見出し画像

私がライブレポ(感想文)を書く理由


音楽が好き。ライブも好き。でも、諸々の事情によりライブに行ける回数自体はそんなに多くない。
そんな私がライブに行ったあとほぼ必ずすること。それは、ライブレポ的な文章を書くこと。

便宜上「ライブレポ」と表記することが多いけれど、個人的な感覚としては「ライブ感想文」とか「ライブの感想日記」とか、「ライブレポ的エッセイ」という方がしっくりくる(エッセイもややお洒落で気が引けちゃうけど)
公式にライターさんが書いているようなライブレポとは違って、私が書くものは私情をはさみまくりだから。私視点のものの見え方や心の動きがじゃんじゃん入ってくるから。

最近ふと、どうして私はライブレポ(的なもの)を書くんだろう……?と思ったので、それとなくまとめてみることにした。


ひとつはやっぱり記録のため。
どんなに忘れたくないライブも、記憶も、少しずつ忘れていってしまうから。特に細かな演出やMCの内容、自分の心の動きなどは鮮度のいいうちに記録しないと記憶が薄れてしまう。
そして私はもともと、いいことも・そうでないことも「なんでも(なるべく)覚えておきたい」性分。かつ、「書く」ことでより記憶が定着するところがあるので、書くのだと思う。


もうひとつは、余韻に浸るため。
ライブレポを書くときは、いつもそのライブのセットリストでプレイリストを作って、聴きながら書くことが多い。
書きながら、もしくは書いたものを自分で読み返して(読み返せないときは頭の中で暗唱して)何度もライブを反芻するのが好き。
本来なら、ライブはその日その瞬間の1回限り。でも、ライブレポを書くことで何度もそのライブを体験しているような感覚を味わえる。
「あの日」「あの瞬間」の自分にちょっとだけ、タイムリープできる。
ライブが終わったあとの「ああ、終わっちゃった」というあの感覚を、ライブレポを書き上げたあとにもう一度味わったりもする。

……なんて書くとちょっと変?なのかもしれないけれど、私にとってはどんな娯楽や嗜好品より魅力的な楽しみなのです(と言いつつ書きながらコーヒー飲んだりアイス食べたりもするけれど)


さらにもうひとつ、書いているときの自分が好きだから。
ライブレポを書いているときの私は、とてもワクワクしている。
スーパーマリオでいうスターモード。無敵感。
ネガティブや虚無をはねのける精神状態(※ライブの内容によっては真逆に陥ることもある)
ある意味ハイというか、普段とちょっと違う状態なのかもしれないけれど、でもそんな自分も自分なわけで。そしてそんな自分がけっこう好きなので、ライブレポを書いているときはそんな自分に出会えてうれしくなる。

好きになれるのは自分のことだけじゃない。書いている曲やアーティストのことも、もっともっと好きになる。
あ〜!この曲のここ!大好き〜〜 って気持ちが溢れてくる。
好きとうれしいと楽しいは、心のお守り。


つまりは自分が楽しくて・書かずにいられなくて書いているのだけど、ここからはもう一歩踏み込んで。
ライブレポを書いて、それを読んでくださった人からありがたいコメントをいただくことがある。
誰かとライブの感動を共有できたあの瞬間、とてもうれしくなる。
同じライブに行った人だけじゃない。ときにはそのライブに行きたくても行けなかった人がレポを読んで、「ライブの様子を知れてうれしい」「自分も行った気持ちになれた」「ありがとう」と言ってくださることがある。
恐縮です。ありがとうはこちらこそなのです。

さらに言うと、まれにアーティストご本人に届くこともある。ありがたいコメントをいただいたこともある。
自分のために書いたものが、結果として誰かに喜んでいただけると、書いてよかったなぁとしみじみ思う。
でも、それらはハッピーなおまけ要素。
やっぱり自分が好きで、楽しくて、覚えておきたくて、自分のために書いている部分が大きいかな。


初めてライブレポ的な文章を書いたのは、11年前。
2013年に行われたBUMP OF CHICKENのツアー『WILLPOLIS』大阪城ホール公演のあと。私にとって2度目のBUMPのライブだった。

ちなみに初ライブは2012年の『GOLD GLIDER TOUR』で、同じく大阪城ホール。
中学生の頃から好きだったBUMPの、念願の初ライブ。当時の私は22歳。
このときはまだ、ブログもSNSもしていなくて、ライブの記録を残すという考えも浮かばなかった。
だからなのか分からないけれど、念願の初ライブだというのに記憶がほとんどない……(なんてこった)

その後23歳でブログ(今もゆるやかにつづけている)を始めて、もともと書くことは好きだったのもあって、日常のいろんなことを雑多につづっていった。
そんな中、2度目のBUMPのライブへ行って、感動して。ほぼ習慣のように書き留めた感想文が、はじめてのライブレポ的なものとなった。

それを書いたあたりから、同じBUMPのライブに行った人やBUMPが好きな人たちとの繋がりができて、今でもつづいている人もいる。
BUMPに限らず、行ったライブの記録を残すようになったのもその辺りから。

