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自由になりたい時、ひとりで新しい町へ行く。〜はじまりの場所、馬喰横山citan〜
たった数時間でも、ひとりで新しい町を訪れると、それだけで心が自由になれるんだなあ。
***
この前の週末のこと。はじめて訪れた馬喰横山で、「ひとり時間」を過ごした。といっても、彼と待ち合わせをするまで、ほんの数時間だけれど。
彼とは、馬喰横山のホステルcitanに宿泊して馬喰町〜日本橋エリアを散策する予定だった。
お互い関東に住んでいるから、東京のホステルに泊まるのは今回がはじめて。ずっと行ってみたかった場所ということもあって、数日前から心待ちにしていた。
けれど彼は日中予定があり、夜に待ち合わせをしよう、という話になる。
「せっかく泊まるのだから、できる限り長く、この町での時間を味わいたい…!」
そう思ったわたしは、先に向かってひとりで時間を過ごすことにした。
最寄駅の馬喰横山は、何度か電車の乗り換えで降りたことはあっても、地上に出て町を散策したことはなかった。知らない町というだけで、なんだか遠くまで来たような気持ちになるから不思議だ。
昔ながらの問屋さんや喫茶店がぽつり、ぽつりと点在していて、道を歩く人は少なく、だけど寂しいということもなく、のんびりした空気が流れていた。
チェックインまでは2時間ほど時間があったから、近くのカフェで読書をする。
彼と週末を過ごすようになってから、ひとりでカフェに行く頻度はだいぶ減っていて、どこに座るか迷っている時、懐かしいような落ち着かないような、そわそわした心地になった。
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賑やかな声と珈琲の香りがする入り口を通って、ホステルのフロントにひとりで足を踏み入れるのも、久しぶりの感覚でどきどきした。同世代くらいのお兄さんがフレンドリーで、ちょっと安心する。
チェックインをしたら、お部屋の写真を心ゆくまで撮り、音楽をかけながらまた本を読む。音楽をかけたのは、あまりにも部屋が無音で落ち着かなくなったから。
普段、家では常に生活音や窓の外の虫の音が聴こえるから、いざこういう環境に身を置くと自分がそんな感情を抱くなんてことも、すっかり忘れていた。
シンプルで無機質な広い部屋は、1年前にひとりで滞在した京都のホステルに似ている気がして、その時のことを思い出す。
あの時のわたしは、日常が息苦しくなり、自由を求めて京都へ行ったんだっけ。
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1年前までは、「誰かと一緒に旅をする」という経験があまりなく、「気を遣うから、ひとりの方が楽」と思うような性格だった。
彼と出会ってからは、ふたりとも旅が好きで、しょっちゅう一緒に旅をしている。お互いの好みや視点、感じ方がまるきり違うから、一緒に過ごしていると、新しい発見があっていつも驚く。
この1年は、彼とのふたり旅に時間やお金をかけてきた。これからも、それは大きくは変わらないと思う。
だけどこの週末、久しぶりにはじめての町でひとり時間を過ごしてみたら、あの頃の感覚を思い出して、なんだか胸がじんわり熱くなった。
自分の心だけに集中できている感覚が、心地よかった。頭の中が次第に空っぽになって、全身があるべき状態にすうっと戻っていくみたいだった。
お金にも時間にも、限りがある。だから、普段はどうしてもひとり時間に使う分を減らしてしまう。
だけど、たった数時間でも、ひとり新しい場所で自由気ままに過ごしてみたり、自分の心の動きだけに集中したりする時間は、たまには必要なのかもしれない。
心の栄養は、きっとそういう時間から生まれるのだろうから。
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彼と待ち合わせした後は、ホステルの近くのお店で餃子を食べた。休日の夜だったからか、そのお店はとても賑わっていた。
しんと静まり返った部屋でひとり過ごしていたところからの差は大きくて、自分だけ喧騒の中で見えない膜の中に閉じ込められているような、妙な心地がした。
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手づくりの餃子はどれもおいしくて、雨降りの町はしっとり艶やかで、東京も悪くないな、と思いながらビニール傘越しに町を眺めた。
でもそれはたぶん、隣に彼がいるからだった。
自分の人生の中で「ひとり」と「ふたり」のバランスをうまく取っていけたら、わたしはもっと、しなやかに生きていけるのかもしれない。
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ホテルや旅館の予約サイトを眺めていると、東京に住んでいることで、どの地域の仲間にも入れてもらえないことに少しの寂しさを覚えるこの頃。
でもそんな今だからこそ、普段はあまり行ったことのない東京の町に足を運んで、ひとり時間を過ごしてみるのはけっこういいかもしれない。
ほんの少しの時間でも、新しい町に足を運ぶと、いつだって「ひとり旅」ができる。
環境が変わっても、家族ができても、「自分の心だけに集中できる時間」は、なくさず大切にしていきたいなあと思った。
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▼食と旅の記録を、Instagramで綴っています𓂃𓂂𓏸
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