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nana_hirokawa
2022年11月12日 23:19
◇ 荒木は腕組みしながら封筒を睨み付ける。一体何を送ってきたのだろうか。蛍光灯に透かしてみるが、見えるはずもない。中を確認しよう。いや、しかし…。手をかけては辞め、を繰り返した。 わざわざこの時間を指定し直接手に取らせたのは、別れる決定的な物を送ってきたからではないだろうか。そう思うと中々開ける覚悟が決まらない。 一緒に暮らしている頃は何かと仕事を優先しては、よく怒られたものだっ
2022年11月10日 14:38
インターホンが鳴った。 既に日付を越えてから二時間は過ぎている。こんな時間に誰が来たのかと怪訝な顔で画面を覗きこんだ。 そこにはにっこりと笑みを浮かべる見知らぬ男が立っていた。 …部屋を間違えたのか。踵を返しソファーにどかりと腰をおろす。 もう一度チャイムが鳴った。画面の中の男は、相変わらず笑みを絶やさずに立っている。 間違いに気づいていないのだろうか。どちらにせよ、このままチャイ
2021年9月23日 15:47
夜風に誘われるようにして外へ出た。 周辺の民家は寝静まっており、世界が自分だけになったかのような錯覚に浸る。(気持ちがいい、夢の中みたいだ) そんな心地よさも、時折通るタクシーに現実へと引き戻される。荒くガスを吐き散らしていく後ろ姿から、空へと視線を移す。0.1ミリのレンズが溺れた夜は、ひどく色褪せてみえる。 ため息をついて、また歩きだした。(いいね、夜。朝日が昇れば消えられる
2021年8月20日 13:47
私は脚をよく誉められる。世に言う"美脚"の条件を全てクリアしているからだ。雪のように白い肌に、無駄のない筋肉。細すぎず太すぎない。惚れ惚れするような脚だ。今日も私は惜し気もなく素足をさらす。美しい脚は常に浴びるような視線を受ける。しかし、私は動けない。自由に歩くことは出来ないし、よい気分だからとスキップをすることもできない。一度でいいから自分の好きな服を着て、外に出たい。こんなと