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『フルテン!』 あとがきに代えて

キナリ杯の受賞作発表、いよいよ今日ですね。

まずは、参加させていただいた一人として、主催の岸田奈美さんには、このような機会を与えて下さったことに、心から感謝を申し上げたいと思うのです。
ワタクシも若い頃、漠然と「作家になりたい」と思った時期がありまして、まあ結局は「サラリーマン」という生き方を選んだわけですけども、でも文章を書く、書きたいと思ったことはとりあえず書いて、それを自分のWebサイトやFacebookに載せるということは続けてきたんですけどね。
とはいえ、小説的なものを始まりから終わりまできちんとひとつの作品にする、ということはなかなか出来なかったことには違いなかったわけで。

「キナリ杯は、文筆界のオリンピック」

最初にキナリ杯の記事を読んだ時、これは「参加する事に意義がある」って直感的に思いましたものね。妙齢の女性に「面白い文章が読みたい」と言われれば、そりゃあ「元作家志望のおっちゃん」としては、よし、じゃあちょっとやってみようか、という気になるわけです。
こういうアマチュアリズム全開で、お祭りとして愉しむことができる企画があって、で、当然に「締め切り」というものがあって、ようやく「作品」として、見ず知らずの皆さんにも読んでもらえる場に送り出せて。それがワタクシとしては凄く嬉しいことだったんですよ。
そう、これはランニングを趣味にしている人が、初めて「市民マラソン大会」に参加して、フルマラソンを完走できたような、そんな喜びですよね、きっと(ワタクシ自身は運動神経が「鈍い」というより「無い」人なので、適切なたとえなのかよくわかりませんけどね(笑))。

「キナリ杯は、文筆界のマラソン大会かもしれない」

例えば東京マラソンみたいな大会っていうのは、それこそ名だたるトップアスリートがタイムを競っている一方で、市民ランナーたちも同じコースを、自己ベスト、あるいは完走することを目指して走ってるわけですよね。中にはコミカルなコスチュームで走る人もいたりして、ちょっとしたお祭り感もあって。とにかく参加できて嬉しい!って人ばかりですよね。

今回のキナリ杯に4200作がエントリーしたという岸田さんのTwitterを読んで、ワタクシはふとニュース映像によくある、マラソン大会のスタート地点で、ランナーたちがどっとコースに走り出していく、ああいうイメージが浮かんだんですよね。

小説を書いてみて、感じたことは

あ、で、この記事は自分の書いた「フルテン!」のあとがきも兼ねてるんですけど、まず自分自身で小説を書く、というのは別に初めての体験ではないんですが、とにかく「遅筆」な上に、始まりと終わりだけ描写して、それでストーリーも膨らまないまま放置、みたいなことが続いてました。割と。

今回の作品では、先にキャラクターの設定をかなり細かく決めて、名前はもちろん、作品中では描写しない年齢や職業、趣味、飲んでるお酒の好みなんてものも設定して書いていきました。
するとキャラクターたちが、勝手にどんどん日常生活を送り始める、そんな感覚になるんですね。いつもの面々が勝手に居酒屋、この作品の舞台のひとつである「大さき」に来て、呑んで、食べて、雑談を始め、女性も口説いちゃうんです。ワタクシの見てない間に。

かの偉大なる北方謙三氏も、大水滸伝シリーズを執筆している間、ファンからの「あのキャラクターを死なせないで」という声について、それは自分でもコントロールできず「お前、死ぬな」と思っていても、戦場で暴れている間に、死んでしまう。そしてそのシーンを書ききった夜に、その死を悼んでグラスを傾ける、というような話をされていましたけど、ワタクシも僭越ながら、今回の作品を書いていて似たような気持ちにはなりましたねえ。とにかくキャラクターたちの雑談が長い(笑)。呑んでるから同じ話を何度もするし。ワタクシも仕方がないので、軽く呑みながら付き合いましたけどもね。

まず、キャラクターのディテールを上げていくこと。設定を深堀りしていくことって、これは作り手によるとは思いますが、ワタクシ的には愉しい作業ではありましたよ。作中で、大事な日になる2008年9月14日の天気とか気温を調べたりとか。そういうところを作っていくと、自分の作品の世界観が箱庭的に俯瞰できて、なんかジオラマを作っているかのような楽しみがありますね。で、もしこの作品がドラマ化されるとしたら、このキャラクターをどのタレントさんに演じてもらうか、とか考えるとね、うん、これは楽しい。

というわけで、これからもnote上に、ぽつぽつと作品を上げていこうかなと思い始めていたりしますよ。それに、何よりnote上の、さまざまな方々による、秀逸な文章に触れることも愉しみになりましたし。

これは岸田さんをはじめ、皆さんに良いものを教えてもらえたような気がします。「キナリ杯」を主催してくださった岸田奈美さんと、ワタクシの作品に見を通してくださった全ての皆さんに、心から御礼申し上げます。
ありがとうございました。

今日はワタクシ、偶然有給休暇をいただいておりまして、今日の受賞作発表はリアルタイムで楽しめそうです。昼間から何ですが、ワタクシの作品のキャラクターたちと、ちょっと良い純米大吟醸を傾けながら、受賞作を楽しませてもらおうと思ってます。

というわけで、今日も皆さまによって良き一日となりますように。

(了)

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