「バンドマンはクズ」という言葉についてとか

こんちには。こんばんは。はじめまして。

暑いですね。これを書いてる前日の日中は今夏初のゲリラ豪雨が東京及び関東を襲いました。この強烈な雨にみんな打たれたら新型コロナウイルスが洗い流されたらいいのに……と思ったり思わなかったり。まあ流されたところでウイルスを含む雨水が乾いたらそこから土埃と共に死んでないウイルスが撒き上がりますね。これはダメだ。

さて、タイトルにある「バンドマンはクズ」というもはやキャッチコピーのようになってしまった定型文についてなんですが。

最近とある音楽プロデューサーの方にバンドを組んでも空中分解してしまうこと、このまま1人でSSWとしてやっていったほうがいいのか等と相談させてもらったんですが、その時もそのプロデューサーの口からこのキャッチコピーが飛び出しました。

その時まず思ったことが、「この人はクズなバンドマンとしか関わったことがないんだろうな」ということ。その次に「こういう人と接することでバンドマンはクズになっていくんだろうな」ということでした。

まず前提として、「何らかの形でバンドというものに関わっている人で直接ステージに立っているプレイヤー」のことをざっくりバンドマンと定義します。これはキャッチコピーが指す範囲があまりにも広義で杜撰であることを示すためです。

最初に何故「バンドマンはクズ」と言われるようになったのかを考えました。その昔……と言ってもまだ100年も経ってないと思いますが、音楽家のチームの形としてバンドというものが生まれた時とほぼ同じくしてクラシック以外の音楽ジャンルが生まれたとします。ジャズやブルース等です。恐らく新しいものを肯定的に受け止めるタイプと否定的に受け止めるタイプの人達でかなりの論争が起こったでしょう。「音楽という文化が新しい局面を迎えているのにそれを否定するのは閉鎖的だ!」「あんな野蛮なもの音楽じゃない!」みたいな。
その後も新たな音楽ジャンルが生まれる度に、「新しいものは素晴らしい!」「あんなもの認めない!」という対立は起こりました。これは音楽に限らずどの世界でも言えることですね。

そんな中で生まれたロックという音楽ジャンルは所謂「野蛮な音楽」の代表格として今も槍玉に挙げられます。ロック、と一口に言いましたが、それもまた細かく分類される上にそれぞれの分野で「一緒にするな!」という人も出てくるのでそれもまた割愛します。
どうもざっくりした論じ方ですみません。が、ここから個人的な感情も入ってくるのでさらにざっくりします笑

ロックという音楽は特に反抗心の強い若者に受け入れられました。それは今の時代にも続く大切な要素の一部と言っていい程だと思います。クラシックは使用する楽器が高額なため低所得者には入手困難、それよりは安価なギターやベースを使って自分たちの抱えるストレスを吐き出すような音楽を作ってやるぜ!同じような痛みを抱えたこいつらとチームを組んでそれぞれが得意とする楽器や歌で表現するんだ!→ロックバンド誕生の瞬間です。おめでとうございます。
こんな経緯で生まれた音楽、そりゃあクラシック畑の人間からしたらなんて下品なの?!ってなるのは当たり前です。「あんな下品な音楽をやってる人なんて碌でもない人に決まってる!なんておぞましい!」と散々言われたでしょう。

お分かりですね?「バンドマンはクズ」の原型です。

社会的下層地位の生活を送っている人、所謂底辺の人達をクズと言うのなら多少納得出来るかもしれませんが、個人の経済状況や社会的地位がその人の人間性を確定させるものというわけではありません。生活保護受給者でも、田舎の中小企業の平社員でも、東京やニューヨークにオフィスを構えている会社の社長でも、いい人もいれば悪い人もいます。月18万の収入で家族を養うサラリーマンが悪人で、赤坂や六本木で会社経営をしている社長が善人とは限りません。「バンドマンはクズ」という言葉に感じる違和感の根幹はここにあると思うんです。極端な話、じゃあ日本の大企業の社長が集まって「みんなロックが大好きなのでロックバンド組みました!ザ・社長ズです!」ってなったらその人たちの人間性全否定ですか?って話なんです。

