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【読書・本】読書する人、本に興味を持つ人を増やすにはどうしたらよいか?

今回は、このYouTubeを見ての感想を書いてみようと思う。

この動画の内容は約25分ほどのもので、今をときめく小説紹介クリエイターの けんご氏がゲストに招かれた回のものだった。テーマは「出版業界の未来」についてというもので、動画の中では だいたい以下のようなことが語られていた(はず)。

●個人書店だけでなく、大手の書店でも閉店が進んでいたりしていて、出版業界が「斜陽産業」と言われるのは、あながち間違っていない状況。

●本の帯の宣伝手法が業界内の人向けで、本屋さんに来る人に響く内容としては疑問符が付く。また「〇〇ランキング第1位」とか、簡単に作れる1位を主張するものも多い。

●無料でWebに掲載された漫画は、実売売上も上がっている。必ずしも無料にすると儲けが出ないというわけではない。そのため本においても、一部無料(なんなら完全無料)で読ませる手法を推し進めてもよいのでは。

●書店に行けば”映え写真”が撮れる、というような空間にすると人が集まるのでは。
※撮影自体の基準クリアが現時点では難しい。

●SNSの効果は絶大なのに、各出版社はSNSを駆使しているとはいえない。ショート動画で本の紹介をするなど、まだまだ出来ることはあるのでは。

YouTube動画内容を集約(誤りがあれば失礼💦)

のっけから出版業界の暗い話が語られる。本屋さん、全国的にどんどん潰れてるらしいもんね。そんな衰退の要因のひとつが雑誌の減少にあると語られていた。それまで週刊だった雑誌が月間に、月刊だった雑誌が季刊に、と。発行頻度が減っていった。それならまだいい方で、そもそも雑誌自体が休刊、廃刊になったものも多い。それにより、本意ではないにせよ、この雑誌を楽しみにしていた人たちから、毎週、あるいは毎月1度は本屋さんに行くというルーティンを徐々に壊してしまったわけである。そして雑誌を買いに来る人たちの「ついで書い」の機会をも奪ってしまった。新鮮な情報はWebに勝てなかったかも知れないし、コスト的に割に合わなかったことも確かだろうけれど、失ったものの代償は、あまりにも大きかったように思う。
(もちろん仕方ない側面はあったと思いつつも、での意見)

次に宣伝手法について。動画内で語られているが、僕個人も「〇万部突破!」とか「絶対に泣ける!」とかいう帯やPOPを見てもあんまり響かないし、むしろ興醒めすることのほうが多い。そこそこ本を読む人にとっては、かえってノイズみたいなものになっていて逆効果になっているのかもな、と思う。ただ、普段本を読まない人に対しての効果は、まあそれなりにあるんじゃないかな、とも。SNSなどで積極的に収集している人たちなわけないのだから、何かしら道標になるようなものは欲しいだろうし。でも、その普段本を読まない人たちが、どれだけ本屋さんに来るかという話かなと。そもそも来ないんだとしたら、どんなに帯やPOPに力を入れても、その効果は1割も発揮されていないのかも知れない。喩えは悪いが、郵便受けに無造作に入れられるチラシと同じで、広告効果なんてそんなもんだと言われればそれまでなんだけど、この点について けんご氏は、業界内の奢りというか、世間では通用しない数字や言葉の羅列が多いという警鐘を鳴らしていた。これは本当に同感するところだった。

他、販売手法として、一部の漫画のように無料展開してみることも面白いだとか(売れるものは、無料にしたところで結局利益が出るから、ということで)、もっと出版業界自体がSNSを上手く活用することなどが語られていたけど、これは出版社だけではなく作家さんの協力(あるいは了承)も今以上に要ることだろうから、なかなかハードルが高いのかも、とは思った。

動画についての話はざっとこんな感じだったんだけど、なかなか業界にいる人たちにとっては手厳しい話になっていたのではないだろうか。「そんなことわかってるよ!(でも解決、解消策が無いんだ!)」みたいな話なのかも知れないし、業界にいるからこそ容易ではないことあるだろう。でも、出版関係者であるかどうかなど問わず、本が好きな人たちが知恵を出し合えば、もうちょっと今よりももっと集客に繋がる良策が生まれるかも知れない。というか、それを期待しての動画だったとも思う。

”娯楽”としての本の立ち位置って

さて、どうやったら本屋さんに人々が訪れるか、その話はいったん横に置き、そもそも本を読むということを娯楽の面から考えてみたい。小説などの娯楽本を読むという行為は、昨今の様々な娯楽と比較して見た場合どうなんだろうということを。

