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私の備忘録#5 「権力者のパワハラ」

朝日新聞2024年7月17日(水)
社会より

兵庫知事、改めて辞職否定
自民県連会長発言「真摯に受け止め」

百条委 元局長の陳述書、採用検討
告発文を詳述、想定問答陳述書

元県民局長の内部告発は、斎藤知事のパワハラや県内企業からの物品の受け取りなど7項目を指摘するものだった。百条委はこの7項目の内容の真偽に関連する事項を調べる為に設置された。

百条委は今後、50人ほどの県職員を証人尋問する予定。職員に対し、知事のパワハラや物品の受け取りなどを見聞きしたことがないかアンケートも実施する。年内をめどに調査を終える方針だ。

朝日新聞2024年7月17日(水)
社会より

パワハラが起きる背景は何か

ハラスメントを生む「属人思考」風土と改善策

多くの組織風土の要素から分析した結果見えてきたのは、「属人思考」という組織風土だ。「属人思考」というコンセプトは、もともと心理学者の岡本浩一らが、企業不正・不祥事の研究において導出した概念である(※)。岡本らは、属人思考のことを『問題を把握解決するにあたって、「事柄」についての認知処理の比重が軽く、「人」についての認知処理の比重が重い思考』と説明する。問題の内容や意見の内容そのものよりも、「誰がやったか」「誰が言っているか」ということを重視するような風土である。

※『属人思考の心理学―組織風土改善の社会技術』、編著・岡本浩一・鎌田晶子、2006年、新曜社。

測定の際の具体的な聴取項目としては、
 ・相手の体面を重んじて、会議やミーティングなどで反対意見を表明しないことがある
 ・会議やミーティングでは、 同じ案でも、誰が提案者かによってその案の通り方が異なることがある
 ・トラブルが生じた場合、 「原因が何か」よりも「誰の責任か」を優先する雰囲気がある
などの項目で構成される風土が属性思考だ。

これらの項目について、「全くその通り」から「全くその反対」のどちらに近いかを6件法で聴取すると、こうした項目の多くで、肯定回答が7割を超えており、属人思考の傾向が強い組織は極めて多いことがうかがえる。

(中略)

こうしたことが影響してか、属人思考の高い組織では、被害者側の「相談無力感」も高まっている。相談無力感とは、「この組織でハラスメントを報告しても相談にのってくれないだろう」、「会社はハラスメントを隠そうとするだろう」、「対処しないだろう」という「相談しても解決に結びつかないだろうという被害者側の予期」のことだ。

例えば、「上司」がハラスメント加害者だった場合には、同僚や顧客が加害者である場合よりも、相談無力感がとびぬけて高い。さらに、役職者の役職が係長から社長まで上がれば上がるほど、被害者側の相談無力感は如実に上がっていることも分かっている。

逆にいえば、ハラスメント加害者側の「表沙汰にならないだろう」、「逆らえないだろう」、「問題になることはないだろう」といった考えが加害に結びついている可能性もある。ハラスメントの「隠ぺい」にはこうした組織内の縦の権力構造が密接に関わっている。

(中略)

まとめ
ハラスメントを防止する観点において、「属人思考の防止」が重要なポイントとして見えてきた。属人思考が高い組織は、ハラスメントの発生件数が多いだけではなく、会社がハラスメントへの対応を怠りがちということも示された。属人思考の傾向が強い組織では、被害者側が会社への相談を回避する傾向もみられ、ハラスメントの潜在化にも影響している。

ハラスメントの発生と潜在化防止のために、こうした属人思考の組織風土に対して組織サーベイによる可視化やそのフィードバック、対話機会の創出、越境的な人材の活用、呼称の工夫などの組織的な対策を検討したい。組織風土の改善という難しいが本質的な課題の挑戦に際して、ひとつのヒントになれば幸いである。

執筆者紹介
小林 祐児
シンクタンク本部
上席主任研究員
小林 祐児
Yuji Kobayashi

上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。
NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年よりパーソル総合研究所。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行う。
専門分野は人的資源管理論・理論社会学。
著作に『罰ゲーム化する管理職』(集英社インターナショナル)、『リスキリングは経営課題』(光文社)、『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)、『残業学』(光文社)『転職学』(KADOKAWA)など多数。

パーソル総合研究所
ハラスメントを生む「属人思考」風土と改善策
公開日 2023/01/06
執筆者:シンクタンク本部 上席主任研究員 小林 祐児

パーソル総合研究所とは

パーソル総合研究所は、人と組織、労働市場に関してあらゆる視点から調査・研究を行っています。
その調査・研究結果から得られた知見を活かし、「人と組織の躍進」をミッションとして、お客様に伴走しながら課題解決のためのソリューションをご提案します。

https://rc.persol-group.co.jp/

そもそもどこからがパワハラなのか

「パワハラの判断基準とは?裁判例をもとにわかりやすく解説」

パワハラの判断基準は、大まかにいえば以下のように整理できます。

判断基準1:言動が、従業員を育てる目的で行われたものか、それとも嫌悪の感情や退職に追い込む目的によるものか。
判断基準2:言動の内容が業務の改善のために合理的なものか。
判断基準3:言動の内容に被害者に対する人格的な攻撃を含んでいるかどうか。

