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貯留岩情報の入手

油層の性状を測定、理解することは石油開発にとって非常に重要です。特に、貯留岩中の隙間の量 (孔隙率)、油層内を流体が流れる時の流れやすさ (浸透率)、孔隙内の流体中の水または油の割合 (水飽和率または油飽和率) などは、 油田内の油の埋蔵量や回収率の推定や、開発計画の立案に大変重要な情報です。

石油開発では地下深くにある実際の油層の情報を直接入手する機会はなかなかありません。基本的には井戸を掘ることによってのみ入手することができます。

実際に地下で油層を形成している岩石を手にすることができるのは、掘削中に循環させている泥水とともに地表に上がってくる掘くず (カッティングス) 、特別なツールを使って地下の岩石を円柱状に切り出してくるコアリング、ワイヤーでツールをおろして、必要な深度で井戸の孔壁に火薬を使用して、あるいは機械的にサンプリングツールを差し込んで小さな岩石サンプルをとってくるサイド・ウォール・コアリングなどです。

カッティングスは循環する泥水とともに地表に上がってくるため、地下から地表に上がってくる時間を推定してサンプルの深度を決定しなければならないこと、地表に上がってくる間にいろいろな深度のサンプルが混ざってしまうこと、サンプル自体が細かい掘くずで、得られる情報に限りがあることなど、欠点はあるものの、掘削中に継続してデータが得られるという利点があります。ただし孔隙率や浸透率などの測定には限界があります。

コアリングは直接、ある程度の大きさと連続性のあるサンプルが得られるため、油層の性状解析には非常に役立ちますが、コストが非常にかかります。また、コアを切り出して地表に持ってくるためにはそれなりのリスクも伴います。したがって通常、事前にコアリングインターバルを慎重に検討して、必要最小限のコアリングを行います。

サイド・ウォール・コアリングはカッティングスと違い、サンプリング深度の不確実性は小さいですが、サンプルの大きさは通常のコアに比べると小さく、岩石の性状によっては回収が困難であったり、崩れてしまったりして、孔隙率や浸透率などの測定が困難となるケースもあります。また、ツールを坑内に落としてしまい、その後の掘削の障害になってしまうリスクもあります。

地下から回収する岩石サンプルは、どれもある程度掘削中に使用する泥水が浸透しており、油層状態での水飽和率を直接測定することは困難です。トレーサーをあらかじめ泥水に混ぜておき、後でどのぐらいの泥水が岩石に浸透したかを推定する方法もありますが、浸透した泥水がどのくらいの水と油を岩石サンプルから押し出し、置換したのか正確にはわからないため、泥水が浸透する前の水飽和率を正確に推定するには限界があります。

以上のように油層の岩石サンプルを入手する方法にはそれぞれ一長一短があり、コストとサンプルから得られる情報の信頼性、そしてリスクを天秤にかけて判断する必要があります。

実際の岩石サンプルを入手するにはさまざまな制限があるため、石油業界では直接岩石を入手する代わりに、物理検層と呼ばれる、様々なツールを使って、油層の物理特性から油層性状を推定する方法が広く使われています。

例えば孔隙率を測定・推定する方法にも、音波、中性子、密度、磁気核共鳴など様々な方法があります。いずれも直接孔隙率を直接測定しているわけではなく、特定の物理現象を測定し、孔隙率に関連しているとの推定のもとに、孔隙率に換算しているわけです。すべての物理検層測定値には、測定誤差も含まれるし、換算のエラーも含まれています。
流体の流れやすさ (浸透率) はさらに物理検層で測定・推定することが難しくなります。

水飽和率は岩石と含まれる流体を含めた地層の電気の比抵抗を測定して、推定することが一般に行われています。地層水は一般に塩分濃度が高く、比抵抗が低いのに対して、石油は比抵抗が高く、孔隙率と地層水の比抵抗がわかっていれば水飽和率が推定できるというものです。ただ、正確に油層内の地層水の比抵抗を知ることは難しく、孔隙率の不確実性や、浸透した泥水の影響などもあり、水飽和率の推定にはやはりエラーが含まれます。

データを使用する人は、データがどのように得られるのか、どのような原理で換算が行われているのか、どのような不確実性が含まれているのかなどを理解するとともに、測定値ばかりではなく、深度や、測定値が代表するサンプルサイズなどにも注意を払う必要があります。

また、データにはバイアスがかかっているということにも注意が必要です。たとえば井戸のロケーションもすでにバイアスがかかっており、油田全体の情報を代表しているとは限りません。コアなども取りたい場所、取りやすい場所から入手されることが多いため、バイアスがかかっている可能性が高いのです。

自分が扱うデータの特徴を理解したうえで、適切に使用することが重要です。

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