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歴史小説「Two of Us」第2章 J-2

~細川忠興父子&ガラシャ珠子夫妻の生涯~
第2章 明智珠子のお輿入れ~本能寺の変

J-2

 己れ細川藤孝は、完成間近の〈安土城〉ではなく、同じく琵琶湖の湖畔に在る〈坂本城〉へと、行き先を変えた。

 織田信長様が直々に、明智十兵衛光秀どのの〈坂本城〉へお越しになると、長岡の城へ伝達が参ったのだ。

 信長様も、珠子どのに直に会見しておきたいのだろう。
 幼い頃から利発で好奇心旺盛な面は変わらぬが、妙齢に成るとさらに、たおやかな情感を表せる女性に成長され『そろそろ嫁には行かんのか❔』と、あまたの若い嫡男を持つ大名達の催促が、引きも切らない。

 だが、当の珠子どのは、頓着なしである。
 色気づくというより、軍記物を読んだり薬草の研究に勤しんだりなど、個人で楽しみ没頭できる事に夢中なのだそうだ。
 先日の福知山城では、鉄砲玉の硝煙まみれの小袖姿だったが、本日も、城壁の銃撃穴から近江楽市楽座の町並みを覗いていたりは、しまいか❓

 いやいや。信長様ならば、そんな珠子どのを個性的で自由闊達と、喜び褒めちぎるかもしれない。

 あの妹様を連れ歩くのが、たいそうお好きだった信長様。
 お市の方の勇ましい強さは、乱世に咲く美しい大輪の牡丹のようであるが、、、さて、珠子どのは花に例えると、何だろうか。。。❓

 珠子どのは、南蛮のイスパニョーラの言葉を学んでいるそうだが、、、さしずめ、洋蘭の花であるか❓
 お市の方に比べると、まだ初々しい清廉潔白さが目立つゆえ、白い胡蝶蘭なのかもしれない。
 そう云えば十兵衛どのは、白い百合の花をよく飾っていると仰ってたな。。。


 そんなこんな想いを巡らせていると、気が付けば馬上でもう近江の六角殿の領地に突入していた。
 まもなくだ。坂本城まで。

肖像画や軍記物語に登場する
明智玉(細川ガラシャ珠子)は常に
白い百合の花を添えて描かれている


 まるでお伽噺の『竜宮城』みたいだ。
 琵琶湖の湖中に浮かんでいる。

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