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【読書ノート】横田耕一(2014)『自民党改憲草案を読む』_#00

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はじめに

これまでの改憲案と異なる2012年案

  • 自民党は2012年4月27日に『日本国憲法改正草案』(以下『案』)を発表した。

    • 1955年の結党以来、自主憲法の制定を目指して来たので、このこと自体は驚くべきことではない。

    • 実際これまでも折りあるごとに自民党の憲法調査会や議員などから憲法改正草案が示されてきた。

      • 近くは2005年10月28日発表の『新憲法草案』。

  • しかし、この度の『案』には特異なところがある。

    • 2005年案では主に、戦争放棄を定めた9条の改正に焦点を当てていた。

    • 対して2012年案では、9条の背景にある「平和主義」の理念のみならず、「国民主権主義」や「基本的人権尊重主義」を、換骨奪胎しようとしている。

    • 加えて、憲法の存在意義そのもの(近代立憲主義)をも変えようとしている。

  • 『案』が発表されて以降、議論は賛否を問わずもっぱら9条をめぐって行われているが、『案』の持つ問題性はより根本的なところにある。

  • 舛添要一が中心となって作成されたとされる2005年案と比べて、2012年案は(野党時代に発表されたこともあり)自民党の一部を占める「お気楽な人たち」がお気楽に作成したものとされる。

    • 保守でも反動でもないため、こう呼ぶしかない。

  • したがって、護憲派の中には、その実現性を真剣に考えない者もいる。

  • しかし、安倍晋三が内閣総理大臣となり、衆参選挙で自民党が大勝したため、この種の改憲案に親和的な野党の一部を合わせると両院で憲法改正発議に必要な2/3以上の多数を獲得できそうな情勢になった。

  • よって、『案』を内在的に検討することは緊急の課題となってきた。

    • このような問題意識から本書は書かれている。

    • なぜこのような改正案が登場してきたのかといった政治的・経済的背景には殆ど触れていない。

  • なお、『案』の狙いを知るためには、自民党憲法改正推進本部が出した『日本国憲法改正草案Q&A』と同起草委員会事務局長を努めた礒崎陽輔の『憲法改正草案解説』が最適である。

「改正手続の緩和」という禁じ手

  • ところで、いくら憲法改正の気運が高まったからといって、一挙に『案』全体を現憲法に取って代えることは不可能である。

    • したがって小出しに改正を繰り返すことになる。

    • そこで安倍首相の打ち出したのが「改正手続の緩和(軟化)」という奇手。

    • まず現行の改正規定を緩和する改正を行い、次にその緩和された改正手続を経て一気呵成に全目的を達成しようとするもの。

    • しかしこれは従来の改憲論者からも禁じ手だとして強い反対がある。

    • そうした状況もあって、自民党はいつものように「解釈改憲」と「法律や行政の実務を通しての目標達成」を行おうとしている。

      • 閣議決定による「集団的自衛権」の行使の合憲化。

      • 『教育基本法』の改正や『特定秘密保護法』の施行。

    • つまり、憲法の改正は行われていないが、『案』の内容は実質化されつつあるといえる。


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