まず1冊の小説(ここでは長編にしておく)を読むのにかかる時間は、もちろん内容や厚み、難易度にもよるが、一応 平均的なものと仮定したとして、短いもので3時間とか、長いものだと5、6時間というところではないかと思う。これはプロ野球やテニスの試合をずっと観戦するとか、夢の国で遊ぶ時間に相当するかそれ以上の時間にあたる。仮に3時間だったとしても、映画なら2本、アニメなら5、6話くらい、YouTubeなら…よそう。しかも勝手には先に進んでくれなくて、「自分で読む」という努力が強いられる。いろいろ楽しめることで溢れている時代において、これはかなり大変な作業を要するものだ。なので、初めから読書を”娯楽”とカウントできない人がいたとしてもおかしくない。改めてそう考えると、今から読書する人のパイを増やしていくというのは、かなり困難を極めるものだと理解出来る。

じゃあ、本を読むことが好きな人は、読書の何に魅力を感じているのか。言うまでもないことだろうけど、それは、

言葉の連なりから得られる感動やら恐怖、悲しみを体験すること

だと思う。もっと言うと、文字の羅列を見ては様々なことを想像し、そこから快感を得るということに楽しみを見出せる人たちなんだと思う。
(”イヤミス”と呼ばれるジャンルを読んで不快になることも、マゾ的要素の含まれた快感と言っていいと思う)

考えてみると、歌にせよ、そのメロディーに心を掴まれることもあるが、大半は歌詞に心惹かれたから好きになった、ということが殆どだろう。それと同じかそれ以上に、小説の中においても素晴らしい言葉に出会える可能性は高いはずだ。だがその言葉に出会うためには、300ページあるうちの250ページを読むことが強いられる、ということも多く、これは”対価”として見合うものかどうか(いや、見合わない)ということが、現代の本を娯楽に出来ない人たちの主張したい点なんだろうなと思う。
(もちろん、そうではない意見もあると思うけど)

どうやったら、もっと本を読むことに興味を持たれるだろうか?

「本を読む」ということは、たとえば誰でも明日から生活に組み込むことが出来るくらいハードルの低いものである。それゆえ、実は本を読まない人たちにとっての期待というものも大きいものだと考えられないだろうか。潜在的には、本から常に何かしら心が満たされることを欲しているかも知れない、とまで思う。

なので僕も、Webに無料掲載することに近い内容にはなるが、無謀で失礼なこととは思いつつも、以下のことを提案したい。

”文豪の書いた本だろうが、流行作家さんの新刊だろうが、本を買った人以外にも、中身は一部開示していくという施策”

たとえば、川端康成の『雪国』の冒頭の文章は有名で、それは多くの人に知れ渡っている。が、その有名な一文は知っていても、実際に本は読んでない、という人も多い(はず)。また、古今東西の版権の切れた作品は、多くが無料の青空文庫で読めたりもするが、青空文庫の存在を知っていたとしても読まない人は読まない。でも「なんか いいなと思える文章があると知ったから読んだ」とか、「タダだからと読んだら面白かったから、その後の作品も読み続けた」という人も少なからずいるはず。

そこで、どの程度ネタバレに繋がるかは意識しなきゃいけないかも知れないけど、素人によるものではなく、ちゃんと出版業界側が仕掛け人となって、「(ここで)泣いた、震えた、恐怖した」というセリフや文章なんかを、書店の店内やら販促グッズやら、あらゆる場所や物を使って、今より中味をオープンにしていく施策を取れば、もっと興味を持つ人が増えるんじゃないかな、と。もちろん最初は本好きの間でしか話題にならないかも知れないが、本というものは閉ざされた世界では無いし、たくさんの魅力ある活字に溢れていることを知るきっかけにはなるんじゃないだろうか。それだけプロが魂込めて書いた文章や練った言葉って影響力のあるものだと思う。そういう意味でも、これは絶対にアナログな手法を取るべきではある。最初から能動的に本の情報を得るような人向けの施策じゃないのだから。

とはいえ、作家さんたちの様々な権利は守られることが前提なので、電子書籍化同様、自分の書いたものを、たとえ一部であってもオープンすることに同意できないという場合は、今までと同じ売り方になるだろうから、それはまた別の打つ手を考える必要はあるだろう。それに、最初はベビーステップでいいと思う。むしろそのほうが思い切ったことが出来るとも思うので。

まとめ

長々と書いてしまったが、人が興味を持ち、行動に移そうとするのは、カンタンだったり、キャッチーな言葉ばかりではない。また本を読む習慣のある人の「楽しみを奪う」ということに気を遣い過ぎて、結局 何かフワッとしたものでの紹介に終始してしまっているような気もする(SNSでのも読書感想でも、そういう気遣いが無いと叩かれるという傾向にあるが…)。だからこそ、「オープンにするからこその反響」というものに可能性を賭けてみるのはどうだろうか。なんでもフリーにするのは違うが、こと小説は、まだまだクローズな世界にあると感じているからこそ、何かしら期待が出来そうだと、僕はそんなふうに思うのだが。とりあえず、ここまで読んでくれた奇特な方々は、上に貼った動画を見た上で、いろいろと考えてみてもらえたらと思う。

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