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いち坂元裕二フリークによる「クレイジークルーズ」感想

Netflixオリジナル映画「クレイジークルーズ」、やっと見ました。


公開後、賛否両論色々な評判を聞いていたのもあって早く見たいと思っていたのですが、色々バタバタとしていて今更の視聴となりました。

好きなドラマは?と聞かれたら必ず坂元作品をあげている、坂元裕二脚本フリークのうちの1人なので、ファンとして率直に思ったことを書きたいと思います。

「クレイジークルーズ」概要


「クレイジークルーズ」はNetflixオリジナル映画として公開されたもの。
Netflixは坂元さんと5年契約を結んでいて、本作はその1作目にあたるものになります。

舞台は48日間の世界クルーズを行う豪華客船。
撮影はコロナの影響を受けて地上でのセット撮影だったそうですが、当初は本物の客船での撮影を予定していたそうですし、セットにしても煌びやかで「さっすがNetflix!」と資金力に思いを馳せるなどしました。

パーティ衣装に身を包む主演の吉沢亮さん・宮崎あおいさんも素敵でした。いや〜〜画が強いッッ!

雑感


大枠のストーリーについては、個人的には普通に楽しめるものでした。

ミステリーとしての意外性もありましたし、ラブロマンスとしても素敵。
ドラマほどの濃厚さはありませんが、映画という短い尺で、かつ比較的坂元作品としては主要な登場人物も多い中でそれぞれのキャラクター性が描かれていて、飽きることなく見終わりました。

また、「坂元作品らしい尖った台詞が少なかった」という声をよく聞いていたのですが、確かに「カルテット」や「花束みたいな声をした」のような「ザ!坂元作品」という脳の言語中枢の性感帯を触られるようなコミカルな会話劇的なセリフは多くはなかった印象であるものの、

「いい人舐めんな!って思います」

「私にとっても”恋をしかけた”は”恋にした”と同じだからです」

性感帯お触りというより1の力でダメージ100みたいな、なんというか、感情や人生の思い出がぐわっと溢れちゃうような台詞が散りばめられていたのでこれも個人的には満足でした。
(むしろ近年の作品「初恋の悪魔」や「怪物」ってそういう傾向ある気がしませんか。)


演出について


一方で、おそらくすでに話題とされているところになると思いますが、気になった点もいくつかありました。

例えば最後のキスシーン、千弦(宮崎あおい)と優(吉沢亮)がプールサイドに腰掛けてお互いからキスし合うという場面。

ここまでは良かったのですが、最後いきなりワープしてプールとモニターが映る、「画的にはベスト」な場所でもう一度キスシーン。

そこに至る過程の省略具合と、「ラ・ラ・ランド」の「結ばれた場合の妄想」のワンシーンですか?というほどの”画の綺麗”さに「あ、ここで撮りたかったんだろうな…」と流石に素人ながらも思ってしまいました。意図があったらすみません。


また、千弦と優が結ばれるシーン。
2人が抱き合った時に優の手からトイレットペーパーがこぼれ落ちた時、「あ、ここでトイレットペーパーが転がって紙が出たらわざとらしいな〜(まあ、あり得る状況ではあるけど)」と思いながら見ていたのですが転がることもなく。
過剰な演出が入っていないことに安心したも束の間、天井から大量のトイレットペーパーが花びらや紙吹雪と共に舞い降りてきたので目を疑いました、あれは何???????
(しかも、そのあとそのトイレットペーパーをスタッフが片付けているという地味にリアルなシーンが映るも何?????流石にギャグ要素ですよね???)

ゲラゲラ笑いながら見れたのでいいのですが、いやそれにしてもあそこはそういうシーンじゃなかった!!!!
トイレットペーパー演出は、思い返しても必要だったのか疑問です。


と、脚本というよりかは演出面で「?」と思わざるを得ないシーンがちらほらありました。


気になった台詞



そんな本作、

殺人事件が起きても豪華客船での旅を続行してもらわなければ困る「ワケありな人たち」が登場するように、煌びやかな世界が、ある種”虚構”のように描かれているなと感じました。

普通の生活を送る千弦の
「私なりに人生楽しんでるつもりなんですけどね」
という台詞や、

俳優の井吹の
「予算なんて関係ない。僕はアート作品に出たいんだ」
という台詞も印象的。

”今回の『クレイジークルーズ』に関しては、テレビドラマの制作環境も含め世の中があまりにも「清貧」みたいな方向になっているので、その抵抗として少しでも煌びやかな世界を書いてみたいと思って”

今回の製作にあたってインタビューで坂元さんはこのように発言されています。

でもなんとなく、坂元裕二作品で今まで心に残ってきたシーンは、「町の蕎麦屋」とか「家の中」とか、そういう”普通”の中に多かった気がしてしまう(もっとも、今までの舞台が基本的にはそういう身近な場所だったということだと思いますが)。

繰り返しますが、本作のストーリーも台詞回しも個人的にはあまりネガティブな印象はありません。
脚本家は異なりますが「コンフィデンスマンJP」も好きですし、ああいう煌びやかで非現実的な設定も大好きです。

でも、一坂元ファンとしては、今までの作品には豪華なセットや、”絵的インパクト”はなかったかもしれませんが、
そうじゃなくとも「私たちなりに作品を楽しんでいましたし(というか、だからこそいいんです!)、予算なんて関係ないです!」

と、登場人物と同じような言葉を発したくなりもしました。


(これは憶測なので怒られてしまうかもしれませんが、仮に企画サイドに「せっかくだし、もっと豪華なのやってみませんか?」と持ちかけた方がいるのであれば、上記の作中の台詞は坂元さんのアイロニーとさえ思ってしまうのは……さすがに考えすぎでしょうか)


次回作も待ちつつ、わたしは「片思い世界」を楽しみにしています!!!



▼インタビューはこちら

https://about.netflix.com/ja/news/in-love-and-deep-water-screenwriter-yuji-sakamoto-interview



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