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『007 スカイフォール』ネタバレ感想からの『ノータイムトゥダイ』雑感

『スカイフォール』『スペクター』『ノータイムトゥダイ』のネタバレなのでまだ観ていない方はお気をつけてくださいませ。


007シリーズといえば子どもの頃に観た、ショーン・コネリー。胸毛と色気がムンムンしてて、見つめ合っただけで次の瞬間ベッドシーン。子どもながらに感心していました。

コネリー・ボンドに比べると、ダニエル・クレイグはなんだか華がないというかクセがなくて食わず嫌いしていたのですが、せっかくクレイグ最後の007『ノータイムトゥダイ』劇場公開中につき『カジノロワイヤル』だけ観て映画館に行きました。

大失態です。『ノータイムトゥダイ』はその前作『スペクター』からの続きもので、そちらを観ていないと人間関係がわかりません。というわけで、遅ればせながらまずはシリーズ最高傑作と名高い『スカイフォール』を観ることにしました。監督はあの『アメリカンビューティー』を撮ったサム・メンデス!これだけでも興味が湧くもの。

ちなみにダニエル・クレイグ、めちゃくちゃセクシーでした。全然タイプじゃないと思っていたのに。『カジノロワイヤル』から15年後の『ノータイムトゥダイ』の方がさらに色気が増しているのが素晴らしい!若くてムキムキはトゥーマッチだけど、50オーバーでムキムキなのは素敵でクラクラ。ファンが多いのも納得です。物語はともかく、ダニエル・クレイグの半裸姿を愛でるために007シリーズを見るというのも一つの楽しみ方でしょう。


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あらすじ
何者かによって諜報部員のリストが奪われ、解体の危機に陥るMI6。さらにMのPCがハッキングされ「自分の罪を思い出せ」というメッセージが届く。犯人は一体誰なのか?


今作の表テーマは世代交代。懐古趣味vs現代っ子を表すシンボルが繰り返し出てくるのが面白い。最新式のガジェットvs古風なナイフ。崩れゆく船の絵。若い男の子の知らない使われなくなったメトロの駅の名前を知っているのは、おじさんボンド。


そして裏テーマは忠誠心。忠誠心と、盲目で従順な羊は紙一重。忠誠心とは洗脳ではないか?大勢を救うために1人を犠牲にする祖国への忠誠心は正しいのか?そもそもMI6の正義は果たして本当に”正義”なのか?という007シリーズらしからぬ切実な命題を突きつけられます。

実際MI6は英国にとっては正義だけど、Mのやってることは結構エゲツない。悪役のハビエル・バルデムがほんと良い役者で、辻褄の合わないツッコミどころの多い物語に唯一説得力を与えてくれます。

ハビエル演じるシルヴァは元MI6で超優秀なハッカー。ほぼ無敵。ところが敵が強くなると難しいのがどうやって2時間半も物語を保たせるか。肝心なところでボンドを取り逃がしたり、どうしても無理矢理尺を引き伸ばしてる感が出てしまいます。ハビエルの演技が良いから観れたけれど、ツッコミどころは多い。ハッキングで何でもできるのに、そこで銃撃戦を選ぶのはなぜ?!とか。そんだけ優秀なら周りくどい方法よりもっと簡単に復讐できたんじゃないの?とか。まあそうでもしないと開始5分で映画が終了してしまう訳ですが。

それでもシルヴァの復讐心には納得するし、サイコパス役がめちゃくちゃ似合うので迫力があります。ジェームズ・ボンドがMI6とMの倫理観に対して疑問を抱けるようにシルヴァが物語を掻き乱してくれたのに、それでもやっぱり忠誠心は素晴らしい!忠誠心が正義!というお決まりのパターンで終了。切実な命題への、既成概念を打ち砕いてくれるような解答はありませんでした。


とくに終盤の会議シーン、MI6は時代遅れと主張する大臣に対し、Mが何かもっと説得力のあるスピーチをしてくれていたら祖国へ忠誠心を誓い、人を殺す権利さえ与えられた古い組織も、それはそれで悪くないと思えたかもしれない。ところがMはわかりやすい耳障りの良い詩を引用するだけで、なんの説得力もない。だから最後、ジェームズ・ボンドは忠誠心のシンボルでありつつも従順な羊の役から抜け出せなかったのでした。

もっと深掘りして、ジェームズ・ボンド自身が、自分のやっていることは果たして本当に正義なのか?と疑問を抱けるようになっていたら、さらに面白い映画になっただろうになあ。


でもまあそんなことを007シリーズに求めるのは野暮なことなのでしょう。いつも通りの予定調和、だからこそ良い!って思うのがファン。たくさんファンがいるシリーズなのだからその期待を裏切らずいつも通りの展開を守るという懐古趣味にも意義がある。だからこそ本編でも最後はジェームズ・ボンドが敵を"ナイフ"で倒してMの死に涙する。そしてまたお国に忠誠心を誓い命を賭ける。いつも通り。


私は007よりもミッションインポッシブル派。ミッションインポッシブルなら毎回同じ展開でも楽しく嬉しく観てしまいます。ほらほら、ここでこうなるよね!やっぱりー!というお決まりの展開に、仲間意識が芽生えるのが嬉しい。トム・クルーズに固定観念を覆してくれ!なんて思わない。

いつも通りを何度でも観たいのがファンなのだ。だから007はこれでいいのだ。


ダニエル・クレイグ版007シリーズを楽しむにはシリーズ全作品を観ておくことも必要ですが、『スカイフォール』を観る前に『ホームアローン』を予習しておくとラストのバトルシーンがさらに楽しめるかと思います。ハッカーに勝つのはローテクな遊び心でした。


続編『スペクター』も観ましたが、こちらはかなり冗長。話の整合性も取れてないし、敵に魅力がない。でもこれを観とかないと『ノータイムトゥダイ』の意味がわからなくなるので必見。ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドは5作でひとつの続きものなので、最新作を観る前に全て鑑賞しておく方が良いでしょう。


劇場で鑑賞した『ノータイムトゥダイ』もツッコミどころ満載でした。なぜ新しい彼女との旅行でわざわざ元カノのお墓のある町へ行くのか、ジェームズ・ボンドのデートセンスを疑います。そして敵が何をしたいのか分からない。なぜ子どもだったマドレーヌを殺さなかったのか。殺さないならなぜ復讐のために利用しなかったのか?最後にマドレーヌの子どもを簡単に解放しちゃうのも、どうして?!何より冒頭と最後に細菌研究所を爆破するけど、本当にそれで大丈夫?危なくない?などなど考えるとキリがないのですが、ダニエル・クレイグは文句なしにかっこよかったです。『カジノロワイヤル』であんな拷問受けてたのに子どもできてよかったね。


本当に面白くてリアルでおすすめなスパイ映画と言えば、『裏切りのサーカス』。

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原作の作家ジョン・ル・カレはMI6勤務経験もある人で、本は読めていないのですが、原作が素晴らしいんだろうな、とひしひし伝わってくる映画です。よくあるスパイものだと有名俳優が2人だけだから、誰が良い者で誰が悪者かすぐ予想がついてしまいます。『裏切りのサーカス』には有名俳優がたくさん出てて、誰が裏切り者か最後までわからないのもうまい!そしてエンディング、Julio Iglesiasのla merが沁みる!この曲にハマってこの夏は毎日リピート再生していました。

ジェームズ・ボンドやミッションインポッシブルに辟易してる人にぜひ観てもらいたい一本です。











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