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社会人5年目。評価をされて初めて気づいた、自分が本当にほしかったもの



4月になり、社会人生活は5年目に突入した。


それと同時に、わたしは初めて「社内表彰」をされた。
いまの会社に入社してから、ちょうど2年。


「会社で何らかの賞をもらう」という新卒1年目からの目標をここへきて達成することができたのは、なんだか感慨深い。


特に、この2年間は前の会社にいた頃と比べて「評価されたい」「認められたい」という強い想いを抱きながら日々仕事に向き合ってきたから、ようやく最初のゴールに到達したような、大きな安心感があった。


一方で、わたしの中ではこの表彰を機に、ある感情が芽生えはじめていた。


それは、「自分がずっと追い求めていたのは、"組織の中での評価"ではなく、"身近な人たちからの愛情や信頼"なのではないか」という小さな問い。


その問いが浮かぶのと同時に、社会人生活の第二章が、突然終わりに向かっていくのが見えた。







いまの会社に転職をしたのは、2020年、春。


学生時代にインターンをしていた時の上司に誘われて、「社員として戻ってくる」という、会社にとっても自分にとっても前代未聞の転職。


入社して1年目の頃は、「学生の頃から、自分が成長していることを知ってもらいたい」という自尊心と、「せっかく自分に期待をして声をかけてもらったのだから、その気持ちに応えたい」という恩や責任感が努力の源泉だった。


それがいつからか、「この組織で認められたい」「活躍したい、必要とされたい」という気持ちに変わっていった。


建前上の理由は、「会社に好きな人が増えたから」。
好きな人たちに見合う働きができるように、もっと成長したい。そして一緒に仕事がしたい。そう思っていた。


本音に近い方の理由は、「不安だったから」。
学生時代からずっと尊敬している上司、自分の知識や経験が活かせる業務、ホワイトな職場、前職よりも高いお給料。


自分にとってはこれ以上ない環境で、なんの成果も出せずに20代が終わってしまったら、わたしはその後、どこに行っても何も成し遂げられないのではないか。


新卒で入社した会社で、取り立てて大きな成果も出せずに転職したことを、後悔したことは一度もない。けれど無意識に、どこかで後ろめたさを感じていたのかもしれない。


だから、「ここでは絶対に、やり切る。」そんな想いが、心の真ん中にずっとあった。







初めて自分が「ここで頑張りたい」「成果を出したい」と思い、逃げずに向き合うことを決めたのが、1年前。


その頃はちょうど任される仕事が増え、オンライン講座の「企画メシ」にも通い始め、(無自覚だったけれど)ストレスによる病気の診断をされていた頃だった。


自分が持っているチームのメンバーは立て続けに退職し、目標も未達で、精神的にも体力的にも、かなりハードな時期。


そんな状態からスタートした日々は、ありきたりな表現かもしれないけれど、まさに「先の見えないトンネルの中にいるよう」だった。どちらに進めばいいのかわからず、進んでいたつもりが後ろに下がっていたり、最初の地点に戻っていたり。


「組織で認められたい、評価されたい」という、もはや強迫観念とも言える強い気持ちのみで努力を重ねてきた自分は、狂気的ですらあったなあと思う。


苦しいときも、大きく躓いたときも。体調を崩したり、自分のキャパに対して仕事が多すぎて全部投げ出したくなったり、うまくいかないことの連続で自信をなくしてしまったときも。


どんなときも立ち上がって、「諦めずに前を向いて少しでもいいから進む」ことを続けてこれたのは、「評価される」ことが自分の中で一つのゴールになっていて、それを達成することへの執念が、あまりにも自分の核になっていたからなのだろう。