先述の通り、私が書くライブレポはいつも私情はさみまくりのほぼ日記かエッセイのようなもの。
完璧じゃなくていい。それが目的じゃないから。私の目や耳や心が捉えたこと、感じたことを、覚えていること、覚えておきたいことなどを、自分なりの言葉で綴るもの。
どちらかといえば、内向きなものだった(と思う)

そこから、少しだけ「外」を意識して書くようになったのが2018年あたり。
rockin'on主催の「音楽文」という投稿サイト(現在はサービス終了している)に文章を投稿したとき。
amazarashiの武道館公演『新言語秩序』のライブビューイングを観て、えらく衝撃を受けて、書かずにはいられない衝動が全身に走ったとき。

ある程度自由な形式ではあったと思うけれど、自分のブログに投稿するのとはわけが違う。
自分のブログなら、いきなり本編や自分が書きたいことから書いてもよかったかもしれない。
でも、amazarashiを知らない人やあのライブを観ていない人・あのライブのコンセプトを知らない人が読んでも伝わるようにしたかった。

自分が感じたことを残すことと、誰かに伝える文章を書くこと、そのバランスがむずかしくて(そもそも他人に「説明」をするのが苦手で)苦戦したのを覚えている。
結果的にその文章は、その月の月間賞(入賞)に選んでいただけて、とても嬉しかった。


もう音楽文は終了してしまったけれど、その後も文体など細かい部分は変わったり試行錯誤しながら、今のかたちに一旦落ち着いている。
自分が書きたいことと、他人に伝える文とのバランスも、前よりは取れるようになってきたんじゃないかなぁと思う。
(あんまり心の奥深く潜って私情をさらしすぎると、あとあと自分で読み返せない文章になっちゃうので)


ところで、ライブレポを書いていると「記憶力がすごい」という言葉をちょこちょこいただくことがありまして。
自分ではそこまで超人的な記憶力はないと思っているけれど、そう言ってくださる人がいるということは、少なからずそういう面もあるのかなと思ったり……。

今年の3月頃だったかな、ライブによく行きライブレポもよく書く方が、記憶力が良すぎるゆえに録音などを疑われて、録音じゃなく自分はこんなふうに記憶しています……といった表明をしている投稿がSNSに流れてきたことがあった。どうやら、その人には記憶する「方法」があるらしかった。

そういえば私の場合はどうやって記憶してるんだっけなぁと思いをめぐらせて、『ライブの記憶と記録のエトセトラ』というタイトルでnoteを書こうとしていた時期があったり……
(ノウハウ的なものではなく、単に自分の頭の中で何が起こっているのか言語化してみたかった)
結局エネルギー不足で下書きのままだけれど。
いつか気が向いたらつづきを書くかもしれないし、このままお蔵入りかもしれない。

ひとつ言えるのは、断じて録音や録画などはしていないということ。
公演中にメモ(紙やスマホ等)をとることもしていない。ライブ中はライブに集中したいから。
覚えようと必死になってメモをとっていたら、自分が集中できなくなるというのもあるし、周りの人も「この人なにしてるんだろう……?」って気が散っちゃうかもしれないし。強いていうなら、心の中にメモしている。

ライブの最中に限らず、たとえば対バンライブ時の転換作業中であっても、その場でメモをとったりはしない。
心の中で余韻に浸りつつ、次のアーティストへの気持ちを高めている。
ライブが始まってから終わって、家にたどり着いていろいろと落ち着くまでは基本的にあんまり記録したり発信したりをしない。
余韻や興奮であわあわしているのと、そもそもの瞬発力がないので……。
ゆっくりゆっくり、言葉になっていく。

忘れたくないことは、案外覚えているものだし。セットリストのプレイリストを聴いたり、ライブレポを書いていたら、後からでもどんどん記憶があふれてくる。
私が思い出せないことも、ほかの誰かが覚えているならそれでいいし、私は私が覚えていることを書けたらそれでいい。そんな感じ。


ライブレポとか音楽についての文って、対象のアーティストに興味がない人にとってはとっつきにくいところがあるのかなと思ったりする。
でも、私にとってはあくまで私の一部という感覚。
何かを見て、聞いて、触れて感じたことを、自分なりの言葉で残したくて書く日記の類とそんなに変わらない。
だから、音楽や対象のアーティストが好きで読んでくださる方はもちろん、私という1人の人間への興味?から読んでくださる方々にも、とても感謝している。


先日のサカナクションのライブから2週間弱が経とうとしている。
ライブレポも書けて、少しずつ気持ちは落ち着きつつあるものの、いまだにしあわせな余韻の海を泳いでいる。
子どもの頃プールでたくさん泳いだあと、いつまでも水に浸かっている感覚が抜けなかったあの感じを思い出す。
次にライブへ行けるのはいつかな。
いつかまた音楽の海に浸れるその日まで、ライブの記憶と記録を心のお守りにしながら、日々を乗りこなしていくよ🫧🐟

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?