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DXは「もっと楽しむ」ために使いたい

東谷:今週末、家族でどっか出かけようと思うんだけど、どこ行こうかな〜

なんぼー:水族館とかどうですか? ちょっとずつ暖かくなってきてるし、イルカショーとかも、お子さんと楽しめそうじゃないですか。

東谷:いや〜水族館はこの間行ったんだけどさ、あんまり良くなかったんだよね。

なんぼー:お子さん、あんまり魚に興味なかったんですか?

東谷:いや、そんなことないんだけど、なんか “新体験” をウリにしてる水族館で、アプリを使って魚を鑑賞するんだけど、それが結構難しくて。

なんぼー:最近、スマホを使ったコンテンツ、多いですよね。

東谷:DXが流行している時代だからな〜。でもさ、うちには子どもが2人いるじゃん。それで俺のスマホ1台を取り合いになって、なかなかカメラでうまく魚も映せなくてさ。あと、水槽には何も魚の説明が書いて無くて、魚の種類とか詳細を知るにはスマホアプリを通して見なきゃいけなかったんだよね。つまり、スマホ取り上げられた俺は全く魚のことわからないわけよ。

なんぼー:それは面白さも半減しそう。

東谷:そうなんだよ〜。まあ、水槽の前に説明がないから、人が立ち止まらなくて水槽自体は見やすかったけど。
なんぼー:人の流れを良くする狙いがありそうですよね。あとは、アプリをDLさせてるので、お知らせをプッシュ通知で送って、リピート客につなげたい狙いもあったのかも。まあでも、もう行かないですよね。

東谷:行かないかな。目の前を歩いてたカップルもさ、ずっとスマホ見てて。全然盛り上がってなさそうだったわ。

なんぼー:DX施策の悪いパターンに陥っている感じがしますね。スマホを使って、体験を “拡張” しようとしたんだけど、実は制限しちゃっているっていう。

東谷:まさにそんな感じだった。スマホ無しだと、元々の水族館の体験価値より全然つまらないものになってたからね。スマホの電池が切れたらどうしようかってヒヤヒヤしたよ。

なんぼー:やりたいことはわかるんですけどね。デバイスがまだ追いついていない。スマートレンズやスマートコンタクトみたいに、つけっぱなしで魚を鑑賞できるデバイスを使うのが当たり前になったら、そういうエンタメもアリだとは思うんですが。

東谷:そうそう!それも感じたよ。スマホだといちいち魚をカメラで映さなくちゃいけなくて、それがだんだん面倒になってくる。メガネで魚の方を見たらすぐに説明が表示されるくらいが本当はちょうどいいんだけどね。後半はその動作が面倒になりすぎて、スマホを使わなくなっちゃってたよ。

なんぼー:スマホを使うことを前提にしたエンタメって結構そうなっちゃう。水族館みたいに、長時間見続けるエンタメは特に体験設計大事ですよね。

東谷:DXで体験を拡張したいなら、美術展とかでやっている音声ガイドみたいな立ち位置がいいな。DXされた追加コンテンツがなくても十分楽しめるけど、追加コンテンツがあるとより楽しめるような。

なんぼー:そうですね。それでいうと寺田倉庫で開催されてた『バンクシーって誰?展』はよかった。中村昌也さんが音声ガイドをされていて、基本的には展示の隣に記載されてる説明を読んでいるんですが、情感溢れる読み方をされていて、情報量が増えた感覚になりました。

東谷:有料のものが多いけど、音声ガイドは結構面白いものも多いよね。

なんぼー:KAWS展ではAR技術を活用した作品もありましたが、それもスマホを使わずに楽しめる作品が9割だったので、スマホを使わなくても楽しめる構成になってましたし。

東谷:いいねえ〜。ただ、まだ子供が小さいから、美術展はちょっと難しいかもしれないな……。

なんぼー:水族館リベンジしましょうよ。僕、海の生き物が好きなので、水族館は詳しいですよ。

東谷:確かに。ダイビングも好きだもんなあ。しかし、水族館も詳しいとは。

なんぼー:水族館だと、江ノ島水族館とか、相模湾を深く掘り下げてて面白いですよ。ここでしか見られない魚も展示されていますし、他の水族館とはきちんと差別化されてます。

東谷:確かに、水族館の差別化って面白いね。確か、クラゲばっかり展示している水族館とかもあったような……

なんぼー:山形の加茂水族館ですね。クラゲドリーム館。

東谷:そうそう。あと俺、深海魚好きなんだよね。確か熱海の方に深海魚だらけの水族館があったような。

なんぼー:沼津港深海水族館。いいですよね、深海魚。

東谷:そうそう……く、詳しいね……。

なんぼー:あとは、鹿児島にある水族館もすごくおすすめですね。いおワールドかごしま水族館。ここには、展示の最後に、何も入ってない水槽があるんです。

東谷:何もない水槽?

なんぼー:その水槽の横にはメッセージが貼ってあって。記事にもなりました。

青い海 なにもいない
もう耳をふさぎたいほど
生きものたちの歌が聞こえていた海
それが いつのまにか、なにも聞こえない
青い海
人間という生きものが
自分たちだけのことしか考えない
そんな毎日が続いているうち
生きものたちの歌がひとつ消え
ふたつ消えて
それが いつのまにか なにも聞こえない
青い 沈黙の海
そんな海を子供たちに残さないために
わたしたちは 何をしたらいいのだろう?

沈黙の海に書かれたメッセージ

東谷:これはすごいメッセージ。

なんぼー:僕、何も知らずにかごしま水族館を訪れて、これを現地で見た時に泣きました。生態系豊かな海の中で生きる魚を散々見てきた後に、こんなメッセージ見ると心臓をギュッと掴まれた気持ちになって。

東谷:最後に見せるっていう演出がまたニクいね。

なんぼー:そうなんです。最初に出てきたらちょっとうざったく感じたかもしれない。途中にあっても萎えるし。しかも、そんな手間もコストもかかってなくて。

東谷:いいアイデア!

なんぼー:発想の勝利ですよね。アプリを作ったり、大規模な投資をしなくても、体験は拡張できるし、まだまだ見せ方の可能性は広がってる。

東谷:いや〜、水族館面白いね。すごく興味を持った!

なんぼー:いや〜。確かに水族館の魅力を話すのに夢中になって暴走してました。興味を持ってもらえて嬉しいです。

東谷:なんぼーくん、一緒に水族館行こうよ!子供と一緒にもっと解説されたくなってきた。

なんぼー:いいですね!行きましょう!

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