けれど、4月1日。


ありがたいことに、思ったよりも早くわたしは社内で表彰された。自分の努力が、はじめて公の場で認められたのだ。


自分が頑張ってきたことを、見てくれていた人がいる。評価してくれた人がいる。多くの候補の中で、最終的にわたしを選ぶという判断が下されている。


その事実がありがたくて、嬉しくて、心の底から安心した。自分の努力は間違っていなかったんだ、と。


なんだか報われた気がした。





だけど、表彰をされた次の瞬間、わたしの中である変化が起きた。


上長が推薦理由を話しているのを聞きながら、「あれ、なんだか思っていたのと違うぞ……」と思っていた。


たしかに、名前を呼ばれた瞬間は嬉しかった。


だけどその後すぐに、喜びはしゅん、とPCの電源が落ちるときのように、怨念が空へと成仏する瞬間のように、たちまち消えて無くなったのだ。


それは、「執着が消えた瞬間」だったのかもしれない。


あれほど欲しかった、他者からの評価。それをいざ手にしてみたら、思ったほど喜びは大きくない…なんて、天邪鬼みたいだ。


もちろん、受賞という事実は素直に嬉しい。けれど、社長や上長からの賞賛のコメントをもらっても、心の中はむしろ冷静になっていくばかり。


「こんな機会なかなかないんだから、もっと喜びを噛みしめたい……!」と思うのに、心はうんともすんとも言わなくなってしまった。







戸惑うわたしの心を動かしたのは、次の言葉だった。


「最後に、いつも一緒に仕事をしているチームのメンバーからのメッセージ動画を流します。」


上長の一言。その後すぐに、学生インターン生を中心とした、メンバー約10名からのお祝いメッセージがPCの画面に映し出される。


その瞬間、鍋にたっぷり入った水が一気に沸騰するように、ふつふつと音を立て、わたしの心の温度は急上昇した。同時に、胸いっぱいに想いがこみ上げてくる。涙が溢れそうだった。


後から聞いたら、その依頼は発表の2日前にメンバーのもとに届いたらしい。そんな短期間で、忙しい中全員がコメントをくれたこと。「笑いの絶えない、いいチームになりました」「岡崎さんのおかげで、仕事が楽しいです」と言ってもらえたこと。


そしてその動画を見た他の社員から、「岡崎さんが、みんなに愛されているのが伝わってきたよ」「これは、人望の表れだね」といったコメントをもらえたこと。


それら全てに、わたしの心はぎゅっと締め付けられて、思わず、全社会議の場で泣きそうになってしまった。







もしかして、わたしは「組織の中での評価」という体温も実体もない漠然としたものよりも、「身近な人たちに信頼され、愛され、楽しく働くことができている」という実感の方が、大事なのかもしれない。


ずっとゴールにしてきた「評価」を手にしたからこそ、そう思えるようになった可能性はある。だけど、手にしたからこそ、本当に自分が求めていたものがわかった気がした。


大好きなメンバーたちが、楽しく仕事に取り組んでいること。インターンを通して自分の強みや可能性に気づき、卒業後も自分らしく前向きに、社会でのびのびと働くこと。そのきっかけづくりや、後押しができること。


わたしと関わるメンバーの一人ひとりが、少しでも前向きに、笑顔になること。仕事での関わりを通して、「出会えてよかった」と言ってもらえること。


尊敬とか、怖れとか、承認とか。


そんなものより、


愛に溢れる仲間がほしかったのだ。







あれほど評価にこだわっていた2年間が嘘のように、心がふわっと軽くなった、今。


わたしはようやく、自分が本当に大切にしたいもののために、努力ができるような気がしている。


ずっと、不安だった。


成長を追い求めて入社した会社で心と身体を壊し、「自分は思っていたより弱い人間なのかもしれない」と落ち込み、成果を出せないまま転職し、次の職場でも、何も成し遂げられないのではないかと。


それでも理想ばかり高くて、自分に期待をし続け、周りからの評価とのギャップに「自分は自分が信じているより、平凡な人間なのかもしれない」とまた落ち込んで。


そんなわたしが執着を手放すためには、たしかに一度「他者からの評価」を得ることが必要だったのかもしれない。


ようやく自分と周りの信じるわたし、期待するわたしがぴったり合致したことで、わたしはゼロに戻った。





ゼロに戻ってみて、改めて思う。


自信とは、自分の中だけで生まれ育つものではなくて、誰かから種をもらったり、咲かせた花を「きれいだね」と言ってもらったりして、初めてそこに自我が芽生えるものなのではないかと。


だから、不安なとき、自信がないとき、誰かの評価や承認を求めてしまうのは、自然なことなのだ。それは決して、悪いことではない。


わたしは、わたしを信じてくれた人たちに、たくさん種をもらった。時間はかかったけれど、丁寧に撒いて、水をやって、時には厳しい寒さや雷雨のもとで優しい言葉の傘を差し、小さい花を咲かせた。


今では、そうやって自信が芽生えていった過程自体が尊いなと思う。


たぶん結構かっこ悪かったし、遠回りもしたし、何度も泣きいたし、派手に転んで全身傷だらけになったけれど。


ちゃんと評価を得て、執着を手放して、大切にしたいものが、わかったから。







人間は同じことを何度も繰り返すから、もしかするとまた数年後、いや今年中にも「自信がなくなった…」「もっと評価されたい…」と言っているわたしがいるかもしれない。


だけど、それでもいいのだと思う。


そこを越えた先で、きっとまた大切なことに気づけるだろうから。






社会人、5年目。


わたしの人生は、まだまだこれからだ。





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