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勝手に1日1推し 64日目 「ハートストッパー」

「ハートストッパー」(1)アリス・オズマン     漫画

凪良ゆう先生がTwitterで紹介されていて本作を知りました。先生がオススメとあれば、読まないわけにはいきません!イギリス発LGBTQ+コミックとなっております。

日本のBLを読み慣れていると「ん?」ってなるかも。というか、別物と思った方がいいかも、です。2人の男の子が心を通わせるヒューマンストーリーかなぁと思います。セクシャリティについて考える学習漫画的な要素も色濃いです。

同じ男子校に通うチャーリー・スプリングとニック・ネルソン。二人は心を許せる親友同士。チャーリーはゲイをカミングアウトしていて、叶わぬ恋と知りながらニックに想いを寄せていた。一方のニックはストレート……のはずだったが、チャーリーのことが好きという自分の気持ちに激しく動揺していた。ニックは友達について、家族について、そして自分自身について思いも寄らぬ発見をしていく−−− Amazon

余白が多く、感情を吐露することも、心情をモノローグで描くこともありません。絵はイラストタッチでアートより、且つ、シンプル。もしかしたら、感情表現が豊かとは言えないのかもしれません。それなのに、2人の男の子たちのときめきや戸惑い、緊張や恐れ、喜びや不安が手に取るようにわかるんです。少しづつ惹かれ合い、距離を縮める2人が優しいタッチで描かれています。うえーん、切なくて可愛くて泣いちゃう。

日本語は、他言語より多くの形容詞や擬音語、擬態語、言い回しなどがあり、それにより表現がかなり豊かなので、それに慣れていると、少し物足りなさを感じてしまうかもしれませんが(殊、漫画は絵と画、説明や会話、と、至れり尽くせりな状態。ホント贅沢!)、本作は別の切り口というか、言葉による説明に頼らないリアルな目線で描いているんだなあと思います。

ニックがチャーリーのことを心配してLineを送るシーンなんて、気になる人に初めてLineする時の私か?!ってくらいリアルで親近感があります。どきどきが伝染してきます~。チャーリーとニックがノートを取り合うシーンなんて、これ、ある!良く、ある!しかないです。このシーンの画、ホントいいんだよな~。最小限の情報で、実体験とリンクさせられるというか何と言うか。1コマ、1コマを穴の空くほど読んじゃった。すごく新鮮な読み応えでした。好みでした。コマ割りも画も表現もアーティスティックで可愛くて最高です!すっごく気に入りました!!

たまたま同時期にブレイディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読んでいたのもあって、イギリスの学校の内情を少しかじっておりましたので、作品への理解も深まりました。背景を知るって大切です。と同時に日本の学校との差異にも驚愕したものです、、、

本作を読むにあたり、知っておくと良さそうな情報を少しだけ記します。(「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」より)イギリスでは、11歳から16歳までが日本の中学校にあたる学校で学びます。チャーリーとニックは、日本だと中3、高1くらいですかね。初年度にあたる11歳からLGBTQについて学んでいるそうです。更には演劇教育も盛んで、演劇クラスがあるそうです。演劇クラスは何のためにあるのか?と言うと、決してシェイクスピアの国だから、という理由ではありません。コミュニケーション能力、自己コントロール能力の向上とともに、エンパシーを育む目的だそうです。(含:ライフ・スキル教育)「誰かになる=自分以外の人の立場に立つ」ということで、「自分がその人だったらと想像することによって誰かの感情や経験を分かち合う能力(ケンブリッジ英英辞典)」を育てることが大切で、必要だとされているというわけです。はあ、とても有意義な学びだと思いませんか?

こういった教育を受けてきたチャーリーやニック、その友達や先輩だからこそ、チャーリーとニックの関係を見守ったり、助けたり、かばったり、受け入れたり、はたまた、ゲイというレッテル以外に目を向けたりできるようになったんじゃないかなあと思います(もちろん、残念ながらいじめや偏見、差別をする人は一定数存在します)。そして、印象深かったのが、チャーリーとニックを見守るニックの友達と先生との会話です。

でもニックはゲイじゃないぜ そりゃどうかな ゲイに見えないよ それにあいつタラ・ジョーンズが好きなんじゃね?
ゲイかどうかは外見じゃわからないわ それにゲイかストレートか二択じゃないし 人のセクシャリティを詮索するのは下品なことよ

むむむ。日本も多様性を考えるにあたり、まずはこういった土壌作りが必要なのだと思います。性やセクシャリティについての早期からの教育と共に、演劇教育も是非とも取り入れていただきたいものです。学校の図書室にも並んで欲しいと思う作品です。

ちなみに、タラ・ジョーンズは超いい子!全5巻らしいんですが、はよ読みたい。もうすぐ2巻が発売だとか?!ィッヤッホーイ!!!

ということで、推します。


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