見出し画像

要約:「サピエンス全史」(1) -認知の革命

/* このnoteは掲題本について、主観で要約を行ったものになります。ネタバレ等を含みますのでご注意ください。また、文章は適宜改変を加えるものとし、原文訳に忠実ではないことをご了承ください。 */


概略

 人類の祖と呼ばれるアウストラロピテクスは250万年ほど前に地球に出現し、そして各地に移住することで様々な種族へと分化していった。以降200万年ほどの間、人類は他の動物と大差ない一生物としてこの地球に存在していたが、ある日、一種族であったホモ・サピエンスにおいて「認知革命」が起こった。原因は不明だが、この時期を境に彼らは道具や言語を使用するようになる。地方の種族にしか過ぎなかったホモ・サピエンスは全世界へと進出し、派生していた他の人類種を全て席巻し尽くした。

 どの動物も社会を形成するが、そのコミュニティが一定以上に大きくすることが難しい。なぜなら自然発生的に生まれたコミュニティにおいては「信頼」や「友好関係」が重視され、それは成員の増加によって薄弱化してしまうものだからだ。
 だがホモ・サピエンスはその言語能力によって「神話」を作り出した。個々の関係に依らない共通幻想を所持することが可能になったホモ・サピエンスはコミュニティの成員上限を克服。都市や帝国といった大規模なコミュニティを形成する準備を整えたのであった。

 ヒト属を席巻したホモ・サピエンスは、他の種族をも圧倒するようになった。詳細は未だ謎に包まれているものの、結果的に、ホモ・サピエンスが移住したところ全て他生物の大絶滅が発生している人類は地球上で最も危険な種族となったのだった。


 

文章の流れ

第一章:唯一生き延びた人類種

・歴史の道筋は三つの重要な革命が決めた。認知革命、農業革命、化学革命だ。

・人類が初めて姿を現したのはおよそ250万年前で、彼らはアウストラロピテクス属と呼ばれる。その後彼らは様々な土地に移住しそれぞれの進化を遂げ、ネアンデルタールやホモ・エレクトス、ホモ・サピエンスなどと呼称される種に変化していった。

・これらのモデルは旧式のものから新式のものへと変化した、というような一直線の系統図に並べることはできない。彼らは同時に、世界に存在していた。

・30万年ほど前、ホモ・エレクトスやネアンデルタールは日常的に火を使うようになった。火の最大の恩恵は、調理が可能になったことだ。そのままでは人類には消化できない食べ物も、調理のおかげで主要な食糧となった。

・ホモ・サピエンスは一地方の種族に過ぎなかったが、15~7万年あたりに多くの土地を席巻した。その他の種族との関係については、「交雑説」と「交代説」がある。過程はまだ謎だが、結果的に、ホモ・サピエンスの到着した地においては、先住民は消え去った。


第二章:虚構が協力を可能にした

・約7~3万年前にかけて、人類は弓矢、針、芸術などを発明した。このように、この時期にかけて見られた新しい思考と意思疎通の方法の登場を「認知革命」という。その原因は定かではない。

・認知革命により、ホモ・サピエンスは「ライオンはわが部族の守護霊だ」と言う能力を獲得した。虚構、すなわち架空の事物について語るこの能力こそが、サピエンスの言語の特徴として異彩を放っている。

・同じ連合の成員が信頼や相互扶助を楔として組織されている場合、維持できる集団の大きさには明確な限界がある。人間の集団についても同様のことが言え、集団の自然な大きさは150人が限度だったとわかっている。

・人間は虚構、すなわち共通の神話を信じることによって、都市や帝国を作ることに成功した。言葉を使って想像上の現実を作り出す能力のおかげで、大勢の見知らぬ人が効果的に協力できるようになった。


第三章:狩猟採集民の豊かな暮らし

・サピエンスは、種のほぼ全歴史を通じて狩猟採集民だった。

・狩猟採集民は後世の人々よりも豊かな生活様式を享受していた。労働時間は少なく、手に入る食物は多岐に渡っていたから理想的な栄養も得られた。基本的には定住もしなかったので、感染症などの危険もなかった。

・もちろん理想的な生活だったかといえば、そうとも言い切れない。欠乏と苦難は多々あったし、子供の死亡率も高かった。

・狩猟採集民のあいだでは一般にアニミズムが信じられていたとされる。


第四章:史上最も危険な種

・人類は初め、環境に影響を与えるような存在ではなかった。しかしオーストラリアに移住したとき、彼らはこの大陸の生態系を完全に変えてしまった。それ以降も、人類が新しい土地に住み着くたび、その土地では人類以外の大絶滅が起こっている。



興味深い文章の抜粋

・大きな脳は体に大きな消耗を強いる。そもそも持ち歩くのが大変で、しかも頭蓋骨という大きなケースに収めておかなければならない。ホモ・サピエンスでは脳は体重の2~3%を占めるだけだが、持ち主がじっとしている間は体の消費エネルギーの25%を使う。ヒト以外の霊長類は、安静時には8%ほどのエネルギーしか消費しない。

・人類の神経ネットワークは200万年以上を重ねて進化を遂げたが、その間、とがった棒とナイフ以外を生み出さなかった。それなのになぜ脳が進化し続けたのか、謎である。

・サピエンスに責めを負わせるかどうかはともかく、彼らが新しい土地に到着するたびに、先住の人々はたちまち滅び去った。

・自然状況下では、典型的なチンパンジーの群れはおよそ20~50頭から成る。群れの個体数が増えるにつれ、社会秩序が不安定になり、一部の個体が新しい群れを形成する。

・想像上の現実は嘘とは違い、誰もがその存在を信じているもので、その共有信念が存続する限り、その想像上の現実は社会の中で力をふるい続ける。国連も、リビアも、人権も、私たちの想像力の産物に過ぎない。

・想像上の現実の計り知れない多様性と、そこから生じた行動パターンの多様性はともに、私たちが「文化」と呼ぶものの主要な構成要素だ。

・近代的な発生学が発展するまでは、赤ん坊がいつも多数ではなく単数の父親によって母親の胎内に宿るという確証はなかった。

・平均的なサピエンスの脳の大きさは、狩猟採集民以降、実は縮小したのではないかという説がある。この時代を生きるためには、各人は専門的な技術ではなく、誰もが素晴らしい生存能力を持っている必要があったからだ。

・アチェ族の人々は、集団にとって貴重な成員が亡くなると、小さな女の子を一人殺して一緒に埋葬する習慣があった。

・歴史上の痕跡を眺めてみると、ホモ・サピエンスは生態系の連続殺人犯に見えてくる。


以上。


サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
河出書房新社

思考の剝片を綴っています。 応援していただけると、剥がれ落ちるスピードが上がること請負いです。