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油層から得られる地質データの多くはバイアスがかかっている

開発・生産中の油層から得られる最も重要で直接的なデータは坑井データです。

油層地質モデルを作るために必要なデータを、生産井や圧入井など、油を生産・開発するために必要な井戸の掘削機会を利用して、採らせてもらいます。

どのようなデータを収集するのかについては以前簡単に記事に書かせていただきました。

その時も少し触れましたが、油層から得られるデータのほとんどはバイアスがかかっている (偏っている) と考えるべきです。得られたデータが、モデルを作ろうとするエリアや対象の情報を代表していないことが多いです。

また、得られた坑井データから、たとえば孔隙率、浸透率、岩相タイプなどのヒストグラムを作ってみても、そのヒストグラムが油層全体の特徴を表しているとは限りません。

まず生産のために掘られる井戸の分布には偏りがあります。生産井はなるべく生産性のよさそうな場所や、生産スキームによっては油田の中でも特徴的な位置(たとえば油層深度の比較的浅いところや油層層厚の比較的厚いところなど)に掘られることが多いので、そのような場所の油層の特徴をデータが優先的に拾ってきてしまうことになります。

また、例えばコアサンプルを地下からとってきて、1ft (約30cm) ごとに、プラグと呼ばれる小さな円柱状の岩石サンプルを抜き出して、孔隙率や浸透率を測定します。

この時、プラグを抜こうとする場所に孔隙が非常に多くて壊れやすいと、プラグがうまく抜けないため、原則1ftごとにプラグを抜くと言いながら、多少プラグを抜く場所をずらして、岩石が崩れにくい場所からプラグを抜くことになります。

つまり孔隙率の本当に良い場所での測定ができていないということが起こります。

このようなバイアスが起こっているかどうかを確認するために、サンプルが収集されたりデータが測定された場所がどんなところか、その周辺では油層の状況はどうなっているのか気にする必要があります。

そしてデータにバイアスがかかっていると考えられる場合、そのバイアスを加味したうえで、適切にデータを用いて油層モデルを構築する必要があります。

データを大切にする一方で、データの意味をよく理解して、出てきた数値を鵜呑みにしないことが大切なのです。

これは油層モデルに限った話ではありません。とくに実験室における実験ではなく、自然界から得られるデータなどには、おそらく得られたデータにバイアスがかかっているケースがかなりあるのではないかと思われます。

そして社会科学におけるデータや、世論調査などのデータも、どのような集団からどのようにデータを集めたのか十分考慮する必要がありそうです。

データを分析し解釈する素養やリテラシーも、基本的な部分は義務教育の中でだれもが身に着けるべきものなのかもしれません。

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