韓流コンテンツから何を学べるのか?NiziU、BTSのヒットの裏側を大議論
今回のテーマは「韓流コンテンツから何を学べるのか?」
愛の不時着、梨泰院クラス、BLACKPINK、NiziU、パラサイトなど、韓国発のコンテンツが大ヒットを飛ばし、世界のエンタメ市場を席巻しています。
最近の3年間でネットフリックスと契約を結んだ韓国ドラマ制作会社の売上高を見ると、スタジオ・ドラゴンが約463億円を記録。
ドラマや映画のみならず、K-POPに韓国文化など、メジャーな娯楽として韓国コンテンツは広まっています。
なぜ韓流コンテンツはこんなにも強いのでしょうか?韓国コンテンツの制作者や専門家、また韓流コンテンツファンを交え、そのビジネス戦略を議論しました!
ゲストにはブシロードコンテンツCEOで大のK-POPファンの成田耕祐さん、
自粛期間中に韓国ドラマにハマり、すっかり魅了されたコンテンツのプロ、ワンメディアの明石ガクトさん、ソウル出身のタレントで国際文化社会学者のカン・ハンナさん。そして、お笑い芸人でNewsPicks「オフレコ」でもMCをつとめていらっしゃる吉村崇さん。「梨泰院クラス」が好きすぎる芸能人たちが集結したリモート座談会にて、長屋の会長役のセットに7万円をかけ、見事会長を演じきったというファンっぷり。
古坂さん曰く今回のテーマはNewspicksの様なネット番組であるから成り立つのだとか。韓国コンテンツを地上波でヒューチャーすると批判を集めがちなのでテレビでは難しいのだとか。
まず議論の前に押さえておきたいポイントとして韓流コンテンツの人気っぷり。
2020年上半期の人気ドラマランキングでは「愛の不時着」や「梨泰院クラス」「人間レッスン」などの韓流ドラマがランクイン。1位の「愛の不時着」ではレビュースコアサイトで4.58星という高評価。また、 最新のUS iTunesトップ10ではBTSやBLAKPINKなどKポップアーティストが目立ちます。
2018年のK-POP市場の推定総売上金額では、前年比56.4%増えて274.5億円となり、過去最高を記録しました。
急成長の理由の一つとして、韓国では韓国コンテンツ振興院という政府機関がコンテンツに投資し始めており、毎年約300億円規模の投資を実施しています。コンテンツ大国となることを目的として国をあげて取り組んでいます。
Netflixは2025年までに韓国コンテンツへ約1182億円を投資する見通しで、このうち、65%を占める約766億円を韓国ドラマに投入する見通しを発表しています。
このように、韓流コンテンツは世界的な広がりを見せていますが、果たして、どのようなビジネス戦略があるのでしょうか?
まず前半では韓流コンテンツはハリウッド映画の様にメジャーコンテンツとして日本に定着し続けるのか?というテーマ。
ゲストの意見はこのようになりました。
という回答に。
世界中で社会現象となったピコ太郎のプロデューサーでもある古坂さんは、音楽レベルは日本は全負けであり、韓国のクオリティに総合的に負けていると仰います。
カンさん、明石さん、成田さんはYES。
もはや韓流はブームではなく主流コンテンツである。
今は第三次ブームと言われていますが、韓流コンテンツはずっと生活に密着していたものだと気付かされた。定着しているという事実に私たちが気づいただけ。
カンさん曰く「韓国コンテンツ」というのは日本だけの様です。
また「韓流」という言葉さえ消えるんじゃないか?と成田さんは指摘します。それくらい韓流コンテンツは浸透しているということです。
K-POPの世界的ヒットの裏には、北欧プロデューサーの存在があるといいます。積極的に欧米の作曲家を採用しているのは、メロディーが欧米地域に馴染みやすくさせるため。
たとえばノルウェーの作曲家アンネ・ジュディス・ウィック。彼女は2008年からK-POPへの楽曲提供を始め、最初に参加したのは少女時代の日本デビュー曲にもなった“GENIE”だという。その後も少女時代の“I Got a Boy”(2013年)やRed Velvetの“Happiness”(2014年)TWICEの“Dance The Night Away”をはじめ、数多くのK-POPアーティストのヒット曲に参加しています。
Red Velvetの“Happiness”はどこかABBAのオマージュにも聞こえますよね。
コンテンツがそもそもグローバルスタンダードに作られていること以外にもSNS、NetflixやAmazonプライムなどグローバルプラットフォームから積極的に配信するなど、世界に届けるマーケティングが構築されています。
BTSが成し遂げた、アジア出身アーティスト初の全米アルバム・シングルチャート1位という快挙の裏側には、SNSを使ったファンとの密なコミュニケーション、若者の心情を表現した等身大の歌詞、マイケルジャクソンの集まりなのではないかと錯覚する程のダンスパフォーマンスに、世界中で愛されるように作られた楽曲の魅力。韓国コンテンツの定着は、この様にアーティストを含め製作陣の「熱」のたまものなのだと思います。
一方で、吉村さん、佐々木さんの答えは、NO。
