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微炭酸の夏

サイダーのように
言葉が湧き上がる

という映画を観た。

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とても不思議な感覚で、
正直一つひとつの感想を述べようと思うとマイナスな点ばかりが思い浮かぶ。
(ちゃんと注はあったけど落書きは良くないんじゃない?とか、個人的にラブストーリーの展開が苦手とか)(じゃあ見るな)
だけど視聴後の感想は
「観てよかった」
という一言に尽きる。


明確に言えるのは、音が良かったということだろうか。
爽やかな音遣いであった。

特に水のような音、おそらくスチールパンをそこで使うのかと驚いたシーンがあった。
すごく意外だった。
あのシーンは普通、ウィンドチャイムやグロッケンを使うと思う。
光の輝きではなく水の煌めきを連想させるような音が、より作品の爽やかさを強調したと感じる。

また、最後のシーンの曲がとてもよかった。
誰が歌っていたのだろうか、
初々しくカラフルなこの作品とは打って変わって
落ち着いた、心にすっと入ってくる声で映像に見入ることが出来た。
耳に残る声というのも魅力的だと思うが、
違和感なく映像に集中させる歌声はまた異なった役割としてすごく強い武器だと思う。
(調べたら大貫妙子さんという方でした。私が若輩者で存じ上げなかったが67歳のキャリアを積み上げた方ということですごく納得がいった。どうぶつの森の曲だけ聴いたことあります。)

エンディングの曲もとても素敵だった。
never young beachさんのことは(も)知らなかったが、とても素敵なサウンドだと思う。
歌詞も映画を観た後に聴くとすごく理解が深まるものになっていて、主題歌に相応しい。


メインキャストは声優さんではなかったが、
チェリーとスマイルの声に相応しかったと思う。
杉咲花ちゃんの声は本当にキラキラしていて、まさにスマイルだった。高級な宝石のようなギラギラではなく、光を反射させたラムネの瓶のようなキラキラ感。チェリー役の市川染五郎さんは歌舞伎以外の演技初挑戦とは思えないほど自然だった。本当に居そう。
藤山さん役の山寺宏一さんはもちろん素晴らしい し… というか脇を固める声優陣が豪華すぎる… 特別詳しくない私でも知っている名前ばかり… えぐい



俳句を題材にしていることもあり、
とても言葉を大切にした作品だったように思う。
当たり前だが俳句の描き方が丁寧であった。
落書きのように書くところでもSNSでも、きちんと改行や表記の仕方(漢字、ひらがな…)を気にしていて好感が持てた。(私は特別俳句に詳しい訳ではないので、気になる点がある人もいるのかもしれないが…)
詳しくはは言わないが、一つだけ改行を改めて表記される句がある。語感が変わって捉えられるので心が弾む。個人的に1番好きなシーンかもしれない。
近いうちに俳句や季語について改めて勉強したい。

また、SNSをテーマにしたものは、誹謗中傷など悪い側面を描くことが多いが、この作品は登場人物が自分のコンプレックスを気にするシーンはあるものの他者の悪口を言うシーンがないのが気に入った点だ。スマイルがいろんなことを「かわいい」と丸ごと肯定してくれる。
優しい世界だ。
あなたのコンプレックスを気にしている人はいないよ、というメッセージにも受け取れた。
私はスマイルと同じように、
出っ歯で八重歯でまさに今矯正治療をしている。
元々そんなに気にしていなかったのだが、高校生の頃から友だちとの写真を見て自分の歯が嫌になり始めた。そしてコロナのマスク生活でこの方が自分ってかわいい、と感じ矯正治療を開始した。
作品を見ていて、誰よりもスマイルの気持ちがわかるんじゃないか、と錯覚した。
自分で言うのもなんだが、私はいつもニコニコしている。笑顔がチャームポイント。そんな自分が好きだ。
でもふとした時に、ああ笑った顔可愛くないなと感じる。歯のせいで。そんな自分が嫌いだ。
スマイルもきっと、出っ歯は嫌いだけど自分の笑顔は好きなんだと思う。スマイルから出てくる「かわいい」は全部本心なんだと思う。
スマイルの全てを肯定し続ける姿が、周りを明るくし、肯定の言葉を生み出す連鎖を作っているのだと感じた。
私はスマイルにはなれないけど、私らしく生きていきたい。


言葉が凶器になる面ばかりが強調される世の中だけど、
私は言葉が好きで、
同じように言葉を大切にしている人が、
言葉に救われている人がこの世の中にはたくさんいるのだ、と感じることが出来た。

表現って素敵だ。


言葉を大切にしながら、
絵作りや音もかなりこだわった作品に敬意を表して。


サイダーの
ように言葉が
湧き上がる

素敵な作品でした。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
Nana

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ケーキが食べたいです。今はモンブランが食べたい気分。