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不死者は定命者の夢を見る 第四幕

第四幕 涼宮

その女は涼宮と名乗っていた。色の白い美しい女だ、何を求めているかわからない、虚ろな瞳に少しばかり狂気を宿した瞳をしている。

ただどこかのアイドルや女優なんかよりも美しいその雰囲気に引き込まれる者達がいる。

身長は165ほど、服装は少し露出の激しいどこかの制服のようなもの。

スプリットタンに六連のシルバーピアス。右耳につけている。
胸元にはスカルのリングネックレス。

ここは東京のとある街の裏路地、涼宮はにこりと笑う

「不死宮、あなたは私を平穏に連れていきたかったようだけど、もう無理よ」

涼宮は笑う。

「あなたもわたしも人の理から外れ生きているのだもの、それに人間なんて汚れてばかり、いい人間を集めましょう、ろくでもない人間達を糧にして」

目の前にいる虚ろな瞳の人間達に声をかける。

「来なさい、永遠がほしいのでしょう?」

その日とある場所に属する人間達が消えた。

「杉並区全般で大規模人間消失ねえ」

くたびれたスーツに若葉の煙草を吸う、くたびれた男、髪の毛をオールバックにして黒髪をワックスでかため、スーツは着ているが、どことなく何の仕事をしているかわからない男、目元は眠たげだがどこか気品のある美男子という雰囲気だ、年は20代後半か30代後半に見える。

隙があるようで隙がない。

「んで、お前は何してんの?」

公園のベンチに腰かけていた男の隣にフードを被った男が現れる。

「…お前こそ、何してる?」

「人生の旅路かなあ」

「時間を必要としない俺たちになんの意味がある」

「人らしくいるのに大切なことだよ、ムジナ」

煙草は携帯灰皿を持ちながら若葉を吸い終わる。

「…この公園は煙草OKなのか?」

「奇跡的にな、喫煙者にはありがたい公園だ」

ムジナと呼ばれたフードの男は懐からアイコスを取り出し不意に吸い出す。

「紙はやめたのか?」
「基本的にはな、ある程度匂いは気にする」

「そういうとこマメだよなあ」

男はため息をつくとまた若葉に火をつける。

「丸谷」

「どうした?」

「涼宮が動いている」

「ああ、不死宮の初めの血族か」

「どうする?」

丸谷と呼ばれたくたびれた男は

「別にー、俺はいつものスタンスさ、不死宮には借りがあるからな、例えあいつの娘だとしても、この日常を壊すなら動くぞ」

「なるほどな」

「お前はどうするんだ?ムジナ?」

ムジナと呼ばれたフードの男は肩をすくめる。

「さあどうだろうなあ」

ムジナはくくと笑い何かをたくらむような笑みを向けた。


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