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消えたコンビニ

留学生活にも慣れて近所によく出かけるようになった頃、俺のなかに一つの衝撃が走った。

コンビニ……だと?

山の上にあるnight marketの道なりでそれは異彩な輝きを放っていた。
なんせセブなんて、中心部以外は田舎町、暗くなれば店の明かりと街頭のLEDの不釣合な明るさが汚ねぇ空気を可視化させる。

そんななかで、クリアに見える24の文字。文明の明かりだ。

それは明らかにコンビニだった。

セブ島のしかもこんな田舎で、セブンイレブン以外のコンビニが存在しているだと?

周りと明らかに系統の違う看板

いかねばならない。後輩たちがナイトマーケットにはしゃいでいる間、俺の頭はあのコンビニのことでいっぱいだった。

山の上にあるnight market おっちゃんがジップで特別に連れってくれた
ここからさらに上へ向かうと Sirao Garden がある
この上のテラスに上がりたかったけど、満杯だった
理想
現実 割とうまかった

バイタクで三ケツして一度学校へ帰り、再びコンビニへと向かう。

大通りに待ち構えているバイタク勢を押し除け、普段はあまりいくことのない左側へ。

俺たちが街へ向かうのはいつも右の道路。あちらにはハンバーガー屋とタバコが最安値のサリサリがある。

今日いくのは左側、普段barbershopに行く時しかいかない。ガソスタくらいしかないと思っていたが、左にはPharmacyとMandaueに繋がる裏道があることを後に知ることになる。

いきつけのバーバーショップ 1回60ペソ

ガソスタのちょい手前まできて、コンビニ到着。

やはり明るい。外からでも見てとれるほどの店内のクリアな照明。そしてなによりスーパーを彷彿とさせるほどの品揃え、ヘアオイルまであるだと……?

さっそくお酒を購入。JACK DANIELSのCokeがあったので、即買い(あまり美味しくなかった)。

隣にいるKorean teenは俺おすすめのスミノフもどきを爆買い(フィリピンでは飲酒OKな歳)。

「そんな買っても飲みきれんやろ」という俺に対し(うちの学校は酒の持ち込み禁止)、やつは「大丈夫、僕最強だから(言ってない)」と持ち込む気満々の様子。

当時はまだ、酒を持ち込んだことがない俺だったので、参考がてら持ち込む様子を学校にて確認し、その日は終わる。

そこからほぼ毎日、コンビニへと足を運んでいた。なにせお菓子が割と安い。あとトイレットペーパーもある。うちの寮部屋はトイレットペーパーが共有物なため、4人もいるとすーぐなくなるんよ。

前はジップの終点があるくらいに思っていた左路地であったが、コンビニができたことで足繁く通うように。

近所に住むteacherともコンビニでばったり合うこともあったりなかったり、徐々に俺が毎日酒を飲んでいることがteacherたちに知れ渡ったところで、事件は起きた。

その日はトイレットペーパーをきらしていたので、友達のねぱーる(youtuberのねぱーるに似ているため)と例のごとくコンビニへ向かった。

ねぱーるは半年も滞在予定のくせにほぼ授業に出たことがないという強者でpunishmentの外出禁止もそもそも部屋からでないので意味を成さないという最悪の世代の一人なのだが、その話はまた後日。

まぁそういった事情もあって、よく俺が外へ出る時に声をかけているのだが、なかなか外に出んのよ。
そんなやつがコンビニへは喜んでついてくるため、コンビニに行く際はmustで連れてきている。

例のごとくbarbershopのあんちゃんに声をかけ、新しくできたであろうsmoothie屋を吟味し気づけばガソスタへ。

………ん?

「あれちょっと待てよ。なんで俺らガソスタまできてんねん。行きすぎたか?」
「え、でもコンビニなかったで」
「見逃しただけかね」

んなわけないやろ、と心で思いつついつもより大幅に行きすぎている道を戻る。

肉屋の前を通り抜け、アイスボックスのあるサリサリを抜けたあたりで……ってまた過ぎてるやん。

「あれ、おっかしいな」
「看板があるはずなんだけどな」

看板があるはず……?
不意に上を向くと、そこには何もない鉄の枠があった。
まるでこの前までそこに何か置いてありましたよと言わんばかりの人目を引く、大きな枠。

「「え」」

いやいやいやいや、と二人して苦笑い。

そのあと、なんとかそれっぽい建物を探しあてシャッターが閉まっていることを確かめる。

「……」
「これワンチャン…」

皆まで言う前に、そこらへんの通行人に話を聞く。

曰く、「あ、そこ閉まったよー」

なんだと。看板もすべて撤去されて、コンビニが……ないだと?

あれだけ大盛況だったのに? No way…

コンビニの閉店に落胆しつつ、さりとてトイレットペーパーを買わなければいけない焦燥に迫られつつ、とぼとぼと上を目指す。

近場のサリサリにトイレットーペーパーくらいあるやろ。と、Pharmacyを知ったのはこの時である。

あとから聞いた話、あのコンビニが存在していたのは実質3週間ほどしかなかったそうだ。

留学生で利用者も少なかったことから、その存在を知るものはほとんどいない。

いまでは本当にあったのかすらも定かではない。

フィリピンのビジネスの厳しさをしりつつ(光熱費は日本と変わらん)、新たな店の開拓にいそしむ日々であった。

実は同じころ、学校の目の前に新しくサリサリができたのだ。コンビニに気を取られていたが、あまり通うことはなかったが、何かの拍子に入ってみようと思っている。

それがのちに卒業まで俺のいきつけの店となることと知らずに。


#セブ島はいいぞ

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