Happy

私は英語の先生です。
毎日たくさんの子どもたち、大人の学習者の方々と会います。
共に笑い、共に学んで、皆さんが持ってくるいろいろな想いを共有する教室です。

 もう十数年この仕事ですが、一日たりともレッスン前に緊張しなかった日はありません。毎回私は万全な受け手でいたいと思っているからです。
自分の悩みや心配事は一旦置いて、みんなの抱えてくる不安やしんどさを学びのエネルギーに変えるのが私の仕事。
 そう信じているから。

 だから、レッスンの前に気分転換が必要な時は音楽の力を借ります。
特に多くの子どもたちの様々な想いが交錯する小学校の英語ルームで、私はレッスン前によくこの曲を聞いていました。
 英語教室とは違い、小学校には多くのものを背負った子どもたちがいました。胸が痛くなる様な話をたくさん他の先生に聞かせていただきました。そんな中自分が出来ることは何だろうとずっと考えていましたが、出た結論は一つ一つの授業で笑おう、ってこと。私はこの50分の授業に心を込めて、子どもたちと笑う時間を共有しよう。彼らの家庭に入ることは出来ないし心の中に手を伸ばすことも当然出来ない。でも、この時間がもしかしたら彼らの心の中の冷たい塊を溶かす力になるかも。そんな想いを込めて。

 この曲を聴いて、私はいつも太陽になることが出来ました。

 数年後、とある喫茶店に入ったところ私のテーブルを担当した女性が私に「英語の先生ですよね。」と声をかけてきました。
小学校で私の授業を受けたという生徒でした。あれから英語が好きになって、海外留学したんです、と。
 小学校の非常勤として二週間に一度、ほんの50分のお付き合いだった子どもたちに「英語=楽しい」が届いていたなら本当に嬉しい。私が知ることのない未来をそうやって伝えてくれた彼女の気持ちに、涙が出ました。

 教育って、結果は見えない。見えてはいけないんだと思います。即効性のあるものは危険です。教師の目をくらませてしまうものだから。あたかもその結果が自分の手柄の様に感じてしまうから。
 子どもたちの心の中に何か温かいものが残ったのなら、それだけが私が出来ること。この曲はそんな私を「それでいいんだよ。happyだけ考えて、いこう」と励ましてくれるのです。

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