吉村さんの「それどころではない」という意見はNOとはむしろ逆で、そもそも韓国は日本に定着なんて考えていないのだと。日本を踏み台として世界に飛び立つという意志がある。日本で培ったノウハウを身につけて世界に出ている。バラエティーも質が格段に上がっている。もはや日本のコンテンツ危機。
韓国のコンテンツ制作にかける研究の熱心さは並大抵のものではなく、日本で大ヒットの「半沢直樹」も「グランメゾン東京」も韓国コンテンツの要素をふんだんに使っており、大当たりが確実に出るように作られているのです。
佐々木さんは「愛の不時着」「梨泰院クラス」にハマったものの、ドラマに関してはその2本以外は続いていないそう。Netflixではヒットしたものの、テレビに比べると視聴率は2%程度。過大評価されていないか?という指摘が。
それに対しカンさんの意見は、韓流映画やドラマはこれからが定着のフェーズだという。吉村さんも絶賛する韓国のバラエティー番組や、韓国初の漫画も数が増えてくると、漫画が原作でファンになった人も増える。そうするとニッチがマスになる。
ここまで聞くと、音楽は既に定着、映画やドラマは今後定着する可能性が高いという結論になりましたが、後半では「韓流コンテンツから何を学べるのか?」ということで、コンテンツのプロたちに、日本が韓国から学ばなければいけないことを語っていただきました。
カンさんと明石さんは同じ意見に。(この話題は朝まで語れる!そうです笑)
韓国コンテンツには一生懸命な姿、前向きな気分になる。アーティストと製作陣の努力が伝わってくる。人を泣かせる。国を超えて共感され、感情移入されるのは作り手の汗と涙が詰まっているから。
明石さんが尊敬してやまないというNiziUのプロデューサー、J.Y.Parkさんの言葉を借りてその魅力を説明。韓国コンテンツにはストーリーがある。オーデションから全部見せるなどの広げ方やNetflixなどのプラットフォームから全世界同時配信。またコンテンツの広げ方がオープンであり、その裏側やIPを惜しげなく披露できる器の大きさ。そのオープンな態度が成果を生む。
日本はこのままではどんどんやせ細ってしまう、と日本のコンテンツ産業に対して危惧を示しています。
成田さんはご自身の経験を例えて、K-POPなど気になったコンテンツを調べるという行為が愛を産むといいます。その考察をしているファンの声がSNSを通して広まる。その「考察」をさせるようなファンの取り入れ方がうまい。まず韓国コンテンツには肖像権が厳しくないのでネットを通しての広がりが大きく早い。ファンの活動規制範囲を「広げ」、さらに「深く」する行為が日本は学ぶべきところなのです。
電化製品と同じ輸出品だと思ってもっと世界に広げるべきだという吉村さん。エンタメがちゃんとした職業と見なされていないのがおかしい。日本もエンタメを輸出品だと思ってバンバンやるべきだと主張します。
輸出するには英語も理解できるようにならなければいけないはず。成田さん曰く、コリアンタウンでさえも英語表記らしいです。グローバルスタンダードを意識した取り組みです。
佐々木さんの主張でキーワードとなるのは「普遍性と特殊性の融合」。
梨泰院クラスの魅力のひとつは、中卒の前科者セロイを中心に、元ヤクザ、トランスジェンダー、愛人の子、ソシオパスといった、社会からつまはじきにされやすい登場人物が仲間として、行く手を阻む悪の大企業・長家を打倒していくというサクセスストーリーかつ復讐劇にあります。
また、現代的なジェンダー感覚の王道の中の特殊な要素も忘れてはなりません。韓流ドラマって「入れ替わり」「記憶喪失」「貧富の差の極端な恋愛」な設定が王道だと思っている人も少なくはないが、今はまったく異なる作風。セロイのように男気溢れる人物に、王道で好まれるストーリーと現代の多様性の融合が韓流ドラマの魅力。一方、最近の日本のドラマには普遍性が欠けているものが多い。韓国コンテンツのような普遍性と特殊性の融合が、人間の欲望に刺激するものがあるのではないか?という意見でした。
そして古坂さんの選ぶキングオブコメントは
という、明石さんのコメントに。
日本のエンタメは危機と思った方がいい。日本の芸能人の収入は下がっているそうなのですが、韓国は逆。日本のエンタメは危機に晒されていると思って、本気で広げていく必要があるといいます。
キングオブ奥井共感コメントは、カンさんの
に決めさせていただきました。
オーディション番組でご存知の通り、韓国は競争が激しい。例えばアイドルグループが500組居たとしたら、10〜20程しか生き残りません。そんな世界では研究に研究を重ね、努力するしか勝ち抜けないのです。
日本のコンテンツは競争する姿を見せないのが美学としてあるようで、努力を見せない努力がある様で、それも美しいと思うのですが、その努力の過程を見せる、すなわちストーリーを全部見せることも感情移入させる戦略なのです。
私もこのnoteを書かせていただいているのは「これだけ調べた上で、MCとして挑んでるんです!」って努力の過程を見せるためだったりもします。
K-POPアーティストのように、いつも謙虚に、前向きに、努力を怠らない人間になろうとこのテーマを通して改めて学び直しました。
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