「ザ・社長ズ」のネーミングセンスは置いといて、一方で確かにクズなバンドマンがいることも確かです。バックれる、お金の持ち逃げする、ファンに手を出して異性関係の揉め事を起こす…etc。クズの種類も星の数あれど、そういうとんでもなくどうしようもない奴らが他の世界と比べても人口比率高めではあります。そのこと自体は否定しません。
それでもそこからさらに私が思うのは、「このクズなバンドマンたちは果たして本当に生来のクズなんだろうか?」ということなんです。

何でもそうだと思いますが、新しいことを始めるには相応のエネルギーが要ります。ロックバンドを始めるのもそれなりにエネルギーが必要です。今の時代は学生のお小遣いでも買える楽器やマイクがあるのでハードルはだいぶ低くなりましたが、それでもまず「音楽が好き!バンドってかっこいい!自分もあんなかっこいい人達みたいになりたい!」という気持ちが大前提でないと、バンドを組むという発想には至らないです。異性にモテたくてバンドを始めたという人は多いですが、その前に音楽が好き!という気持ちがないとバンドという選択はしません。

バンドってめっちゃコスパ悪いですよ。楽器やら道具やら色々買わないといけないもの多いし、こだわったらこだわっただけお金かかるし、時間と体力費やして練習しないとかっこよくならないし、メンバーやファンとの人間関係めんどくさいし……なにより、かけた時間やお金の数字が膨らんだとてそれが自分が思い描いた理想通りにならないことの方が圧倒的に多いです。
それでもなぜバンドを組むのか?モテたいならアコギ一本持って流行りの曲カバーして歌ってYouTubeの方が簡単だしコスパいいしモテますよ。それでもバンドを組むのは他ならぬ「バンドってかっこいい!楽しい!」っていう気持ちがあるからですよ。

「自分がいいと思えるものに正面から向き合って全力で取り組む人」は、クズじゃないです。たとえその向き合う対象がロックバンドであろうとなんであろうと、クズじゃないです。
ロックという音楽やバンドという演奏スタイルに対して向けられた歴史的な差別的認識から「バンドマンはクズ」という言葉が生まれたのなら、私は声に出して「真剣に物事に向き合っている人を軽蔑するあなたたちの方がよっぽどクズじゃないか!!」と啖呵切ってやりたいです。

じゃあなぜクズなバンドマンが生まれるのか、という問題が発生します。さっきまでの話なら音楽をやってる人間は皆、純粋な音楽への愛を持って自分たちの理想を追求していくはずです。しかし、人間性が本当にどうしようもない奴らがいることも事実です。

原因の一つはまさしく「バンドマンが身を置く環境」だと思います。特にアマチュアの世界は、あまりにもバンドマン及びミュージシャン達にとって不利益で優しくないです。
先程お話した通り、音楽を続けるのはお金がかかります。純粋に制作経費として、楽器にかかるお金や練習にかかるお金がそれなりにいい値段します。それでも自分の音楽を表現するためには必要な経費だとお金を費やすのです。それに関しては本人たちが何をどっちにどこまで求めるかによるので、これはもうそれぞれのさじ加減です。

問題はここからです。曲を作ったらそれを披露するためにライブハウスに出演しますが、そこにチケットノルマと出演料いう枷が与えられます。このチケットノルマの意味合いとしては、表向きは「出演者のことをより多くの人に知ってファンになってもらう」ということになるのでしょうが、実際のところは出演料と共にライブハウスの使用料です。
キャパシティにもよりますが、だいたい東京のライブハウスで貸切にして15~20万円くらいがファンがまだ少ないアーティストが出演するような箱の値段だと思います。ライブに出ることが決まってる人や出演依頼が来ている人はそこのライブハウスの使用料を見てみてください。
そしたら次に、そこで課せられているチケットノルマとひとつのイベントの出演者数を見てみてください。ここでぜひ、違和感を感じてもらいたいんです。
「貸切使用料に対してブッキングのひと組にかかるノルマの枚数多すぎない……?」と。

