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仏蘭西生活記

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フランスに住んで考えたこと、気づいたこと
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#エッセイ

ある冬の朝、パリを想うこと

自転車に乗って十一区のアパートを出る。 冷たい風で耳が痛い。キャスケットじゃなくニット帽を被ってくればよかった。まだ夏時間だけど、朝はすっかり冬だった。夏と冬の個性に押し潰され秋はどこへ行ってしまったのだろう。秋を感じるのは近所の八百屋で南京と葡萄を見かける時くらいだろうか。 自転車を漕ぎ、パルマンチエ通りを北上し、ヴォルテール通りへと抜ける。夏時間が冬時間に変わる前の朝は特に暗い。見上げると灰色の分厚い空が建物に切り取られている。 六時一五分。 七時前に郊外の撮影ス

お仕事は天突き

2020年はロックダウンをきっかけに、働くことについてよく考える1年でした。 ロックダウン中は全世界がストップ。フランス中の誰にも仕事がない。仕事がないのはわたしだけじゃない!ありがたいことにフランス政府からは毎月補助金が出るので、とりあえず家賃の心配はしなくてよい。(補助金の申請は簡単で、しかも3〜4日で振り込まれるという迅速な対応!いつもやる気のない国なのに、こういう未曾有の事態には素早く対応してくれて、感心しました。) というわけで、3ヶ月間心置きなくゆっくりしたり

日本とフランスの、違うところ

しばらく前から日本に一時帰国しています。今回は、パートナーのフランス人が日本に入国することができないので、初めて1人で日本へ来ました。いつもなら2〜3週間の一時帰国ですが、今回は1ヶ月以上時間をとって、ゆっくりしています。 美味しいもの食べたり、久しぶりのお友だちに会ったり、やっぱり一時帰国は楽しい!そして冬の日照時間の長いところが、なによりも素晴らしい。何年後かには、2人で日本に戻ってくるのもアリかなあと検討しています。 しかし長くいるとじわじわと、次第に蘇ってくる、日

パリに住んで気づいた地元のやさしさ

パリに住んで初めの3年半は一度も一時帰国しませんでした。金銭的な理由もありますが、日本に行くことに魅力を感じなかったのです。 それまで日本に住んで居心地がいいと思ったことがなかったし、長く住んだ神戸はとても狭く、閉塞感に押しつぶされそうな気持ちでした。小さいころから、ここはわたしの居場所じゃない!早くどこかに行かなきゃ!と強く思っていて、地元♡LOVEな友人たちのことを冷ややかに見ていたと思います。 ところが去年、小学校からのお友だちが結婚することになり、こんな機会がない

フランス語におけるRの発音問題

日本語に比べフランス語は母音の数が多く、日本人の耳には判別しづらい音がたくさんあります。日本語の母音はあ、い、う、え、おの5音。対してフランス語は、16音。 これを聞いたとき、なんて日本人に不利な仕組みなんだ!と思ったけれど、アラビア語の母音は3音だそうです。 逆にフランス語ではHを発音しません。日本語を学ぶフランス人にも聞こえない音があるのです。ほかにも、わたしたちは無意識のうちに使い分けていますが、日本語の「ん」には5種類の発音があるのだとか。 聞こえない音は発音する