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日々こつこつ小説〜わらしべ長者になりたくて 第十三話

店を出てしばらく歩いていくと、遠くから手を振る少女が見えた。

グラデーションのきいた大きな水玉模様が何色も描かれた傘を差し、胸には大事そうに何かを抱えている。

「お〜い!」

誰かに呼びかけているようだ。
辺りを見回すと、30m程後ろに、さっき傘をくれたその人がいた。

『あー。あれがその傘!娘さんか。』

ゆうと娘さんの距離も段々と近くなってきた頃、
何やら音がする。

『赤ちゃん?』

「んみゃ〜〜〜、みゃお〜」


『猫?』

娘さんが抱えているのは猫のようだ。

『抱えてても、逃げたり暴れたりしないのか。
大人しい猫。』

そう思いながら猫を見ていたら、

『みゃみやっ!みやっ!』

まるでおしゃべりしているかのように猫がないた。

「どうした?何か言ってるの?」
娘さんが猫に話しかける。

「こんな風に、お話してるみたいになくんですね。」

あまりの微笑ましい光景に、ゆうはつい話しかけてしまった。

「さっき、娘さんに買った傘が要らなくなったからと、こちらの傘を頂いたんです。ありがとう。
猫、かわいいですね。」


娘さんは、にっこりと笑って、
「はい!」と元気良く答えた。

「この子とは、木の下で運命的に出会ったんです!
嬉しくて近くに運んできてくれた人にお手紙書いちゃった!」

「えっ?」
ゆうは声をあげた。


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