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エンタメ作品が提供する、リアリティあふれる嘘の功罪

東谷:今年はより流行りのコンテンツをちゃんと見ていこうと思うんだよね。なんぼーくんおすすめある?

なんぼー:去年を振り返ると、一応チェックしておくべきなのはやっぱりイカゲームじゃないですか。

東谷:やっぱりイカゲームか。なんぼーくん見たの?

なんぼー:いや、俺見るのに長い時間がかかるドラマは見ないんですよね。映画は大好きなんですけど。

東谷:へえ!イカゲーム見た友人は、カイジみたいで面白いよと言ってたよ。イッキ見したそうです。見たら最後、全部見たくなっちゃうから、年末に見たほうがいいって……そう言われると期待しちゃうよな。

なんぼー:デスゲームって基本的にすごく面白いものですからね。こんなこと言ったら身もふたもないけど、構造上人が沢山死んでしまうじゃないですか。

東谷:ほお〜。人が死ぬ作品ってやっぱり面白いのかな。確かに、2020年に流行った鬼滅の刃も、あっけなく人がどんどん死んじゃうもんで、びっくりしたよ。

なんぼー:やっぱり、なんだかんだ人が死ぬシーンって、人の心が動かすものなんですよね。

東谷:言われてみればそうかもしれないな。どうしても、印象に残ってしまう。

なんぼー:普通の世界ではなかなか起こらないことですし。デスゲームは、人を沢山殺せるっていうのが仕組みとしての強さがある。

東谷:ドラゴンボールなんて全然人が死ななかったのに、それに比べて今の鬼滅の刃や呪術廻戦ではどんどん人が死ぬ。その時代でウケているコンテンツのエッセンスって、ジャンプ漫画見てればわかるっていうのが僕の持論だけど、今はそういう、人が死ぬ漫画が流行ってるのかね。色んな刺激的なコンテンツが飽和している中で、どんどんエスカレートしていっているのだろうか。

なんぼー:確かにジャンプはその時代のヒットコンテンツのあり方を教えてくれますよね。最近のジャンプの漫画って、鬼滅が顕著ですが昔と比べると超短いんですよ。だから展開も早い。鬼滅は23巻でスパッと終わってるし、チェンソーマンなんて第一部は11巻ですよ!

東谷:確かに、鬼滅の刃なんて、人気を考えれば100巻くらいやっても良さそうなものなのに。

なんぼー:今は1つのコンテンツが消費されるのがめちゃくちゃ速いからかもしれませんね。90年代後半のエヴァブームって1年くらい盛り上がったじゃないですか。でも鬼滅は一時期に比べるとそこまでもう盛り上がっていない。

東谷:よもやよもや。煉獄さんも確かにあまり見なくなったね。

なんぼー:コンテンツの広がりを縦を時間軸、横をメディア展開とすると、今は横の広がりが一気に広がる代わりに、縦の広がりは短くなってるのかもしれないっすね。

東谷:確かに。一時期鬼滅はCMでもコンビニのコラボ商品でもアパレル商品でも、四六時中見かけたもんね。

なんぼー:あとは、LiSAさんの主題歌の歌ってみたとか、それこそ煉獄さんの「よもやよもや」の口癖とか、人々が真似して、それを発散する場所も多様にあるんですよね。YouTubeやTikTok、Twitter。その分、有名な歌い手がYouTubeにカバー曲をあげたりとか、無数に関連コンテンツが増えていく仕組みになっている。

東谷:それは日常を過ごしている中でも感じるな。一般人が真似した様子をSNSに挙げられるようになったことで、パロディがものすごいスピードで生まれて、消費スピードが早くなってるね。しかも、一般人と言っていいのか——インフルエンサーの人たちもクオリティ高いパロディやったりするから、あっという間に飽きちゃうっていうか。お腹いっぱいになっちゃうというか。

なんぼー:だからやっぱり、イカゲームは今年の教養として見ておくとして、もう流行りとしては遅いのかもしれないっすね。

東谷:ひえー!今の時代についていくって難しいなあ。とすれば、何を見ればいいんだろう。リアリティショー?やっぱりバチェラーとか見てみようかなあ。

なんぼー:リアリティーショーは映像作品の中では近年の発明ですよね。フィクションって沢山見るの疲れますけど、リアリティーショーは、友だちが話してる恋バナみたいなコンテンツだから、ダラダラ見ても疲れないし。

東谷:なんか見た人同士で内容について議論するのも面白いらしいね。会社のメンバーが、Slackでバチェラーを一緒に見るスレッド作ってめちゃめちゃ盛り上がってたよ。でも、過熱しすぎて怖く感じることもある。誹謗中傷とか毎回話題になるじゃないですか。どうにかならないのかね。

なんぼー:リアリティーショーは、人類には速すぎましたよね。

東谷:あはは。でもわかる気がするなあ。

なんぼー:出ているのはリアルな世界を生きる一般人だけど、作り方がフィクション、という仕組みを、理解できていないひとも多いのかもしれない。だから、出演者は生身の人間にもかかわらず、フィクションに出てくるヴィランみたいに叩かれてしまう。

東谷:相手が画面の外でも生きている存在だという意識が薄いのかもしれないなあ。画面の外でどんなに素晴らしい人でも、僕らは見えないし。番組としては、より一層キャラが際立つように編集するだろうしね。

なんぼー:更に言うと、今はその悪口がSNSでどこまでも広がっていきますし、直接その人に悪口が伝わりますからね。

東谷:イカゲームもリアリティーショーも、現実では起こり得ない、心動く瞬間を消費させているという意味では共通しているのかも。でも、リアリティーショーの出演者は実際に生きている人間というところが異なる。それはいい意味で、フィクションよりさらに視聴者に感情移入させる仕組みでもあるけど、一方で、その熱い気持ちを直接誹謗中傷という形で出演者にぶつけさせることもできてしまう。考えれば考えるほど、中毒性がありすぎてこわいね。

なんぼー:そのとおりですね。でも、この問題自体は世界中で話題になっているし、今後対応策が生まれていくんじゃないかと思ってます。

東谷:人類がこのフォーマットに慣れるのが先か、規制されるのが先かどっちだろう。ひとまず僕は両方見たいので、イカゲームもバチェラーも、「これは非日常!非日常!」と唱えながら見ます。(笑)

(イラスト:鈴木沙佑海)

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