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『ぶっ飛ばし方』きゃらをさん企画


きゃらをさんの企画「お前ぶっ飛ばす」。



小さい頃から小柄だった私だが、喧嘩はすごく強かった。
女の子は守るもの…そんな私は女子の強い味方であった。
一方で、好きな子にちょっかいを出すというのがスタイルな小学男児達からすれば、邪悪な魔物で 高い城のてっぺんに監禁されている好きな女子を救い出すために倒さねばならない関門とも取れたようだ。

毎日のように武装した男子が裏山から私の名前を呼ぶ。
「ななだー!!出てこい!!」
いつも喧嘩では負けない私に母は
「あら?なえこぉ~、お友達がまた来てるわよぉ」と呑気にしていた。

ある日頭にバケツをかぶり、野球バットを持った2人の男子が家の前に来た。
「ななだー!!勝負しろぉぉぉぉーー!」と大声で叫んでいる。

「あらまぁ。。。ジュースとお菓子。。。」とにっこり笑ってコップを取り出す母。。。

いや…ママ…私一応あなたの「娘」なんですけど。。。

ため息交じりに外に出て「また負けに来たの?」というと

「今日の勝負はぜってーまけねぇ。」と自信たっぷりだ。

一人が頭のバケツも野球バットも地面にほおり投げると、

「今日はかけっこで勝負だ!!」

「ん???かけっこ???」ーそれでいいのか???
まぁいいや。
私は長距離はテンでダメダメだったのだが、短距離は選抜されるくらい早かった。
折り返し地点で勝負はついていた。

大の字になって青空を見上げるその子は、ちょっぴり悔し泣き。その子に向かって「100年早いんだよ!」と言ってやったことを覚えている。
そこに…

「はぁ~い、おやつよぉ」桃色の声が響く。

え?本当に持ってきたのママ??

母がトレイにジュースとお菓子を持ってくると、半泣き男子はすぐにとび上がり、母にお礼を言いながら私の好きなヨックモックにかぶり付いていた。お礼を言ったから…まぁいい奴…だ。
だが!!
私が大好きなヨックモックを地面にこぼしながらニコニコ笑って食べている。。。私の…大好きな…ヨック…モック。。。

その瞬間…

殴っておけば良かった。。。

と心底思った。


この日母に言われたことがある。

「今日の”勝負”は素敵だったわね」


母からこの日、殴る蹴るの力をもって「ぶん殴る」ではなく
正々堂々と勝負をし、「ぶっ飛ばす」事を学んだ。


それは月日が経ち…男子には力では敵わなくなってきた頃に大いに発揮された。

「精神的にぶっ飛ばしてやる」

嫌な奴には成績では負けない。
スポーツのタイムだって負けない。
成績が貼り出される掲示板の前でふっと鼻で笑ってやる。
その人の内面から、頭が火山のようにぼわわぁーん!と爆発するように
相手をぶっ飛ばす。これはぶん殴るよりも快感であった。
それには努力も必要だったが、筋トレと何ら変わらない。
筋肉の代わりに知識を
暴力の代わりに言葉や頭を使い
嫌な奴には目をくれてやらない。

そりゃ負ける日だってあったし、競えない分野だってあった。
特に国語に日本史…漢字が苦手なのは自分でもよぉーく分かっていたから
負けの勝負はあえてしない。潔い。。。(笑)

父がよく言っていた言葉。

「全てにおいて出来る人より、何か一つでも人より飛びぬけたものを持てる人になりなさい。」

最高だ。

国語や日本史を平均点まで持って行かないと夕食抜きなんてことがない家庭。父は0点でもいいという。ただし、
「これだというものは 何が何でも引き下がるな!」

私はそれで 沢山の人を「ぶっ飛ばして」きた。
でもだからモテなかったというのも事実ではある。

負けず嫌いな私には最高のぶっ飛ばし方。
そんな私は「ぶっ飛ばし」が癖になっている。
なにか新しい事をやってみたい、こんな事もありなんじゃん?
自分自身にもぶっ飛ぶ日々があるのだが、
そこには意外性、努力、高めあい…そしてなにより
自分に向き合ってゆくという大切な物が詰まっているように感じる。
人生こうして「枠にはまったぶっ飛ばし方」をまたまた「ぶっ飛ばして」生きていた方が楽しいのではないかと 心の底からそう思うのである。


(おわり)

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おまけ: 妹話 

『愛する妹は両刀使い』


それは妹が中学2年の時だった。正義感が強いと言われる私よりもさらに正義感が強い妹。
ある日母が妹の学校に呼び出された。
職員室につくと、目に青タンを作った妹。。。ある男子生徒に殴られたらしい。可哀そうな娘…と思ったのもつかの間、
母は校長先生から驚愕の事実と共に請求書を渡されたのだ。

「娘さんがある男子生徒が列に割り込みをしたことを注意したら、その子に殴られまして…」

見回してもその男子生徒がしょんぼり反省している姿は何処にも無い。

「その子が娘の顔面を殴ってこんな傷を…その子は何処にいるんでしょうか?」

「いやぁ…それがですね。。。娘さん殴られて、怒ってその子を追いかけたんですよ。で、男子生徒が野球部の部室に逃げ込みまして。。。」

「痛かったでしょう…涙」妹を撫でる母。

「で…娘さん殴られた事にも 割り込みにも頭が来ていたのでしょうね…部室のワイヤーが張った窓ガラスを素手でぶち破ったんです。。。

「……。す…で…で…。。。。」

これには妹を殴った男子生徒もブルブル震えていたらしい。。。

素手で窓ガラスをぶち破った娘。。。

母は部室の窓の請求書と共に静かに学校を後にした。


「よくやったぞ!!!」

青タン晴れ目に 左手に包帯の娘に父は一言そう言った。。。

妹は「ぶん殴り」。。。そして「ぶっ飛ばした」
両刀使いの強者である。

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これは私の祖母のお話。
私の祖母もまた、かっちょいい「ぶっ飛ばし方」をする女性である。
一度大正時代の素敵なぶっ飛ばし方を読んでいただきたい。


これもある意味 精神的なぶっ飛ばしである。
とある女性教師に精神的にブローを食らった私は
ロッキーになった。。。そして最後はリング上でその先生と笑いあった
美しき先生のお話



きゃらをさんの素敵な企画に参加させていただきました:)
是非皆様の「お前をぶっ飛ばす」書いてみてください:)


今日も笑顔でぶっ飛んでゆきましょう!!!


七田 苗子


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