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10年目を迎えて、nanaは大きくリニューアルします

前回の記事はこちら。

さてさて、これまでの学び、反省を活かし、nanaは去年からフルリニューアルプロジェクトを進めています。今回フルリニューアルを行う背景ですが、まず前回のリニューアルが2014年末でそこから建て増しを続けてきた結果、ぶっちゃけもうメンテナンスが厳しい状態です。一つのところを触ると他のあらゆる部分に不具合が出る、といった状況で、現状を生かしながら改修していくのはこれ以上は無理だと判断しました。

また、2018年ごろかな、この頃から特に歌う場所が増えてきて、自分達のコア価値再考の必要に迫られました。その過程で数年で卒業していく場所になっているという傾向も見えてきました。これらの課題を解決するために再度自分達のコアな価値はなんなのか、たくさんのサービス、歌う場所がある中で自分たちの”武器”はなんなのかを改めて見つめ直さなければなりませんでした。

nanaのこれまでの価値は

そもそもこれまでのnanaのコア価値はなにか?

nanaは手軽に音楽を発信して誰かに聴いてもらえてソーシャルグラフが生まれる場所特に手軽さがウケていた、というのが僕らの認識です。

しかし「歌う手軽さだけならよりカラオケ的な体験に向かうべきでは?」この疑問を常に抱えつつ、当時はサービスも急成長していたので特に深堀りせず、解を持ちませんでした。歌う手軽さを考えれば考えるほどカラオケほど素晴らしいものはない。でもカラオケではない、と。作品の、表現の、創作の場所なのだ、と。傍から見れば一緒じゃんと思われるかもしれないですが、歌う側からすると全然違うんです。ここのニュアンスを当時はうまく言語化できずともずっと大切にしてきたし、これからも大切にしていきたい。
ただ創作の場所であるとすれば90秒かつモノラルのみという制限は作れるものの限界値が低すぎてしまう。作品を作り込む機能について最低限しかなくて、自分のこだわりを反映できない。しかしこれらに対応すると、これまでの手軽さが失われるかもしれない。この矛盾を本来解決すべきなのに解決しなかった。後になって振り返ると、これが一番大きな課題だったと思っています。

手軽さを突き詰めようとするとそこから生まれるアウトプットは画一的になりやすい。nanaを始めた当初の時代はそれで良かったのかもしれないが、アウトプットの質が上がる/コンテンツの多様性が生まれる方向に、適切なタイミングで舵を取れなかった。 現状の手軽さだけは絶対だと死守し、「創る」機能にテコ入れすることなく別の機能 (パーソナライズ、マッチング) を改善し続けました。が、結果的には根本的な価値向上にはつながりませんでした。

さらにユーザーヒアリングを行う中で、卒業する傾向が見えました。Twitter上で活動している歌ってみたユーザーを対象にヒアリングさせてもらうと、ほとんどが“元”nanaユーザー。みんな悪いことはあまり言わない。nanaには感謝している、と。でももう使っていない人たちが多数。卒業し、今はYoutubeかニコニコ動画、もしくはTwitterが彼らの主戦場になってる。
nanaの持つ手軽さが、まずは歌を、音楽を始めてみるという”入り口”の動機にはなっているものの、結果、自信をつけて卒業していく。

ではなぜ卒業していくのか?

利便性が手軽さのみ、かつオーディエンス層をうまく集められなかったからだと僕らは分析しています。nanaの聴き専率は現時点でも20%程度 (※5年程前だともっと低くて10%程度)。投稿者の人数に対して、応援側が圧倒的に少ない。これは音声のみ×90秒尺×モノラル(※2021年4月にステレオ対応済み)というコンテンツフォーマットが大きな要因だと分析しています。ハッキリ言ってしまうと、上記のフォーマットだとコンテンツの質の限界値が低い。見に行きたい、聞きに行きたいというコンテンツになりにくい。結果オーディエンス層の獲得につながらず一定以上の規模にならないため、コンテンツへのリアクション数の限界値が低くなる (それでも音楽投稿者の規模だけでいえば日本最大なんですけどね。みんなが当たり前に使うSNS、としては足りない)。nanaを使い始めるとすぐに再生されるし、すぐにフォロワーができる。それが一定規模までは伸びるんだけど、その頭打ちが割と早い。なぜならオーディエンス層の数が少ないから。ここが卒業していく大きな要因。

