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勝手に1日1推し 63日目 「緑茶夢 傑作集」①

「緑茶夢(グリーンティードリーム)傑作集」(1)森脇真末味     漫画

さて、問題です。「緑茶夢(グリーンティードリーム)」は何年の作品でしょうか?正解は、昭和55年です!!ヒューヒュー、半世紀ほども前~。え?そんな昔の作品、今更なに?と思います?いやいや、テーマが完全に現代と一致しておりますのです。驚きですよ!

約50年前と今とが変わってない世の中って、一体どういうこと?女の子や弱いの立場の人たちは抑えつけられ、心ない言葉で傷つけられ続けてる!許せない!憤りを感じます。でも逆に言うと、そんな前から女の子たちに勇気を与える作品が発表され続けているということには喜びを感じました。

本作はもちろん暗いお話なんかではなく、明るくて元気でちょっとしたたか、前向きに生きる愛すべき女の子、尚子の物語です。


XTCを爆音で流し、追試もろくに受けず、自由奔放に振る舞う尚子は、父、兄から怒られてばかり。1か月前に加入したバンドがロックフェスへ参加することになり、お金が必要に。でもロック嫌いな家族には相手にしてもらえない。そんな時、兄の学費がなくなって、尚子が真っ先に疑われ・・・・

というのがあらすじです。

尚子の憧れる人生の先輩、喫茶店「茶嘆(きたん)」のマスターがキーパーソンです。彼のエピソードにはどれも胸が痛みます。

例えば、尚子の父にゲイであることを暗に揶揄され、気まずさからそそくさと去られた後、ペットのソクラテス(ぶた?!)につぶやくのです。

「言葉も暴力だと思いませんか?ソクラテス  今日は酢ブタにしましょう なんてことを目の前でいうことです」

冷静に、しかし自虐を込めてやるせなさを吐露するマスター、、、

両親のフェス参加の反対に苛立つ尚子に返したマスターした言葉は、

「待っただけです」「親が理解してくれるのを?」「いえ、あきらめるのを」

ちょっと虚しさを感じちゃうよね、、、でもそんな酸いも甘いも乗り越えて生きてきたマスターの存在のおかげで尚子は未来を生きていけるようになります。

わたしの言いだすことは理由なんかどうでも 反対することにきめてるみたいなんだな

という諦めも

わたしも待っているのよ 好きなものを好きといって・・・・それが誰にも止められなくなる日まで

とポジティブに捉えられるようになります。「女の逃げ口上」などと何度くじかれても笑顔で立ち向かう尚子が健気で応援せずにはいられません。にべもなく学費の盗難の犯人に挙げられては心が折れちゃって当然です!!男である兄が学費がなくなって学業が続けられないことは、「かわいそう」であり、女である尚子が学費を盗んだという濡れ衣を着せられている状態には配慮しない。完全なる不平等。しかも何を言う間も聞く間もなく手を挙げられてます。許すまじ!!そんなことは、世界中が許しても私が許さない!!(世界中も許さない、、、)

尚子が死のうかな、とマスター宅に逃げ込むところから先クライマックスは、類を見ない素晴らしさ!!尚子とマスターのやりとりはウィットに富んでおり、且つソリッドで、本質をついており、痺れます。屋根の上で歌い踊る尚子は解放され、自由を手に入れます。素晴らしいラストです(涙)。ちょっとしたキッカケやヒトコトで救われる。これ、誰もが経験ありますよね~。

古臭さどころか、今時かよ、というストーリーに脱帽!1つとして無駄のない洗練された短編「緑茶夢(グリーンティードリーム)」、最高of最高でした!読むことが可能であれば、是非読んでいただきたいです!!読んでえ~!!本当に素晴らしいです!しかしネーミングは少々時代を感じさせますな。尚子のバンドの名前「桃色軍団」とか喫茶店の名前とか「茶嘆」とか(汗)。と言いつつ、嫌いじゃない。

そして、本作に少しばかり登場、ロックバンド「スラン」の物語も激推しなもので、まだまだ続くよ、「緑茶夢(グリーンティードリーム)傑作集」推し。穂村弘の弘は、安部弘の弘!!

ということで、推します。(→つづく)



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