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八潮七瀬
2018年1月8日 14:51
「お手洗いに行こう」休み時間になると、花からそう声をかけられるのが憂鬱だった。だからチャイムが鳴るとすぐに図書館に逃げ込む。身体の帯びる水分なんて大した量ではない。紙の束に囲まれていると、行き場をなくしていた感情が音もなく吸い込まれるのを感じる。柔らかく黄ばんだ紙をめくるたび、指先から移った水分が紙を柔らかくたわめていき、紙は深く呼吸をするように伸び上がる。陶器の冷たい便器に排泄するより