あと、歌や音楽はやっぱり”作品”で、TwitterやInstagramのような身の回りの出来事をシェアするサービス系なら常にネタは生まれるけど、どれだけ手軽さを追求したところで”作品”というものは投稿までの精神的障壁が大きいため、根本的にひとりあたりの投稿頻度はそこまで高まらない構造であることも認識した。

結論、手軽さと創作のための自由度とのトレードオフをきちんと認識できていなかった。創作の場所であればある程度の自由度は必要。自由度が高いということはつまり、一定の手軽さは犠牲になるということ。創作の場所になっていく、というのを大切にするのであればこのトレードオフを認識し、割り切った上で自由度を高めていくべきでした。そしてこれまで「創る」機能についてはまったく触れてきませんでした。まあつまり、コア価値を見誤ってしまっていた。なのであらためてフォーカスすべきは「創る」部分だと。もちろん手軽さは常に追求しつつ、スマホひとつで満足いく作品がつくれる (僕らはこれをスマホ・クリエイションと呼んでいる) 、そんな価値をこれからは目指していきます。

nanaがこれから目指す価値は

開発中のワイヤー

SNSプロダクトをつくる上で常に重要視しているのがひとりで使うと楽しい、みんなとだともっと楽しいという体験。その上でまず重要なのが「ひとりで使う」価値です。
過去のnanaもそうだけど「みんなとだともっと楽しい」は人さえ集まれば強化される価値で、周りのみんなが使ってればそりゃ使うんですよね。問題はその状態までどうやって持っていくか。そのためのひとりで使う価値 = これがあるからそのサービスを使ってみようと思える動機。ここがないとそもそも選んでもらえない。

今僕らが目指しているのは、モバイルファーストな体験で録りやすく、編集加工はワンタップツータップで。専門知識が必要なMIX等もプリセットから選ぶだけ。プリセット化して極力誰もが扱えるように。ただそうするとどうしても最大公約数的な設定になるので、すべての作品にピッタリ合った編集加工を、というのは正直まだ難しい。なのでもっとオリジナリティを求めたい!質を求めたい!という場合には適切なスキルを持った人に依頼することができる。自分にはないスキルを持つ人たちとCo-Creationできて、よりよいコンテンツが作れる。
Creationが手軽である程度クオリティ高いものが作れる、という使い始める動機と、自分にはないスキルを持った人たちとCo-Creationしながら作品作りができる、という使い続ける動機。これらを両立させること。これがフルリニューアルの方向性です。

製作知識がなくてもスマホひとつで簡単に歌ってみた作品が創れる。使ってると色んなクリエイターとつながれて、みんなとコラボレーションすれば1人では作れないよりハイクオリティーな作品が創れる、という価値を、これから提供していきます。

そしてその先には、”創る”経済圏をつくりたい。

ひとりですべてできる天才も中にはいるけど、創作は基本分業です。曲作りにおいても作詞する人、作曲する人、アレンジする人がいて。曲自体も打ち込みで完結する場合もあるけど、実際に楽器を弾く人がいて、歌う人がいて。それらをMIXして音を完成させる人がいて。さらには動画をつくる人がいて、そのためのイラストを書く人がいて。。。と、ざっくりとした分類でもこれぐらい分かれてるし、実際にはもっと細かく分業してる場合もある。多くの人たちのコラボレーションで作品は作られています。
このコラボレーションをもっとスムーズにしたい。これまでは個別に連絡を取ってやり取りしてとコミュニケーションが分断されていたけど、これがnana内でスムーズに行われるように。そして自分のスキルできちんと評価されて、結果お金も稼げるように。

あとはコラボして製作されたコンテンツをそのままストリーミング配信できたりも。

作り手がきちんと評価され、稼げる場所に。

これまでのnanaとは全然変わったものになるかもしれない。それぐらい大きくパワーアップします。でも「音楽という言語で、世界中の人々の創造力をつなぐ」というビジョンに向かっていることは今も昔も変わらない。

Everyone is a Co-Creator。人はみんながクリエイター。創造力を持っている。その創造力をテクノロジーの力でより引き出し、言語や文化の壁すら超えたコラボレーションがもっとスムーズに生まれる世界を。ぼくらは、作っていきます。

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「nanaのリニューアル面白そう」とチラっとでも感じた方。自分で言うのもあれだけど今めっちゃおもろいフェーズです。共にnanaを創っていく仲間を大・大・大募集中なので、ちょこっとでも興味持った方はぜひこちらも覗いてみてくださいな。
https://jobs.nana-music.com/

ではでは。

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