ただし、より正確には、厚生労働省のパワハラ指針によって以下の要素を考慮すべきことが定められています。

1.言動の目的
2.言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度
3.言動が行われた経緯や状況、
4.業種・業態
5.業務の内容・性質
6.言動の態様・頻度・継続性
7.労働者の属性や心身の状況
8.行為者との関係性

このように、厚生労働省によって判断要素が示されているものの、考慮すべき内容が非常に多く、判断は簡単ではありません。加えてパワハラの事案は多岐にわたるため、その都度、上記の基準を考慮して判断しなければなりません。

パワハラかどうかの判断は、社内でパワハラ被害の訴えがあった場合に、その言動をした加害者を処分するかどうかにもかかわってきます。

この記事を書いた弁護士
西川 暢春(にしかわ のぶはる)

咲くやこの花法律事務所 代表弁護士出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

弁護士法人咲くやこの花法律事務所
企業法務の法律相談サービス

どう対処すべきなのか

ひろゆき:人って大きい音が鳴った瞬間、身構えてアドレナリンが出るんですよ。つまり、不快な感情が湧いてくるんです。

 だから、納得いかない仕事をふられたり、嫌な思いをしたときには、机をバーンと叩くとか、ゴミ箱を蹴るとか、大きい音を出すのがいいと思います。それが続けば、上司は「こいつに命令するたびに不快が返ってくる」と、動物的に学習してくれるので。

 上司の中に、「不快の反射」をつくる。そのために、大きな音を立てて嫌がらせをするというのがいいんじゃないかなと思いますけど。

「パワハラされたとき」のたった1つの反撃方法
ダイヤモンド社書籍編集局
2022年10月12日

実際、これは、無理だなあ。。。
これができるなら、パワハラを受けてないと思う。。。

上司によって引き起こされた過労やうつに苦しむ社員が出た場合、一体どれだけの企業が現場検証や上司へのチェックを行っているのだろうか。過労で倒れるほどまで働かせた上司や、死を意識するほどまでうつ状態に追い込んだ上司の責任は問われたのだろうか?

もちろん、パワハラやセクハラに対する社会の目は、10年前20年前と比べれば、ずっと厳しくなっているだろう。

それでも、被害者側は強く訴えることのリスクを恐れ、うやむやになってしまうことは珍しくない。上司に何のお咎めもなく、何事もなかったかのように働くことができてしまうケースは未だにある。被害者が去れば、何もなかったかのように職場の日常が続く“コトの軽さ”には驚かざるを得ない。

被害者が組織を出るより前にやるべきこと
会社の被害者に対するアフターフォローとして、定期的な面談などを行うことはよくある。

しかし、本人にヒアリングしたところで、加害者との上下関係がある中で真実が語られるかは疑問だ。被害者が衰弱しきっているケースや、思い出すのもつらい状態であれば、聞き出すことそれ自体が被害者への精神的な負担になったりもする。

だからこそ、会社が表面的なことに止まらず覚悟を決めて事実確認と然るべき対応をしなければならない。「あなたにも悪い部分があったのでは?」と、被害者側を追及することなど言語道断だ。

まず被害者を守ること、その選択肢の一つとして、被害者自身が組織を出ることも大切だ。しかし、そうなる前に組織がしなければならないことは、被害者が安心して働けるような職場に作り変えることではないだろうか。

(中略)

直接この件に関係がない人からの風当たりの強さは、余計に被害者を苦しめる。過労やうつで、正常に働くことが困難になった時、追い込まれた被害者を「忍耐力のない人」「体が弱い人」などと決め付け、会社の変わり者として扱う人もいるだろう。

そうした「空気」がより一層、被害者を組織の外へ外へと追い込む。

しかし、すぐに組織にはびこる文化を変えることは難しくても、会社が変わろうとする意思をしっかりと持ち、態度で示していく。そうすることで、被害者が組織から出ることだけが唯一の選択肢のような状況を、少しは食い止めることができるのではないだろうか。

1人の退職者が出た時に、「また1人雇えばいいか」などと言っている場合ではない。社員は会社の部品ではないのだ。新しい人を入れたとしても、その人にまた同じように嫌な思いをさせてしまうだけだ。

どんなに素晴らしい理想や理念を掲げ、事業を推進していても、社内ではパワハラ・セクハラ常習犯を野放しにし、社員が不幸な組織に、未来はない。

境野今日子:1992年生まれ。株式会社bitgrit人事部長、株式会社地方のミカタのキャリアコンサルタントなどの職場で働くパラレルワーカー。新卒でNTT東日本に入社、その後、帝人を経て現職。就活や日系大企業での経験を通じて抱いた違和感をTwitterで発信し、共感を呼ぶ。

「いじめやパワハラで病んだとき、組織を出るのはなぜ被害者なの?」
LIFE INSIDER
境野今日子 [キャリアプロデューサー]
Nov. 07, 2019, 05:00 AM

サポートいただければ、嬉しいです。まずは本を1冊発行することを目標にしています。その夢の実現につかわせていただきます。どうぞ、よろしくお願いします。