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白ゆき紅ばら

 いろいろな作家さんやいろいろな本を巡って、また"寺地はるな"さん。ものすごいホーム感。この方の使う言葉なのか、言い回しなのか。説明のつかない不思議なホーム感。何がそうさせるのか正直わからないけど、衝撃的にではなくスーッとでもなく。最初から自分に馴染みすぎている。本を開いたら自分がずっとそこにいたかの様に始まって、終わる。終わった後も続く気がする。

 あまり鮮やかな言葉を使って感想を表現出来ないのが残念でもあるけれど、それがこの方の魅力だと思っている。

 ホーム。

 私にとっては。だから、内容が自分が見たことも味わったことも無いものであっても、ごく身近なことに感じるのだ。ここにいる人たちの経験は壮絶で凄まじいけど。その日常の中で自分の感情が埋もれていく様は、すぐそばで起きていることに通じる。

 私が一つ言葉で表現出来ることとしたら、この方の物語には問題が出てくる。最初はさほど大きな問題ではない様に感じても、その問題につながる要因がぼんやりと浮かび上がってきて、実はそれが一つでは無いことを読者は理解する。私たちの身の回りの生きづらさも、もちろん原因も答えも一つではない。でもなぜか一つの答えを探してしまう。そのこと自体が危うくて、それが更なる問題を生み出していくことに私たちは気付かない。

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心に残った言葉(順不同)

●はっきり言うけど、この世はクソだよ。あなたもぼくもその中でもがいてる。クソの種類が違うだけ。

●「でもわたしは、自分がその世界の一端を担う人間になれると信じたいんですよ」

●「生きていてください。お願い」

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