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英語ができない人、英語しかできない人

観光地にあるお寿司屋さんのレビューを見ていた時のことです。外国人にも人気のお店のようで、海外からのお客さんのコメントがたくさんありました。

その中に印象的なコメントが2つ並んでいました。

ひとつめは、
「板前さんは全く英語ができません。でも英語のメニューがあったので注文には困りませんでした」

ふたつめは、
「僕たちは日本語が全くできません。でもGoogle翻訳のお陰で板前さんと野球の話で盛り上がりました」

これはすごく大きな違いだなあと思います。

同じ相手に対峙して、"相手が英語ができない"と受け取るのか、"自分が日本語ができない"と受け取るのか。
どちらの視点で眺めるかによって、世界の見方がガラリと変わることでしょう。


自分の母国語が世界の共通語であるって、どんな気分なのかなあと、想像することがあります。

どの国へ旅行に行っても、自分の国の言葉だけで最低限なんとかなってしまう。わざわざ他の言語を学ばなくとも、世界中の人が自分の母国語を一生懸命勉強している。

それってちょっと羨ましいです。

でもたとえ日本語が世界共通語になったとしても、外国を旅行しながら「この国の人って全然、日本語が喋れないのね」と考えるようには、なりたくないなと思いました。喋れないのは相手ではなくて、自分の方かもしれないのです。



英語と言えば、アルバイトをしているバーには外国人のお客さんが多く来てくれるのですが、よく言われることがありました。

日本人は全然英語ができないね。どうしてなの?

英語が通じるお店、初めてだよ!

日本の学校では英語って習わないの?


大抵の場合、中学と高校の6年間、英語を習うのではないでしょうか。
なのに全然通じないのは、普段から英語を話す機会がないからなのか?日本人が人見知りだからか?それとも間違った英語を話すのが恥ずかしいからなのか?
お客さんとそんなことを話します。

カナダ人のお客さんから言われたのは、

世界中旅行してきたけれど、特に英語が通じないのは、フランス、ロシア、中国、日本。どの国も強い国、"大国"だから英語を話す必要がない。それに大国としての傲慢さもあるんじゃないか?

いや、もしかして自国の人材が国外に流出すことを嫌った政府の陰謀なんじゃないか?

という意見。
なるほど、私にはなかった発想で面白いです。


日本は英語が通じない国だと、世界でも有名のようです。
ただ、英語圏から来たお客さんに、揶揄するような調子で「日本人は英語が全然できないよねえ」と言われる時は、「そうだねえ」と言いつつも、尋ねてみます。

で、あなたは日本語ができるの?

中には、僕は英語しか話せないんだけど、日本を旅行中はせめて挨拶と注文くらい日本語でするのが礼儀だと思って頑張っている、と言ってくれるような人もいましたが、多くの場合は冗談だと思ったみたいに、「まさか!」「全然!」と、ハハハと笑って答えてくれます。

じゃあさ、英語以外には何語を話すの?と聞くと「英語しかできないよ」と言う人が案外たくさんいます。「ほら、知ってるでしょ、アメリカ人って外国語に弱いって言うじゃない?」なんて答える人もいました。

もちろん出身国に関わらず数ヶ国語がペラペラの人もたくさんいますし、日本語を勉強中という人もいますが、案外、英語しか話せない人も多いのです。

さらに、中学や高校では何語を習うの?喋れるようになった?と聞くと、多くのお客さんが「◯◯語を習ったけど全く喋れないよ」とか「大学でフランス語を専攻したけど、それだけでは喋れるようになんてならないよー」などと答えます。

なーんだ、それじゃあ英語を話せない日本人と同じじゃないですか。


英語を話せた方が便利なのは間違いありません。
でも英語が上手に話せないからってそんなに卑下する必要があるのでしょうか。
それよりも話す言語に関わらずコミュニケーション能力の方が鍵になる気がします。

何語であっても、たとえ学校で何年も習っていたって、必要にかられなければ言語を習得するのは難しくて当たり前だと思います。

その代わり必要に迫られれば、ネイティブレベルとは言わないまでも、誰でもそれなりのレベルには到達することができるのではないでしょうか。



ところで、ゴールデンウィークの最中に、近所の仲良くなったお店の前でパートナーと一緒に作ったサンドイッチの販売をさせてもらっていました。(お店オープン計画の第一歩です!)


お店に立っていると、いろんな人が来ます。会話が弾む人や反応を返してくれる人、感じの良い人もたくさんいる一方で、声を発せず、なるべく口を動かさない人が何人もいることに気がつきました。


「バイクはあちらに停められますよ」とか、「こちらのお店のオープン時間は11時なんですよ」とか「順番待ちはあそこのリストに名前を書くんですよ」などなど、声かけをする機会が多々あったのですが、反応はよくても首を振るだけだったり、声を発せずに指差しで確認するだけ。「あ、どうも〜」みたいな一言さえ言ってくれないんだなあとちょっと驚きました。「こんにちは!」と言ってもサッと目を逸らす人もいるのです。


コロナ禍のせいで正常なコミュニケーションの取り方を忘れてしまったのでしょうか?

英語が話せないことよりも、日本語でのコミュニケーションの行方が気になる出来事でした。



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