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愛のない主人公を演じる江口のりこの役者愛

木曜劇場『SUPER RICH』。

木村文乃→上野樹里→安藤サクラ→すべてNG(フジテレビ関係者談)

という変遷を経て江口のりこさんが大抜擢されただけあって、気合が入っていましたね。


掴みが完璧!

開始10分でどんな物語なのか、どういう方向に進むのかを示すのがドラマのセオリーです。

例えば、恋愛ドラマであれば開始10分で主人公とヒロイン or ヒーローを出会わせることが必要になります。

本作は、その半分。

開始5分で、生まれた時から金持ちで両親が亡くなっており、愛を知らずに育ったというキャラクターの背景を心理カウンセラーを通してさらっと説明します。

何かまずいことがあり、そこに通っているという謎を匂わせ、次に女性主人公が移動して、すっぴんかつ部屋着の状態で授賞式に登壇します。

みすぼらしい恰好の彼女が言い放った――

「金なんて、いくらあってもいいですからね」

タイトル、ドーンッ!

これは痺れました。

江口のりこさんの関西弁のイントネーションも、この主人公のらしさを引き立てています。

木村文乃さん、上野樹里さんだと別の台詞回しになったと思いますが、あの5分の掴みは、物語に没入させる吸引力がしっかりありました。


脇役も魅力的。下の名前で呼ぶのも新鮮

そこから冒頭の出来事にいたるまでの経緯が少しずつ語られてゆき、相手役?となりそうな赤楚衛二さん、志田未来さんなどの新入社員が登場します。

脇を固める俳優も古田新太さん、中村ゆりさん、町田啓太さん(赤楚さんと合わせてチェリまほコンビ)といったかたちで実力、話題性ともに申し分なかったです。

とくに、江口さん演じる「氷河衛」は社長という立ち位置ですが、近しい社員には下の名前「衛」や「衛さん」と呼ばれているのが、新鮮でした。

前のクールの「ナイトドクター」のため口は正直受け付けなかったんですが、これくらいの親近感はありかなと思います。


絶対失敗しない

あと、印象的だったのは、衛が社員たちとの会議で言った以下の言葉。

「大丈夫。絶対失敗しないから」

投資において絶対失敗しない、はあり得ない言葉です。

これを言ったら詐欺です。

冒頭で失敗を匂わせていましたし、21時代の某デーモンの名台詞もパロっていますし、色々と効きすぎているんですよね……すごい。

まさに、絶対に失敗しない台詞でした。


リッチ(rich)が何をさすのか

主人公「氷河衛」は、愛のないお金のある家庭で育ちました。

なので根底からひねくれています。

しかし、36歳にして電子書籍の会社を築き、恋愛まで発展しないものの信頼できるパートナーがおり、社員に慕われ、仕事も順調でした。

このパートナーに裏切られ、彼女の根幹であったお金と仕事、手にしかけていた愛を失います。

彼女の対比として、愛のあるお金のない家庭で育った赤楚衛二さん演じる「春野優」が登場します。

彼は学費を払うために親に借りた5万円を使い、衛の会社に入ろうとしますが、インターン試験に遅刻して試験会への参加を断られます。

愛や優しさはあっても何の役にも立たない

お金がない人にはチャンスさえも与えられない、と打ちひしがれますが、彼は何とかチャンスを掴もうと衛のために行動します。

1話の終盤、衛と優が一杯のラーメンをかけそばのごとく分け合うシーンは、相容れなかった2人が少し分かり合い、心機一転して逃げていた問題に立ち向かうシーンになりました。

このドラマの本質は「スーパーリッチ」のリッチ(rich)が何をさすのか、だと思います。

お金。

愛。

その両方。

それ以外の何か。

氷河衛が、各話を通して何を幸福だと考えるのか。気になるところです。

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