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【連載10】結婚したくてしょーがない20代女から、大恋愛を経て、結婚なんてどーでもいい30代女になったはなし

泣きながら歩く私を見て目を丸くした元恋人と、そのまま一緒にご飯を食べた。指一本ふれないまま、別れた。これをきっかけに連絡をとるようになり、新しいほうと付き合いながら元恋人が精神安定剤といういびつな関係になった。

この頃はとにかく私は自分を責めていた。二人から選べない自分。元恋人を傷つけた自分。元恋人の結婚しよう、の言葉を待てなかった自分。引き出せなかった自分。きっぱり別れて新しい彼に向き合えない自分。責めて責めて、ずっと落ち込んでいた。

でも、少し強引なペースに巻き込まれて新しい彼に会い、体の関係を持つと、頭の中は真っ白になって、全部忘れた。幸福だった。自分でわかるくらい肌が上気して、妙な色気が出て、ブラック企業の冷たい男たちが一様に妙にやさしくなったのは、衝撃だった。

新しい彼は、仕事がうまくいっていなかった。そのストレスを私との行為で解消しているところがあった。そもそも久々に私に連絡をくれて連絡をとるようになったのも、自分の仕事がうまくいかないから、うだつが上がらないから、似た境遇の私で癒されたいと思ってるような気がしていた。お互いに尊敬し合って始まった恋ではなかった。めちゃめちゃ気持ちよくてなにかの幸福ホルモンも物理的に出まくってるけれど、性欲処理に使われてる気がして、ずっといやだった。堕ちていく感覚が確かにあった。

また彼は、私が誰かに頼ることを異常にいやがった。帰省して家族に会って甘えてくつろぐこと。行きつけのお店で知り合った、少し年上の友人(女性)に甘えて仲良くすること。全部嫌がって、嫌味を言い、私に罪悪感を与えた。私の周りとの関係にも悪影響があった。その友人が病気で入院したときなんて、私が心配していたら、彼は嬉しそうに「これで君の依存がなくなるね」と言った。死ぬかもしれないのにこいつは何を言ってるんだろうと驚き、怒り、喧嘩をした。

元恋人とときどき会っているという罪悪感はずっとあって、でもやめることができなくて、ある時新しい彼に打ち明けて、謝った。友達の一線は一切越えていない、と言ったが、女といえば性欲の対象である彼が信じてくれていたかは怪しかった。彼は悲しむというよりひどく嫌がり、私を罵った。仕方なかった。縁を切らないと別れる、と言われたけど縁を切れなくて、でも新しい彼は結局私を振らず、その話題を二人で避けながら関係を続けていた。

ある時、彼は仕事をやめた。しばらくの無職期間、私が自由なニート生活だね、とか冗談で言ったら烈火のごとく怒り、いつものように、別れましょう、となった。

そしていつもより少し長く、2週間後くらいに連絡がきた。東京で仕事を見つけたから引っ越す、ということだった。私は、あーこのひとは、東京でいい人を見つけたら私を振るだろうな、と思った。でも、本人が決めたことだから、応援した。会わない期間を経て結びついた絆の強い二人だから大丈夫だと信じよう、という思いもあった。

彼が東京に行っても、遠距離恋愛は続いていた。電話とLINEは毎日していて、二か月に一度は会いに行った。

新しい仕事はまたブラックそうだった。よく電話で怒りながら会社の愚痴を言い、黒いオーラを放っていた。でも、素敵なシェアハウスに住んで、友達もできて、上京の選択自体は間違っていなかったようだった。私は羨ましかった。私もずっと、東京には出たかったんだ。その足掛かりにしようと、前々回の転職で、近くの街に引っ越したのに、出戻りしてしまった。東京で二人で、新しいキャリアを始められたら。新しい生活を、二人で頑張れたら、どんなにいいだろうと、思った。

私はブラック企業を2年勤めて、やめた。最初に2年だけ頑張ってやめようと、決めていたのだった。

心身を回復するための無職期間、彼が電話で、東京に出ておいでよ。シェアハウスの部屋に一緒に住もうよ。といってくれた。シングルベッドと机と冷蔵庫しかない、狭い部屋に。



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