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【読書感想】一度読んだら絶対に忘れない国語の教科書(著:辻孝宗)

最近、後輩がこのシリーズの日本史を読んで勉強しているのが楽しそうで。
自分も何か勉強してみようかな、となった時に思い浮かんだのが国語。
学生時代はこの教科が苦手だった。
読書はけっこうしてたと思うけど、成績には結びつかず。

社会人を読者対象にもしてるから単純な受験テクニックの羅列ではなさそうだし、読解力がつけば小説もより楽しめるかなと思って読んでみることに。


現代文の読解だけを詳しくかと思ったけど、古文漢文の知識を織り交ぜての読解。
著者が提唱するのが『現代文と古文漢文を同時に学ぶこと』で、その理由が『古文漢文を学ぶ目的は現代文を読解できるようになることだから』と。
いやー、こんな説明してくれる国語教師に出会いたかった。

学生時代は古文漢文を学ぶ意味が見出せず、正直ほとんど勉強してない。(そりゃ成績も悪いよな…)
センター試験で配点50点の割に覚えることが多すぎて効率が悪いし(当時から効率厨)、昔の文章が読めるようになっても役に立つとは思えなくて。
過去の人々の伝えたいことや描いたことを知るだけなら専門家が読み解いた文章で充分。自分で読み解く必要はない。
旧文体で書かれた書物が新刊で発行されることもないし。

本書では古文漢文の語彙や文法が現代文の読解に役立つことを説明してくれてはいるが、それだけでは授業で学ぶ理由としては弱いかな。
現代文の読解に役立つ語彙だけ教えればいいのであって、ルーツまで知る必要はあるのか。
漢文の文法を学べば主語と述語を明確に把握する訓練になるというが、それも英語で充分。
授業一コマを使って学習するほどではない。
古文漢文を読解できるかを試験する必要はなく、目的である現代文の読解だけを試験すればいい
そんな遠回りしているから、助詞も満足に使えず現代語の文章すら満足に書けない大人が存在するんだよ。(この辺はすでにAIがなんとかしてくれそうだが)

古文漢文の語彙が現代文の読解に役立つことは納得した。(教育カリキュラムに納得していないだけ)
マクロからミクロに視点を絞っていくことや、文章の型分けは参考になりそうだけど、意識せずに自然とできるようになるまでどれくらいかかるかな。

あとがきに響くものがあった。
「読解力とは相手に寄り添う力だから国語は"やさしさ"を学ぶ科目」と。
本文中に「文章の読解と空気を読むのは同じ」という記述もあって、書き言葉と話し言葉の違いはあれど社会生活には重要なスキルだと思う。

そして「読解力が高まることで日常の出来事の解釈が変われば"幸せ"が増える」と。
これは以前から自分も同じことを思ってて、知識が増えれば増えるほど楽しめることが増えていく。
学校の勉強で得る知識だけではなく、小説やアニメのようなエンタメでもなんでも。
日常の読解に必要な語彙が知識全般
知識と関連付けて色々考えることで、どんな旅行先でも楽しめるのはもちろん、ただの近所の散歩でも退屈しない。
これが知識を得ることの醍醐味だと思う。
もちろん古文漢文の知識もその中の1つではあるから、興味が沸けば勉強するのもやぶさかではない。


読解力を高めることが目的だったけど、国語教師側の古文漢文の必要性についての見解が知れたのが面白かった。
著者の見解だけが全てではないだろうから、他の視点から論じたものもあれば知りたい。
古文漢文の必要性を理解した上で、興味が湧くような授業を受けていれば国語の成績ももうちょいマシになってたかもしれない。

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