『犬ヶ島』-幸せなバグが、脳みそで起こります
ずっと更新してなかったな。いま見るべき、映画 OF 映画だと思う、『犬ヶ島』。『グランドブタペストホテル』の監督が制作した、ストップモーションアニメ。舞台は日本の架空の都市です。
ウェス・アンダーソンといえば、横移動のカメラワークと、いちいちかわいい美術、そしてシュールな台詞。知らない方も、なんかそれを意識してみていると、とっつきやすいかもしれません。手羽先の持つところ的な。(万が一予習したいなという人は、netflixに登録していれば『ムーンライズキングダム』という映画が同じ監督です。けど長いから、行きの電車で、去年か一昨年に同監督が制作した、『Come Together』(youtubeへ飛びます)というアパレルブランド・h&mのショートムービーを観るのがオススメです。めちゃかわいいし、最近の監督の雰囲気が、ぎゅぎゅっと詰まっています。そして、何より心が温まる。)
さて、話は『犬ヶ島』に戻りますが、まずこの映画、ストップモーション、つまり人形で一コマずつ撮ったものをつなげていることが、ヤバイ。や、全てのストップモーション映画がそうなんだけどね。動きとカメラワークが、まじで、ヤーバイ。
タイトルにも書いたけれど、途中で「え、このシーンどう撮るの?は?それもストップモーション?は?」という脳みそのバグが生まれる場面があり、そのバグが一度起こるとそのあと馬鹿みたいに口が開きっぱなしになります。ストーリーに心が追いつかなくなるくらい、なんかもう画面づくりがエグすぎるんですよね。(もちろん、ストーリーも大事だし、おもしろい。だから大変なんです、どっちもちゃんと観たいのに、どっちもすごくて心が追いつかないから。)
そう、この映画のすごいところは、バグ。つまり、脳みそが追いつかない贅沢、素晴らしい作品の素晴らしさを全身で受け止め切るのではなく、源泉掛け流しでドバドバ指の間からこぼれていくもどかしさと歯がゆさに、ニマニマしてくるのです。
あと、どうしても日本を描いた海外の作品って、芸者富士山崩壊した漢字、がデフォすぎて辟易してる人もいると思います。あれ、キショイなーてなりますよね、なりませんかね。わたしは、なっちゃうんですけど。うそ、キショイは言いすぎました。こんな風に見えんのな〜てなりますよね。
まあ日本人が意味不明な英語でTシャツ作っちゃったり、中華料理店で中国には実在しない天津飯を出すのと一緒だよな〜とも思います。先入観や、外から見たときの印象って、やっぱりあるから、それもまた、一つのリアルだとも思う。けど、この映画は、なんか、違う。
もう日本で育ったんじゃねえか、というくらいに、日本をこんなにも理解して作品に落とし込んでて、違和感がないんです。看板の一つとっても、街並みの一つとっても、テレビの画面をとっても、太鼓を叩くシーンをとっても。そうだな、やっぱオープニングの太鼓を叩くシーンが、よくみるとすごいです。「日本で育った人なら、無意識でこうするかもなあ…」というか。(ぜひその目で確認してほしい。)彼は、どんな眼差しで、どれだけの期間、日本という国をみてきたんだろうというか。日本の人間として、恥ずかしいところまで見られてるんだろうなと思い、恥ずかしくなるくらいでした。あと、これはあとから教えてもらったんですが、黒澤監督へのリスペクトにもあふれています。(たぶん、これについてはもっと詳しい説明をしている方がいらっしゃるでしょうね。)
またこの映画、架空のお話とはいえ、どこか昨今の日本のペット問題にも繋がっていて、ゾワワとすることもありながら。笑って見入って、何より敬服する。これがものづくりか、てかんじです。ビジュアルがちょっと...て遠慮してる人いるかもしれないけど、全然大丈夫。犬も人間も設定もめっちゃかわいいよ。愛おしいよ。人形なのに、なんでこんな表情でるん???は??????ってなります。これもまたバグります。(あと、声優陣が豪華すぎて変な笑いが出るので、ぜひ映画観たあとに確認してみてください。観ながら、「この人この俳優さんかな」とか考えながら観るのも楽しいから。ハリウッド映画にバンバン出てるような人たちです。)
まあともかく、この夏、というか梅雨、みなさん『犬ヶ島』だけは映画館で観たほうがいいんじゃないかと思うです。別に回し者でもなんでもないんですが、こんなにすごいものが、こんなに手がかけられたものが、こんなにセンスにあふれたものが、こんなに準備されたものが、2000円に満たないで観れるってやばいと思うんです。
映画っておもしろいなあと思うのが、”映画”という名前のくくりの中に、本当に魑魅魍魎ごっちゃ混ぜぐらいの作品の多さと深さと幅があること。そして、この『犬ヶ島』は、その映画という多様性とおもしろさを感じさせてくれる映画だとわたしは感じました。
鑑賞した暁には、ぜひわたしにお知らせください。この映画の話、5時間くらいできるので、喫茶店にシケこみましょう。まあ熱く語るわたし、まじでウザいと思うんですけど、いろんな人の感想が聞いてみたいんですよね。喫茶店が嫌だったら、コメントなりで、教えてもらえたらうれぴーです。
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