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87歳と4歳が一緒にお風呂に入ったら。

昭和10年生まれ。姫路の港町で長男として生まれ、家業である魚屋を継ぎ87歳になる今でも現役で店に立つ。

『ようきたなぁ』が口癖のように、いつ遊びに行っても海のような大きな愛情で包んでくれたおじいちゃん。

生後半年頃。

昔は、頭が良くて働き者で、博識で、とても大きな存在だったおじいちゃんだが、最近はお酒を飲んだことを忘れてお酒がほしいとおばあちゃんにおねだりしては、もう飲んだでしょ?と怒られる。

大きい背中のおじいちゃんは、小さくてチャーミングなおじいちゃんになった。

コロナ禍もあったので、約半年ぶりに子どもたちを連れて遊びにいった。ご飯をごちそうになった後『一緒に風呂入ろうか?』とおじいちゃんは、4歳の息子をお風呂に誘った。

87歳のじいちゃんと、4歳の息子が密室空間に。一人でお風呂に入っても大丈夫?なコンビ。(!)

わたしはいろんな意味でそわそわして、いったいどんなふうに二人がお風呂に入っているのか、気になって仕方がない。

そおおっと耳をそばだてる。

『………』

なんか、静かやな。大丈夫かな。
すると、

おじいちゃん『あついか?』
息子『ちょっとあついかな。』

という会話が聞こえてきた。
(よかったふたりとも無事や。)

※あとからそのお風呂に入ったが、足を入れた瞬間『あっつ!!え?あっつ!!!』とモニターをみると、44度。いつものお風呂は40度なのでよう入ったな、息子、とふふふと笑ってしまった。


お風呂から上がったふたりの顔は晴れやかで。息子は、なんだか誇らしげだった。

お風呂上がりのふたり。


どうやら絆が深まったようで、おじいちゃんは『男同士やからな』と、たいそううれしそうだった。

それから数十分間は、

『孫とお風呂に……』
『ひ孫やでおじいちゃん』
『そうか、ひ孫とお風呂に入ったんかあ。しあわせやなぁ。』

というやりとりを、嬉しそうに何回か繰り返した。


『おじいちゃん、いつもは風呂入りたがらへんのよ、すぐ寝てしまうから。』と、おばあちゃん。

へぇ、昔は、お風呂好きやったのになぁ。

『〇〇(息子)に毎日お風呂に入りにきてもらわなあかんな。』

とばあちゃんは、笑った。


お酒を飲んだことを忘れてまだ飲みたいと言っては『もう3杯目よ、やめとき』とおばあちゃんに怒られるおじいちゃん。

アイスを食べたまくりたい息子は『もう3個目よ、やめとき』と私に言われては、ぷうっとほっぺを膨らませる。

なんでだろう?

むすことおじいちゃんは、限りなく近いところにいるような気がするんだ。

ただただ、いま、を楽しんでいて。
いまを生きている。

ふたりはとてもピュアで愛がむき出しなまま存在している。

始まっていく人と終わっていく人が、いる場所が同じだなんて、面白いなあ。

眠くなったおじいちゃんは、むすこに手を引かれて寝室に。

『今日は、ええ日やったなぁ。ほんまに、ええ日やった。』

と、天井をにこにこみつめながら眠りについたおじいちゃん。



84歳差の人間が仲良く愉快にお風呂に入るシーンなんて、そうそう見られるものじゃない。

生きててくれてありがとうと、生まれてくれてありがとう、といろんなエモーショナルな感覚が襲ってきて、こんなにもながい文書を書くに至った。


わたしが、今日、目撃したとてつもない奇跡を忘れないようにここに記しておきたい。

8ヶ月ぐらいのとき。仲良く並んでお昼寝。
この2人の写真はどれを切り取っても尊い。




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