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1543 『昭和元禄・落語心中』

◇1543 『昭和元禄・落語心中』 >雲田はるこ/講談社(2017.02.27)

久しぶりの漫画本。2巻が発売されたころに読み始めたのだが、断続的に読んでいるとよくわからなくなってしまい、6巻目くらいから中断してしまっていた。この度10巻が発売され堂々完結とのことなので、もう一度最初から通読。その世界観と複雑な構成に改めて引きずり込まれてしまった。

物語は刑務所から出所した元チンピラが、昭和最後の落語の名人と呼ばれる八雲師匠のところへ弟子入りするところから始まる。元チンピラは「与太郎」という名前を与えられ、八雲師匠の家で居候を始める。そこで一緒に暮らすのは、八雲の友人で若くして亡くなってしまった助六の娘・小夏。

3人の間の微妙な距離感がうまく描かれており、ハラハラしながら読み進めると、与太郎が大失敗をしでかしてしまう。そこで八雲から与えられた試練が「落語の生き延びる道を作る」という難しい課題。そこから物語は、八雲の過去へと飛ぶ。

八雲はかつて菊比古と名乗っており、兄弟弟子の助六とともに落語会の若手ホープとして活躍。そこから紆余曲折があり、助六が事故死してしまう。(詳細は是非作品を読んでみてください) 残された助六の娘を引き取る菊比古。。。舞台は再び現代へ。

このような時代設定が過去へ飛び、さらに現代に戻ってくるような複雑な物語は嫌いではない。過去の挿話が後々への大きな伏線となっており、物語の重厚さを増している。しかしながら、根底にあるのは落語への愛であり、他人への気遣い。様々な人のやさしさが錯綜する、ハートウォーミングな物語でもある。

暗い話になってもおかしくないようなストーリーなのだが、なんとなく明るく感じてしまうのは与太郎の一本気だが情に厚い性格や、助六のだらしないが落語が好きでたまらない気楽さから醸し出されるものなのであろうか。決して多くはない登場人物だが、それぞれの個性がきちんと描かれており、非常に読み応えのある作品だった。

ラスト近くでは意味深な種明かしともいえないちょっとした謎解きで終わっている。まぁ普通にストーリーを追っている読者であれば誰もが、もしかして、と思った疑問ではあろうが。それも謎は謎のまま終わらせているのが憎い演出である。

最近、海外の方とお話する機会が何度かあるのだが、雑談の話題に詰まったときに、日本のことをもっと話したいと感じるようになった。日本が誇る古典文化といえば、茶道、相撲、歌舞伎などだが、自分にとってはなかなか興味がわかない分野。しかしながら、落語であれば、もともと漫才などのお笑い好きなので、趣味にできるかもしれない。

まぁやりたいことがたくさんあるので、なかなかそこまで手を出せないが、英語で落語の小ネタなんかが披露出来たら格好いいのだろうなぁ。


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