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キャリアプランの危うさについて

ビジネス界の共通認識として、「なりたい自分をイメージする」「キャリアプランを考える」ことがすなわち善とされています。私個人はその危うさを感じる事例が多く、キャリアプランは取り扱い注意だなと思うことがふえてきました。メタ認知ができて、客観的に自己評価できる成熟した人ならいいのですが、まだ自信が確立してない人の方にキャリアプランが求められるケースが多いようなので尚更です。

キャリアに悩んでいる人ほど、今の自分に自信がないし、それにもともと持っている強いコンプレックスが掛け合わされると、自分の強みと真逆のベクトルのキャリアを目指すケースがよくあります。

例えば、一つの事を深掘りして極めるのが得意なのに、マルチタスクや複雑な段取りが必要な仕事をやりたがる。適応能力が高くてどんな環境でも器用に小回りが効くリアクティブさが良さなのに、計画性や先読み力が求められるプロジェクトマネージャーになろうとする。このように、その人の資質と真逆の資質が求められる役割をキャリアプランの中心に据えてしまうのはかなり危険です。

とはいえ、本人がコンプレックスを解消するために「自分のやりたいことはコレ!」と主張してくるので、「キャリアプランを持つことは善」と思っている上司としては、やる気があるならやらせてみよう、となってしまう。人手不足な職場だと尚更、希望的観測に則って仕事を割り当ててしまう事がよくあります。

でも、いざ、仕事をやり始めるとなかなか上手くいかず、得意な人が慣れるのに必要な期間を超えても上手く行かないと、上司や周囲の反応も変わってきますし、何より本人が有能感を感じる機会が減ってしまいます。残念ながら、やる気があれば、本来持ってない資質を補えるわけではないのですね…

この有能感ていうのはとっても大事で、これが長期間感じられないと仕事のパフォーマンスにも影響してきます。萎縮して悪いサイクルに入ってしまうのです。ましてや「この仕事ができたら、自分に自信が持てるはず」「コンプレックスを解消できるかも」という気持ちで手を挙げていますので、それが達成できないとますます自己否定が強化されてしまうのです。

このゾーンまでくるとキャリアプランどころではなく、今の時点の仕事が上手くいきませんので、メンタルをやられたり退職することにもなりかねません。

これを防ぐために、私のチームではストレングスファインダーを使っているのですが、それはまたの機会に書くとして、いずれにしても有益なキャリアプランを作るとしたら、様々な役割に求められる資質の理解が不可欠です。それを知らずにイメージでキャリアプランを作って真面目に取り組んでしまうと大火傷をする可能性があるのです。

なので、美しいキャリアプランを書くことにこだわらず、その人の強みを言語化して、その延長線上にあるものを近い時間軸で設定するのがいいと思ってます。とはいえ、強い資質というのは本人が当たり前にやっている行動様式ですので、本人は気がつかないことが往々にしてあります。ただ、強みであればあるほど貢献が周りにも見えていきますので、むしろ周囲から「これは〇〇さんにできそう」と言われるようになってきます。褒められたり感謝されることも増えるでしょう。そうやって他人の力を借りながら自分の輪郭が浮き出てくるのを待つ、というアプローチでもいいのじゃないでしょうか。

いろんな体験をしながら自分を発見して、時間をかけて将来像の輪郭が見えるのを楽しめるといいですね。もしすとんと納得いく像が見えたら、そこから意志をもって目指していく、というスタンスで構わないと思います。そもそもキャリアはゴールを目指すようなものではないし、キャリアプランは長きにわたり充実感をもって働き続けるために作るものですから。

実は自分も若手の頃はキャリアプランが作れず、大変なプレッシャーを感じてきたクチなので、同じような方の参考になれば嬉しいです。

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