バンドマンにとってのお客様は言わずもがなファンの皆さんです。チケットを入手して足を運んで下さって本当にありがとうございます。あなた達に見てもらえることが何よりの私たちアーティストの活力の元であり、頑張る理由です。
ではライブハウスにとってのお客様は誰なんでしょうか?私はここの部分の考え方がアーティスト達を苦しめる現状の原因だと思えて仕方がありません。
ライブハウスにとって、出演するアーティストがお客様になってしまっているのではないでしょうか。商売で利益を得るには当然お客様に商品をたくさん買っていただくことになります。これが多くのライブハウスにとって、商品→チケット、お客様→出演アーティストになってしまっていることが私には問題に思えます。
ライブハウスは「アーティストが自分たちの表現を商品として売るための場所」だと私は思います。その場所を借りることで発生するレンタル料をお支払いすることに異論はないのですが、だとしたら過剰なチケットノルマはただただアーティスト達に余計な負担をかけているだけです。ノルマ自体が悪いのではなく、過剰な枚数を提示するのがいけないんです。ライブハウスとアーティストは言わば音楽で商売をするパートナー関係であるべきだと思います。ライブハウスが場所を貸して、そこでアーティストがライブをやる。その売上から場所代をライブハウスに支払って、残りはアーティストの利益になる。という図式を、過剰なチケットノルマが壊してしまっているのです。

もちろんちゃんとアーティストとビジネスパートナーの関係で商売をしているライブハウスもあります。それが当たり前の事として出来ていないライブハウスが多いことと、それを知らずに(又は暗黙の了解として)与えられたチケットノルマに従っているアーティストが多いことが悲劇なんです。
正直もっと言ってしまえば、ライブハウスは出演料とそこそこ人が入ればドリンク代だけでもそこそこの利益になってます。原価考えたらまあそりゃそうなんですけど、誰もそんなことまで考えません。それをライブハウス側もわかってるからチケット代とは別にドリンク代を600円取ってるんです。ファンが飲む小さいプラカップのジンジャーエールで600円取って、アーティストへのチケットノルマで2,000円20枚=40,000が6組分、そこに各出演アーティストから出演料………

とまあこんな感じで変なところに余計なお金がかかるとどんどん経済状況は悪くなります。上手くファンが増やせてチケットノルマがなんぼのもんじゃい!ってなるまではかなりキツイです。そうすると人はどんどん心の余裕も無くします。ファンは増えない、お金が無い、焦る、こんなつもりじゃなかった……そうなるとどんどん心が蝕まれていき、大好きな音楽をそのままの気持ちで続けることが難しくなってきます。心が蝕まれていくと人に対する態度が変わっていきます。誠実に対することが出来なくなってくるのです。そうなると人はその人に向けてこう言います。
「あいつクズだよね。」

自分を知ってもらう努力、ファンを増やす努力、聞いてくれる人を満足させるための努力……アーティスト達はそれぞれ必死にやってる人がほとんどです。それを後押し出来るのは今いるファンの皆さんと、ライブハウスや音楽スタジオ等です。ギリギリのところで頑張ってるアーティスト達を、応援するどころか追い詰めてしまっている所が多すぎます。そりゃあクズも生まれるってもんです。
もしこれをライブハウスのスタッフさんやアマチュアアーティストの皆さんが見てくれてたら、改めて自分が普段身を置いてる環境が健全なものなのかを見つめ直してみてください。

そして、私がやりたい活動がまさにこの理不尽とも言える環境に身を置くアーティスト達と新しいエンターテインメントを作り上げたい、というものです。
ロックバンド、地下アイドル、小劇団、駆け出しのモデル、ダンサー……思うように活動の幅を拡げられないアーティスト達をクズにさせないために、イベントの企画やプロデュースを通じてそれぞれの活動をサポートしたい。企画したイベントを開催するためのライブハウスを建てたい(あわよくばCafeBAR併設)。ヘアメイクアーティストやデザイナーの卵達も加えて出来るだけ参加する人達に利益が生まれるようにしたい。

これは昨年の夏から自分が今後の人生をかけて取り組むプロジェクトとして考えたものですが、自分もミュージシャンの端くれとして自分のバンドをまずは確立していかないと賛同してくれるアーティストはいないと思うので、新型コロナ禍の中でも自分の腕を磨きつつ新しい生活様式に準じた上で活動を進めていきたいと思います。

最後になりますが、もし共感してくれた方いらっしゃいましたらご連絡お待ちしております。アーティストの皆さん、一緒に音楽を楽しみましょう。アーティスト以外の皆さん、力を貸してください。私にはまだまだ知識が足りません。御教授御鞭撻の方よろしくお願いします。

えー!めっちゃ長い!語ったなーー!!!ここまで読んでくれた方、ありがとうございました!
ではまた。

よろしければサポートしていただけるとありがたいです!いただいたサポートは自分のアーティスト活動、並びに今後のアマチュアアーティスト応援プロジェクトに大切に使わせていただきます!