示唆するものとして、以下のようなものがあります。

斜交層理(斜交葉理、クロスラミナ)

漣痕 (砂紋、リップルマーク) 特にカレントリップルなど

スランプ構造(スランピング)
流れというより斜面の方向を示すと考えられます。

底痕(ソールマーク)特に流痕

このほか、現在の河川敷などで見られるインブリケーション (覆瓦構造、Imbrication) が地層中の礫や化石などにみられることもあります。

私は大学時代、堆積学の自主ゼミ (学生や院生が自主的に組織し、教官にお願いして指導を受けたり自主的な勉強会を開催したりする。学年の制限なく参加可能) に参加しており、ある対象フィールドの礫層の古流向を解析するために、礫のサイズ、長軸や短軸の長さや方向、地層面に対する傾きなどを測りまくったことがあります。

この手の測定・解析はできるだけ数多く測定し、統計的に解析する必要があります。数が少ないと誤差や、偶然の影響を受け、確からしい古流向がわからない場合があるからです。先輩や後輩と礫層の露頭に張り付いて、炎天下の夏休み一生懸命測定しました。懐かしい思い出です。

ある露頭一か所での測定は、その位置でのある瞬間の古流向の推定には役立つかもしれませんが、その頃その地域の地形や堆積環境のトレンドを反映したものかはわからないため、場所を変えて周辺の同一層準の礫層での測定データを増やしていきました。意味あるデータを集めるための考え方や苦労を学びました。

そういえば、高校の地学部でも、地質調査を行っていたフィールドでよく見つかる巻貝の化石から古流向がわかるのではないかと、露頭で一生懸命巻貝の長軸方向の向きや傾きを測定していました。

そして、細長い巻貝の貝殻が流速、流向、斜面の傾きなどによってどのように川底や海底に定着しやすいか調べるために、実験装置を作って何度も巻貝を流してその向きを測りまくる実験をしたことがあります。文化祭でも公開実験をしました。

そもそも化石で見られる対象の巻貝が、そのような一定方向の水流のもとで堆積するような環境があったのかどうかなど、今考えるといろいろと疑問の余地もありますが、巻貝のあの独特の形から、一定の水流下で定着しやすい向きがあるはずだという仮定のもと、文化祭の前の夏休みに、ひたすら実験を繰り返し、記録を取っていたことを思い出しました。

当時は知りませんでしたが、下記のペーパーにあるように巻貝や二枚貝の貝殻でちゃんとまじめに水槽実験が行われているのですね。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/96/8/96_8_613/_pdf/-char/ja

いわゆる夏休みの宿題の自由研究とは違いますが、高校・大学で行ったグループ研究の思い出です。

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