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短歌とエッセイ

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自作短歌とエッセイ。すべてフィクション
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記事一覧

【短歌】梅雨と仲良くなりたい

幸福が地獄の彩度を上げる夏もう生きるのは無理かもしれない

病名も地獄もハッピーエンドへと消費されないために詩を詠む

泣きながら眠る身体を干す場所も見つけられずに生臭くなる梅雨

もう人間キャンセル界隈 6月はかわいい芋虫として生きます

抱擁もショートケーキも自傷になる寄り添ってくれるのは歌だけ

ぬくもりを夜ごと辿った鍾乳洞 雨が止むまで灯し続ける

【短歌エッセイ】季節ごと好きな花の名を教えたが自分で買えばよかった花束

 21歳の誕生日にどうしても花束が欲しくて、お花屋さんの前を通る度に恋人にねだった。百合とかすみ草が好き。デルフィニウムは青が好き。包装紙はこっちよりこっちの方が可愛いと思う。

 恋人とは大学2年生から卒業まで、約3年間付き合った。お互い家が大学の近くだったから、半同棲状態で毎日のように一緒にいた。
 付き合ってすぐにコロナ禍になったのもあり、家で過ごすことが多かった。春は手を繋いで家の前の桜並

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短歌

いつの日か本当の私の手のひらで本当の初夏の風に触れたい

玉入れの玉を数えるスナップでいらない形容詞を投げ捨てる

振るい漉し最後に残ったものだけが愛なのかなぁ 重すぎるかな?

焦げ臭い指と火の先に祈りを見た日もあった 傷は勲章

琺瑯のバターケースと花と手紙 食卓のひかり暮らしは祈り

日常に短歌が満ちていたのなら文鎮はいらぬ 風になりたい

めくるめく風がページを捲ったら世界を巡る旅をしよう

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