愛犬なつへ

なっちゃんが亡くなった夜、

私はなっちゃんの隣で一緒に寝た。

朝になったら、

埋葬屋さんが来て、

なっちゃんとさようならを

しなくてはならなかったから。


なっちゃんは 女の子だけど、

本当に たくましく力強く生きた。


とってもとっても いい子で。 

歩くのと、食べるのと、 

甘えるのが大好きだった。


 私が高校生のとき。 

誰にもナイショで1人で泣いてると、

 なっちゃんがいつも隣にきてくれて。

私が泣きやむまでずっと

手を舐めてくれた。 



大学生になって。

 私は母の言うことを聞かなくなった。

 自由奔放に過ごして、

母に沢山心配をかけた。

 

母が私を叱るたび

なっちゃんは一生懸命に吠えて 

私を守ってくれた。



 大人になって。 

私は前ほどなっちゃんの前で

泣かなくなった。

だけれども、

 元気がないと家族の誰よりも

よく気がつくのは、 なっちゃんだった。

 

心配そうに顔を見つめながら

私の側から絶対に離れない。

ずうっと一緒。



 一人暮らしをして

なっちゃんと離ればなれになった。

実家から歩いて15分くらいの場所だったから

なっちゃんはお散歩をしながら

 よく会いにきてくれた。 


そして数年後、私の仕事が変わると

今度は歩いては行けない場所へ

引っ越すことになった。 


その後もなつは、

私が住んでいた家まで

何度もなんども私をさがして会いにきた。


その報告を聞くたびに

私は実家に帰った。


実家に帰れば、

なっちゃんはいつも

私の膝の上に座って離れなかった。


いつしか、なっちゃんも

だんだんと歳をとり。

大好きだったお散歩も

近所を少し歩いたら、

もう帰りたいと

いうようになった。



ある日、

なっちゃんは母をひっぱり

必死に歩きだした。

どうしたのかとついていくと、

私が昔住んでいた家に

たどり着いたのだという。


ここにはもういないのよ、と

母が何度言っても。

なっちゃんはずっと動かなかった。

帰り道はガッカリして

歩く力も気力もなくなってしまい、

母に抱っこされて帰ったそうだ。


 今思い返せば、

それがなつにとって最後の

長いお散歩だった。   


その話を聞いて

私はすぐに実家に帰ったけれど。


なっちゃんはそのあと1週間で

体調が急変し、

ご飯も水も飲まなくなり、

あっと言う間に亡くなってしまった。 


本当に突然のことで

私は受け止めるのに時間がかかった。

これまでの人生で

こんなにも長く

涙を流したことはなかった。



なっちゃんに、

私はいっぱいいっぱい

優しさと愛情をもらった。

でも、私はなっちゃんに

何かしてあげられたのかな。

もっと沢山、会いに行って

一緒にお散歩してあげたらよかった。


まだまだ、なっちゃんと 一緒に

お散歩ができると思っていた。


 でも、

私や妹が実家を離れてからも、

なっちゃんは母に

沢山たくさん可愛がられ大切にされた。

なっちゃんは母の抱っこが大好きだった。


なくなる前日。

なっちゃんは、母に抱っこと甘えて。

一睡もせず一晩中、

さいごの母の抱っこを満喫した。


なっちゃんを大切にしてくれた母を

なっちゃんの大好きな母を

今度は私が大切にするね。


なっちゃん、16年6ヶ月、

 私たちと一緒に過ごしてくれて 

本当に ありがとう。


最後に、なっちゃんに報告があるよ。

私にも赤ちゃんができて、お母さんになるの。

なっちゃんに教えてもらったことを大切に

子育てを頑張るから。

これからもどうかそばで見守っていてね。

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