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「なぜこんな簡単なことができないのか」と部下を責めていませんか

先日、マネジメントについて話をしていて「自分の(頭の)回転速度に部下を合わせようとする」というお話をしました。マネージャーとして部下の指導をしながらチームのアウトプットを出す。そうした責任を負っているマネージャーからすると「どうして自分と同じような速度で部下は習得できないのか」とイライラすることは多いでしょう。

早く理解させるために説明の仕方を変えたり、チェックを増やしたりする。時には厳しい言葉で奮起させようとする。それでも期待通りのスピードでアウトプットが出てこない。寛容さを発揮して「なんでも質問してくださいね」と言っても質問してこない。そうなると、なんでこんな簡単なこともできないのか。そんな風に思ってしまうわけです。

とはいえ、そんなマネージャー自身でも、生活全般を振り返ると、苦手なものもたくさんあるわけですよね。例えば私は、車の運転が苦手で、いつまでたってもバック駐車ができませんし、ゴルフも4年もスクールに通ってるにもかかわらず、毎回同じ改善指導を受けます。もし「なんでこんな簡単なこともできないのか」というテンションで指導されると、委縮してしまって逃げ出すに間違いありません。たまたま車の運転やゴルフの習熟度で判断されない仕事をしているから、マネージャーとして指導する側に回れているだけなわけですね。

では、どうやって指導すればいいのか、マネージャーである自分の回転速度と、部下の回転速度は違う。それをまずは肝に銘じる必要があります。

こちらの本が非常にためになりましたので、引用しながらポイントを紹介していきます。

自分にとって簡単なことは誰にでも簡単だという前提で仕事を進める

例えば仕事の段取りを組む。これは人により得意不得意のばらつきが大きい気がします。2手先を見据える、後続タスクをイメージしながら段取りを組む。自然にできる人もいますが、どうしても苦手な人もいるわけですね。また、その業界や専門領域なりの言葉がわからない、定石の発想法に慣れていない、そんな背景もあったりします。特に教える側の人が、その業務を何年もやっていると、そうしたハードルが見えなくなっていることが多いです。そうでなくても、自分が順調に習熟できたので、説明もそのイメージで簡素化してしまう罠もあります。

それが、教えられた側には「この分量の説明で理解できないといけないのか」というプレッシャーになってしまうわけです。理解できないのは自分の能力が無いせいかのか?と、質問を控える心理に陥るわけです。さらに、その説明を聞いて行動に移してもうまく結果につながらないとなると、「こんな簡単なこともできない自分」という劣等感を生み出すことになります。

この劣等感というのが本当に曲者で、一度そのような心境に陥ると委縮して余計にうまく体が動かなくなるわけですね。ゴルフの例を挙げると、初めてラウンドした時に他の人についていくのが精いっぱいで、周りに委縮して余計ミスしてしまう・・そんな体験をした方も多いのではないでしょうか。私も、こんな気分になるならゴルフを止めると100回以上は思いました。この心境が仕事上で発生すると想像すると恐怖でしかありません。

じっくり丁寧に教えれば伝わると思い込んでいる

では、丁寧に説明すればいいのか。ここにも罠があります。教える側にとって、自分の知見の披露する舞台になってしまうことがあります。自分ができることを教える、とても自尊心が満たされる魅惑的なシチュエーションです。成果を出すために教えるはずが、滔々と知見を披露して、自尊心を満たす場所に変わってしまう。私自身も、教えている時に、育成よりも自分のエゴが勝った瞬間が分かります。いつも反省するところですね。

そうしたティーチングスピーチは、相手からすると情報の洪水で、ポイントを押さえるのが余計に難しくなります。相手がどの程度の情報量を受け取れるのか、その情報を受け取る準備が整っているのか。手間を惜しまず相手起点で見極めをする。これは教える側のエゴを押さえるという点で、なかなか難しいですが重要なポイントです。

こんな状況で教えられる側はどうなるか。教える側が満足気に語るスピーチを聞いて分かったような気にはなるし、やる気にもなるが、自分にとってどの情報が次の一手として必要なのか、情報の洪水の中から拾い上げるのは容易なことではありません。(それができるなら、はじめからできているはず)その結果、あまり進歩できない。となると教える側からすると「あんなに必要な情報を提供したのに、なんでできないのか?」となってしまうわけです。

結局、自分の回転速度に合わせようとしてもサステナブルでない

とはいえ、マネージャーの立場からすると、悩ましいところですよね。チームのリーダーとしてアウトプットを上げていく責任を負っていると、部下ができない分を他の部下に振り向けたり、自分がかぶったりする。私自身もこのスタイルで長いことやってきましたが、結局、「これはサステナブルではないな」と思って方向転換しました。なぜなら、できない部下はより委縮してしまって職場を去ったり、優秀な部下は不公平感にさいなまれる。(その結果離職する可能性もあります)自分がかぶるにも心理的に限界が来ます。人手が余っていて離職する人が少ない職場であれば、それでも続くとは思いますが、どちらかというとマネージャー自身がストレスで感情を爆発させるか、疲弊するか、そんな負の結果を招く気がします。

各人が自己信頼を持てる場面を作る

長期的な視点を持った時には、チームメンバーが委縮せずに自分のペースで業務を習得する環境を作っていった方が間違いなくメリットがあります。一つの業務の習熟に時間がかかっていたとしても、委縮さえしなければ、他の業務で輝くチャンスがあるわけです。自分の能力に対する「自己信頼」があれば、苦手な業務に前向きになるエネルギーが湧いてきます。

だからこそ、業務の割り振りは非常に大事です。各メンバーの経験や得意領域を見極めて、自己信頼を持てる場面を必ず作る。苦手なタスクのせいで自己不振を持たないような仕掛けを作っていくことが非常に大事です。業務の割り振りにそのような視点を持ち込むと、マネージャーにとっても心理的な負担が減りますよね。他の業務で生き生きしている姿が見えるとホッとするでしょうし、そのエネルギーを使って続けていけば習熟度があがるタイミングが必ず来ます。なにより自分の回転速度に部下を合わせようとしてストレスを抱えるよりは、プレッシャーが格段に減るはずですし、"育成"にかける時間も減りますよね。まさに急がば回れということかと思います。

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