【アニメ感想】きみの色
『けいおん!』『聲の形』『リズと青い鳥』を手がけた山田尚子監督のオリジナル作品ということで、期待を込めて観に行きました。
それぞれに悩みを抱えた少年少女が音楽を通して出会い、悩みと向き合い進んでいくというシンプルなストーリー。
シンプルなんだけど、これをどう描くかってとこですよね。
ルイくんの「僕達は今、好きと秘密を共有してるんだ」という言葉が印象深い。
これが可能な仲間というのはとても貴重。大人になってから見つかることもあるし、大人になったら秘密を共有できなくなることもあるし。
『夜のクラゲは泳げない』でも親睦を深める際に黒歴史や苦手なことを言い合う描写があったな。
そういう存在がいるからこそ、本作の彼女らも一歩進むことができた。好きの共有だけでは難しい。秘密を共有できる仲間は勇気を与えてくれる。
そして、
この言葉を引用してくるのが素敵だなぁ、と。
恥ずかしながら初めて知った言葉で、深く心に刺さりました。
自分も同じ願いを短冊にでも書きたい。もう9月だけど…。
変えられないことに悩む時間がもったいない。
変えられることのほうに頭を使いたい。
メインの3人それぞれがつく嘘が誰かを傷つけないためという暖かい世界。
そしてバンドのスタイルが新鮮。いわゆるロックバンドっぽくないメンバーだから、どんなバンドになるのかと思いきや、なるほど、と。
テルミンとか『ピューっと吹くジャガー』で見て以来だわ。
シスター日吉子がすごくいい役回り。
こういうアシスト役の大人はどの作品でも好きになる。
変えることのできないもの(=雪で島から帰れない)と変えることのできるもの(=合宿と思って過ごす心持ち)をそれとなく教示。
エンドロールを見て衝撃。『逃げ恥』で推しになった新垣結衣様だとは…。
事前情報を見ずに行って良かった。知ってたら変に意識してしまってたかもしれない。
メイン3人の声も声優初挑戦とは思えないほど自然で、素晴らしかった。
話題作りのために有名俳優を起用するのとは訳が違う。当然ですけど。
ライブシーンは音に圧倒された。ハウリングの音まであってリアル。
映画館で観ることで、すごく贅沢な経験をしたんだなと思う。
平日の9時からで貸切状態だったのがそもそも贅沢なんだけど。
映像や音楽、演出の巧さについては、拙い自分には処理しきれず言語化は難しいんですが、きみちゃんとルイくんの色が混ざり合う演出はわかりやすくて印象に残りました。
長崎ってのもいい。島っていう閉鎖空間が特別感あって。
とにかく視聴後の気分がすこぶる良い。
ただ、劇的な展開はなくて、正直期待してたほどの衝撃は無かった。
でも思い返してみると結構印象に残ってることが多くあって。
薄味だけど唯一無二の味だった…的な?思い出して良い気分になっちゃうような。
この感想、他の作品でも同じようなこと書いた気がすると思ったら『リズと青い鳥』だった(笑)自分の語彙力の無さが露呈している…。
でもぶっちゃけ、キャラクターも薄味だったよね。
見た目もパッとしないし、悩み自体も大したものでは無いし。
キャラクターを通してではなく、作品全体の流れでメッセージを伝えているような。
変えられないものと変えるべきものを見極め、好きなことを貫く。
好きな気持ちが溢れて昇華したライブシーンは感慨深かった。
鑑賞後にYouTubeで監督や音楽監督のインタビューを拝見。
牛尾音楽監督が「映画館を出る時にバンド曲を口ずさんで欲しい」と仰っていたけど、マジで帰り道に何度も『水金地火木土天アーメン』が頭で流れてた。
狙い通りに仕上げるとは感服。
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