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PEOPLE 3. Yurie Adachi


足立友里絵さん。
現在はイタリアのプーリア州で夫と2人で農場を営んでいる友里絵さんは、これまでオーストラリアなどでも仕事をしてきた。
友里絵さんの素敵なところは、自分の気持ちに素直なところだと思う。ライフスタイルも仕事でも、「こうしたいな」と思った方に歩んでいける。実際にその通りに実現するかは分からなくても、やってみる。簡単そうに見えて実は出来ない人が多いのではないだろうか。

友里絵さんとの取材を終えて、わたしも心が元気になった。エネルギーのおすそわけをしてもらえた。

足立友里絵さん

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朝6時半。友里絵さんは、南イタリアの農場ですでにオリーブなどの収穫を始める。

夫と2人。東京ドーム22個分の広大な土地で、オリーブのほか、ワイン用のぶどうなども栽培する。夏は暑すぎるので昼前までに収穫を終わらせなければならない。せっかく収穫しても傷んでしまうからだ。とにかく、時間との勝負。

「夏は暑くて動けなくなります。だから、私たちも午後1時半~5時までは誰も動かないです。仕事禁止令が出るんです!わたしも収穫がおわるとオフィスワークに切り替えます」

収穫されたオリーブのほとんどはオリーブオイルにしている。日本への発送も行っているそのオリーブオイルは、OLIVE JAPANという国際オリーブオイルコンテストでは金賞を受賞した。

「収穫時期や、温度の違いなどが、オイルの味わいをスパイシーにしたり、マイルドにさせるんです。いまは提携工場で搾油をしてもらっていますが、いずれは自社工場を持って出来たらと思っています」

昼ご飯もまともに取れないことは多々あるが、それでも、おいしいオリーブオイルのために手は抜かない。

友里絵さんはひとつ、不満だった。それは、ワインは贈り物として選ばれるのに、これまでオリーブオイルはあまり選ばれないこと。
そこで新しいボトルデザインを考えることにした。女性がギフトとして持って行くことを想定して、友里絵さんとデザイナーでもある夫、2人で作り上げた。

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「ふたりで、香水をイメージしてつくりました。特別な日のオイルを作れたらいいなと」

また、形だけでなく、思い切って、色も透明にした。
本来、オリーブオイルは直射日光に当たると酸化、劣化するため、ボトルは深緑などの色がついているのが一般的。あえて透明にした理由をこう話す。

「摘み立てのオリーブオイルは本当にきれいな緑をしているのでぜひ見て欲しいなと思ったんです。通常のボトルは深緑などの色がついているので、フタを開けて、かけるまで見えないですよね。もらった瞬間に『オリーブ色、きれい!』となって欲しいなあと思ったんです!」

透明にするのは不安だったそうだが、購入したお客さんからは好評だ。

日々、自然と向き合いながら、新しいアイディアで思い切った挑戦もする。
農業は天候にも左右されるし、いまは新型コロナウイルスが猛威を振っている。そのなかでも、どう切り抜けていくのか考えていく。大変さとはうらはらに、友里絵さん自身が非常に生き生きとしているのは日々を楽しんで生きているからだろう。

「コロナがあり、オリーブオイルの見本市もキャンセルになって未だに行ったことないし、大きなバイヤーにも出会ったことないんです。見様見真似の状態で、壁しかないですよ!でも、作ることが好きなので、多分、商品開発の仕事が似合っているのかな」

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もし間違えて失敗したら次のことやったらいい

芯の強い女性。私はそんな印象を持っている。
だから、失敗なんてしたことないんじゃないか。そう思わせる雰囲気すらある。
だが、人生のどん底まで突き落とされたことがあったそうだ。

「オーストラリアで働いていたときが大変でした。カクテルバーとビストロの2店舗の新規立ち上げに関わったんです。寝る時間が1日2、3時間でした。ほかにも色々あって。それらが重なって、ストレスでアレルギーも出てきたんです」

ホスピタリティ(おもてなし)の仕事はもともと好きだという友里絵さんだが、働きたくない、と強く思うほどストレスがあった。
店舗オーナーとホスピタリティーへの価値観が大きく違っていて全く相入れず、喧嘩ばかりだったそう。

「ホスピタリティの仕事では、自分で店を開けるまでは誰のしたでも働かない!と思って退職届出しました」

仕事をすること自体、向いていないのではとすら思ったが、「いっそ自分で仕事作ったほうがいいのではないか!」とひらめいた。

「旅が好きだから移動できるようにどこでも仕事できて、いつ休みが取れるようになったらいいなと。もうどん底だったので、もし間違えて失敗したら次のことやったらいいやって開き直りました」

小学生の頃は、昼休みに、外でドッジボールをしろ、と言われても、本を読みたいから教室にいたような子だった。先生からは、協調性がないと指摘され、「将来が心配です」と書かれた。

「子供の頃から自由、勝手にやってきた。それが今に繋がっている気がします」

自分の気持ちに正直に。そして、なんとかなるさ。
これが、素敵なオリーブオイルが誕生した要素のひとつだろう。


前に進むしかない!

「オリーブオイルずっとやりたいけど、農家である以上、天気に左右される」

インタビューの最後、ゆりさんはこう話した。
ここ最近は異常気象のせいか、寒い冬の年が多いそうだ。オリーブは暑さには強いが、寒さには弱い。凍えて死んでしまうのだとか。竜巻も増加しているし、これまでと違う病気、虫もいる。相手は自然。覚悟はしているそうだ。

「おいしいものが作れないとだめですからね。そのときはきっぱり、諦めます」

ただ、諦めたとしても、ただじゃ起きない。それが、友里絵さんだ。

「オリーブオイルだめで諦めた後、アボカド作りしてたりして!柔軟にやっていければいいですね」

今後、コロナが終わったら、部屋を改装してファームステイできるようにしたいと話す。オリーブオイルが出来る過程を知ってもらいたいのだとか。
とにかく、ホスピタリティのある仕事が好きなのだ。

「今はオンラインショップだからお客様の顔見えないですよね。それがどうなんだろう、と思うことはたくさんあります。
でも、例えばツイッターのDMなどで連絡がきて、感想をもらったりすると、なんだか目の前にお客様がいるような感覚もあるんです。うれしいですね」

お客様から感想をもらう機会はやりがいにつながる。
対面が理想だが、SNSなどでのやりとりが、今後のオイル作りのアイディアと繋がる。どんなニーズがあるのか。それを探ることは忘れない。

「前進むしかないですからね!後ろに戻れないから進むしかない。オリーブオイル好きだし、もっとおいしいものを作りたい。それだけです」

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2021年7月取材

twitter:@YurieAdachi

★ゆりえさんのオリーブオイルについてはこちら!
twitter:@TorreGrande2 
http://www.masseriatorregrande.com/ja/


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