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【注文住宅ルポ 其の一】インテリアへの目覚め。床はバーナーで炙れない

家づくりはドラマ

工務店探しをしているときに、猫のために家を建てた独身男性のブログを読んだ。

非常に面白い一方、注文住宅で発生する多くのトラブルを実感する内容だった。

かなりのボリュームで、施主の要望が一つずつ叶えられて最終的に家が建つときには映画1本見たかのような達成感があった。

家が建ったときの完成写真をアップする人は多いが、あまりそこに至るまでのプロセスを公開する人は少ない。

Twitterで途中経過を報告する人はいるが、ぶつ切りなので初期の段階からずっとTwitterを追っている古参フォロワーしか全貌はつかめない。

1軒の家が建つまでに想像もできないほどのドラマがあると思っている。

金額が大きい分決断が大変で、自分一人で動くものではないからだ。

家族と相談し本当に家が必要なのか考える。ローンの話が出てきて初めて自分の老後のライフプランまで考える人は多いだろう。

家を購入するということは自分の人生と向き合うこと、折り合いをつけることに他ならない。そこにドラマが無いわけが無い。

私の物語にドラマがあるかどうかは読者に委ねるが、忘備録として書いてみたい。

インテリアとの出会い

先のブログでは賃貸に住んでいる状態から、猫のために家を建てようと思い立ち、会社探しが始まるところからとなっている。

私はもう少し前から書きたい。

というのも注文をやる前からインテリアは趣味として1,2を争うほど好きだった。注文をやるから勉強を始めたわけではない。これは多くの家アカと違うところだと思う。

いつからか?

それは中学生時代にまで遡る。きっかけはぼんやりとではなく明確にある。

それがこれ。

雑誌のポパイ。これは父が持っていた本。父はインテリアにもそこそこ興味があったようだ。

この本を開いた時に「これは!」と中学生の時に思った。

内容は今の書店にあるインテリア雑誌やポパイのインテリア特集とは異なり、DIYをゴリゴリにやっている人たちのルームツアーだった。

表紙と巻頭数ページは東大駒場寮(現在は取り壊されて存在しない)に住む東大生がDIYで作ったぶっ飛びルームが紹介される。

右下の天井に伸ばした竹というアイデアに脱帽。

左の人は賃貸なのにディズニー並みの完成度で床、壁、天井をやってしまっている。(この家を見たからか、大学編では同じようなことに手を付けてしまった。この話はまた次の回で)

ちなみに右は若かりし頃のキャンドルジュン。この人もだいぶやばい家に住んでいる。

風呂を潰して庭にしてしまった人。風呂って潰していいんだという価値観を学んだ。

どの人も本当に自分が住みたい家、暮らし方を実現していた。
今書店でポパイのインテリア特集を見るとこんなゴリゴリのDIYの家は出てこない。

この号は1998年8月の発刊。今見ても色あせない自分の中でのバイブルとして大切に所持している。

単に広い家が素晴らしい。そういうことではなくて、自分の好きを突き詰めた空間こそ最高の家だと思った。

この時からいい家に住みたいという欲求を持ち続け、今もその火は消えていない。

それから授業中に自室をどうやったらかっこよくできるか考え、我流でノートに図面(展開図とパース)を書くようになった。

たった6畳の部屋をどれだけかっこよくできるかを日々考えていた。

当時から変わらないのが、好きなテーマはヴィンテージテイストでアメリカンな要素が入っているもの。渋くてノスタルジーを感じる空間がいい。

先のページに出てきたような塗り壁や古材の風合い、自然界にある柔らかな曲線が好みになった。

これは家づくりでものちのち影響してくる。

高校の時は友人二人で当時使っていたスチールでできたロフトベッドをリフォームした。

まさにこんな感じの色合いだったが、シルバーの冷たい感じが嫌で麻ひもを巻くことにした。

四本足に数ミリの麻ひもを巻いたのだがこれが大変。二人で2時間はかかった。(実はこの友達とは今でも仲良くしていて、周りでは唯一注文を建てている。建ててからお邪魔したが、高気密高断熱で無垢材と塗り壁が標準の工務店で建てるという全く同じ考えで家を建ててたことには驚いた。この時から価値観が似てたのだと思う)

他にはポパイを見ていて床の重要性を当時から気づいていたので、シートでできた自室のフローリングが嫌だった。

どうにかしようと思い「自分の部屋の床だけバーナーで炙っていい?」と親に聞いたが却下された。(実家は積水の一軒家)

なので床はいじっていない。お金も無いし実家なのでやれることは限られていた。

そこではまったのがインテリア雑誌を読み漁ること。お小遣いをもらってはブックオフに行き、インテリア雑誌のコーナーに行く。

いいなと思った本を10冊ぐらい家に置き、穴が開くぐらい見ていた。

いい意匠とは何なのか、悪くはないけどなんかしょぼい印象になるのは何が原因なのか自分なりに考えて部屋の写真を眺めていた。

この時間がその後のインテリアに対する見方や今の注文住宅に活きている。

家のことをたくさんツイートしたり長文の記事を書くと「なんでこんなに頑張ってるの?他にやることないの?」「素人がプロに意見するな」と嘲笑する人もいた。

私は家を建てるために家の勉強をしているのではなく、今まで20年近く好きで続けてきた趣味の延長をしているだけである。楽しくて好きだから没頭してるのであって、家を建てるのは通過点でしかない。いい家を建てるのが目的ではなくインテリア、家を追求することが目的。

昼光色やシーリングライトを使ったら無粋になる、落ち着いた空間にするのは不可能ということ、床材がシートフローリングだと味もなくて空間を損ねることは中学生の時から考えていた。注文住宅やるために昨日今日考え始めたテーマではない。

設計士は建物のプロであり、インテリアや照明には疎い人が多い。間取りは作れるけど照明はそこまで、インテリアはプロと言えるほどじゃないという設計士の方が多い。かといってインテリアコーディネーターなら完璧かというとその人のセンスによる部分があり、知識があってもセンスが悪ければいい提案はできない。実際、コーディネーターと合わなかったから自分でクロスや床材を選んだという人も見かける。

だからこそ自分みたいにインテリアが大好きで中学生の時から間接照明だけで生活してきた人間にしか提供できない情報があると思っている。好きは上手を上回る。

つづく

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